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全滅まであと何日  作者: taki
第一章〜ルビテナ村編〜
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9.春祭り

 春祭り当日、まだ夜も空けないうちから、アイリーンは神殿の庭へきていた。


 この日はまず、村の女達が神殿の庭に薪を運び込み、設置された石窯に薪をくべて火を起こす。その後、神殿で春を祝う儀式が執り行われる。それが終わって男達が狩猟大会に興じている間、女達はメインディッシュ以外の料理を作りはじめる。今回皆で手分けして作るのは、チキンと春ブロッコリーのパイや豚肉とりんごのシチューなど、村人達の大好物だ。


 狩猟大会が終わって、獲物が届き次第、それでメインディッシュをつくる。さらに、子ども達には村の特産品であるハチミツをふんだんに使ったビスケットを、大人達には醸造所から出したハチミツ酒を振る舞う。きっと今日も楽しい宴会になると、アイリーンはほほえんだ。


 夜が明けて、神殿の庭にはぞろぞろと人が集まった。狩猟大会に参加する男達で、皆、自分達の仕事を急い切りあげ、この催しに参加している。めいめいが弓と矢筒を背中に下げ、どんな動物を狙うかを話し合った。ガルシアがイノシシ狙いだと話すと、男達は興奮して翔さんの目を向けた。


 少し離れたところでは、スカイがサムや他の友達とつどった。

「俺はキジを仕留める」

 サムが威勢よく言い、皆も頷いた。

「でも、いるかな。うろうろしてるのはメスばっかりだ」

「いるさ。もう繁殖期だ。キアーキアー鳴いてる方へ行けばいい」

「スカイは助手って言ってたな。何すんだ、助手って」

 皆がニヤニヤするのには乗らず、スカイは口をすぼめる。

「別に」

 もしここで、前日のルビテナオオイノシシの話をしたら、皆はどんな反応をするだろう。だけどガルシアには、ひよっ子のお前は人に自慢できる腕じゃないと言われている。本当は見返してやりたいが、グッとこらえる。


やがて、神殿の玄関扉が開いた。

「どうぞ」

無表情のスペンサーがお辞儀する。村人達が中へ入ると、すでに村の領主、ナッシュビルとその家族が、祭壇近くの席に座っていた。

「領主様、おはようございます」

「おはよう」

 皆はナッシュビルに挨拶をしてから、席に座った。


 程なくして、神殿の内部に、外の鐘塔から鐘をつく音が聞こえてきた。皆が見守るなか、赤銅色のロングドレスをまとった神官長、ビショップが祭壇前に立ち、春祭りの儀式を始めた。


 スカイには儀式は単調で、退屈だった。見ていると、ビショップが古代グリフィダ語らしい言葉で祭壇に向かって唱え、両手を大きくかざしている。それから、祭壇に置いてある大剣を手に取り、後ろにひざまずくナッシュビルに授ける。ナッシュビルも古代グリフィダ語らしい言葉で何かをいい、頭を下げる。領主が元の椅子に戻ると、ビショップが皆に起立するように言う。学校でも毎朝歌っている、「ルビテナ讃歌」だ。オルガンの前に座っているモーガンが伴奏し、皆で合唱した。


 儀式が終わり、スカイも村人達も神殿を出た。狩りに参加しない老人や子ども達は庭のベンチに座り、おしゃべりをしたり、遊び始めた。参加する男達は弓を手に取り、村の北側、ルビテナ山のふもとまで歩いた。


 ふもとにつくと、ガルシアが皆に向き直った。

「さて。皆いくぞ。次のラッパが鳴るまでだ」

 ガルシアが手に持ったラッパを吹き鳴らすと、男達はいっせいに山へ散っていった。スカイはもちろん、ガルシアの後ろについた。


 ちょうどその頃だった。顔面がただれたその者は、ラッパの音を聞きとり、部下達に言った。

「合図だ」

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