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全滅まであと何日  作者: taki
第三章〜ハラパノ大陸編〜
52/79

52.競鳥大会

 その晩、三人はパブ近くの宿に泊まった。

「グリングリン大平原は遠い。それに、キャンディローズマリーが開花したのが三週間前なんでしょ。だったら、蜂が蜜を溜めるのをもう少し待ってもいいと思う」

 パブで得られた情報と、ハラパノ大陸の地図を見て、スカイは顔をぽりぽり掻いた。すると、オリバーが地図の北西部を指さした。

「よし。先にカミキリン王国のセワシ草原へ行こう」

「でも、どうやって行く? エボニーは二人乗りだろ」

 ロイが突っ込む。

「オリバー。君が騎手をやってよ」

「え? いや、俺は騎乗はちょっと……」

 うろたえるオリバーとは対照的に、スカイははりきってこぶしを前に突き出した。

「俺、もっと鍛えたいから、後ろから走ってく」

「バカか? 五百キロ以上はあるぞ?」

 ロイはトルポリとセワシ草原を交互に指さす。が、スカイは意に介さず、白い歯を見せて笑った。

「大丈夫さ。ロイがときどき、俺とエボニーを『蓬莱(ほうらい)』で回復して」


 翌朝、オリバーは慣れない手つきでエボニーにまたがり、ロイを後ろに乗せ、街を出た。宣言通り、スカイはその後を走って追いかけた。サラブレッドを追いかけるのはかなりキツいが、スカイは弱音を吐かなかった。ガルシアも基礎体力を上げれば弓術が安定すると言っていた。それを実行するときがきたのだ。苦しいが、できないことではない。


 あたり一面に広大な草原が広がり、何百種類ものハーブが大地を彩った。向かう先には地平線が見えた。そばをミケールが宙返りしながら飛び、機嫌よく鳴いた。

「すごい。ヨルシアじゃ山ばっかなのに」

 雄大な景色に魅せられ、ロイがため息をついた。

「だが、毒草も多いな。注意が必要だ」

 オリバーは手綱を握りながら、冷静に草地を観察する。

「見て。野生の馬だよ」

 スカイが汗だくになって、後ろから叫んだ。近くで野生の馬達が小川の水を飲んでいる。群れのなかで、仔馬(こうま)の後ろ足が丈の長い草に絡まり、悪戦苦闘しているのが見えた。スカイは矢を放ち、その草をちぎった。仔馬は嬉々として駆け出した。


 二日かけて、スカイ達はカミキリン王国へ入国した。セワシ草原の隅には「競鳥(きょうちょう)大会」とカミキリン語で書かれた特設入場口が設けられている。スカイ達はエボニーを近くの杭に繋ぎ、係員に近寄った。

「さあさ。こっから先は入場券が必要だよ」

「なんだよ、金取るのか?」

「ガキめらが。ったりめーだろうが」

 係員に足元へ唾を吐かれ、スカイは面食らった。

「すごく高い。旅の資金がもたないよ」

「こりゃ、またアレだな」

 オリバーがヌマグチをガサガサ漁りだしたので、ロイは嫌な予感がした。


 再び女装させられたロイは、係員に話しかけた。

「あのー、わたくし、ジャパロフ様に招待されてお邪魔したんですけど、招待券を紛失してしまって」

 ロイはつけまつ毛をバサバサさせた。

「やあ、麗しい方。お供の方達もどうぞ、お進みください」

 三人はすんなり入場口を突破した。


「さすがロイお嬢だ」

 オリバーが真顔で褒めると、ロイが地団駄を踏んだ。

「もうこれっきりだからね!」

「見て。始まるよ」

 スカイはスタート地点を指差した。ロイの聞き込みによると、どうやらスタートした鳥達は数キロ先の旗をくわえ、戻ってくるルールらしい。人間達はどの鳥が一着になるかを予想し、大金を賭けて遊ぶ。オリバーが予想した通り、客の大半は貴族や富裕な商人ばかりだった。

「どうする、どれに賭ける?」

 ロイが番号の振られた鳥達を指さすが、スカイは首を横に振った。

「そんなのどうでもいいよ。ジャッキーを探すんだ」


 レースが始まった。鳥達が一斉に飛翔し、まっすぐ西へ向かっていく。

「テイオウワシというのは世界最大の巨鳥だろ。ジャッキーはなぜあんなに小さいんだ」

 オリバーが尋ねると、スカイは首を傾げる。

「うーん、なんでか分かんないけど、あいつは大きくならないんだ。あー、やっぱりジャッキーはいないな」

 スカイは全個体の後ろ姿を見て意気消沈した。

「お前、どんだけ目がいいんだよ」

「ロイだって耳はいいくせに」

「まあね。羽ばたく音で、僕もいないなって思った」

「女王蜂が成虫になるまであと十日。バタバタバッタも探そう。こういう真緑(まみどり)のやつ」

 オリバーが図鑑を見せてくるので、ロイもスカイも草むらでバッタを探した。


 やがて、周囲がざわめいた。スカイが顔を上げると、空に一羽の鳥が見えた。それはだんだん近づいてくる。くちばしには赤い旗をくわえているそれは、ジャッキーより少し大きいくらいの、小柄なテイオウワシだ。ほかをぶっちぎり、首位でゴールした。歓声が上がる一方、他の鳥のオーナー達はブーブー言い出した。

「またジャパロフ様のだ。いい餌、あげてんだろ」

「噂じゃあバタバタバッタを死ぬほど食わせてるらしいぜ」

「金に物を言わせやがって。負けるはずねえよな」

 ロイがそれを聞きつけ、オーナー達の輪に割って入った。

「バタバタバッタはどこにいるんです?」

「どこって……そこらへんだよ」

「でも、見つけられません」

 ロイが言うと、彼らはロイの姿を見て失笑した。

「そりゃ、お嬢さんには無理さ。捕まえる側に、よっぽどの動体視力と反射神経がなきゃな」


 スカイ達はバッタ探しを諦めた。代わりに、スカイはミケールを見た。ロイの肩にとまり、ゴロゴロ喉を鳴らしている。

「ねえ、ミケールに頼みたいんだけど」

「何を?」

「ちょっと、優勝した鷲と話してきてくれよ」

 ロイが言いつけると、ミケールはパタパタと飛んで優勝者のそばへ近づいた。優勝者がピュイピュイ言うと、ミケールはニャゴニャゴ言った。それからロイの元へ戻った。

「そのチビは見たぞ。怪我してたがファミンウードの方へ飛んでったって」

 ロイがミケールの言葉を通訳する。

「ファミンウードって?」

 スカイが首を傾げると、オリバーが口を挟んだ。

「ファミンウード高地。モルグル王国だよ」

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