けーき
この物語は2012年のカレンダーの日程に沿って進めています。
「やっぱり何人か休んでるね〜」
朝、晴が教室を見回してからそう口にした。
「そりゃ今日と明日休めば9連休になるし家族旅行に行く子も多くなるよね〜」
「晴ちゃんは旅行とか行かへんの?」
紅羽が晴の予定を確認する。
「うん、うちは夏休みしか旅行とかは行かないかな」
「そうなんや?燈は?」
「私も今年は行かないよ。お父さん忙しいみたいで」
「なるほどな。ほな休み中にどっか遊びに行かへん?」
「お〜、行こう行こう」
さすが紅羽、行動が早いわ。
「燈と晴ちゃんはどっか行きたいとことかある?」
「あたしは何処でも良いよ〜」
「燈は?」
「何か美味しいもの食べたいかも。デザートとか」
「デザートな〜、ケーキとか?」
「いいじゃん、ケーキ!」
ケーキか。そういえば久しく食べてへんな。
「稟も良い?」
紅羽の確認に頷く。
「燈、何処かおすすめとかある?」
「う〜ん、バイキングなら。ただ、折角なんやし単品のホントに美味しいの食べたいかも」
「晴ちゃんは?」
「あたしに聞くのが間違い。紅羽が決めてよ、良いとこ知ってそうじゃん」
「そ〜やなぁ。キルフェ○ンとかどう?タルトのお店やけど」
キルフェ・・・?変わった名前やな。
「そう言えば京都にもできたんだっけ?ええやない?」
姫は分かってるみたいやな。
晴を見ると首を横に振って答えてくれた。
「行くなら何時かな?」
「あたしは日曜以外が良いかな。・・・宿題がやばそうやし」
紅羽の問いに晴がどこか暗い雰囲気を纏わせて答えた。そんな気にしてんのやったらはよから始めればええのに。
ちなみに私と紅羽はもう終わらせてある。
「宿題最終日まで残すつもり?」
姫が少し責めるような目で晴を見る。
「いや、だってさぁ。難しくてすぐやる気そがれちゃうんだもん。そういう姫は進んでるん?」
「もう終わったわよ」
「ぇ?・・・うそ〜!まだ半分も終わってないのに!?稟、紅羽、どう思う?」
「・・・えっと、その」
「ごめん?」
紅羽に続いて私も応える。
「・・・あたし、友達選び間違ったかなぁ」
「いやいやいや、晴ちゃん。晴ちゃんもこれからは早めにやるようにすればええやん。宿題も先終わらせてから遊んだ方が楽しいって。明後日にでも一緒に宿題やろうよ」
「教えてくれるの?」
「もちろんやって。なぁ?稟、燈」
それに私も姫も頷く。
そら晴みたいな娘にそんな目で見られたら誰でも教えたくなるって。
そんな感じで木曜はうちで勉強会、連休最終日の日曜日にケーキを食べに行くことになった。
・・・
・・・・・・
日曜日、四条駅で落ち合った。
「やっほ」
私と紅羽に気づいた晴が手を振りながら声をかけてきた。
いや、晴、恥ずかしいから。
姫と晴はどうやら私達より早く着いていたみたいだ。
「さっそくやけど行かへん?」
「燈が急かすん珍しな」
「ケーキ最近食べてなかったから」
「なるほどね」
別に他に先に行くところもないため早速お店へ向かうことになった。
時間はお昼より少し前、人が少しでも少ないときに行こうということで、この時間に集合にした。
丁度開店時に着くことができ並ばずに入ることができた。カフェスペース(と紅羽に聞いた)はかなり詰まっていたがお洒落感がはんぱない。
「どれも美味しいそうでまよっちゃうね」
「ほんと、ケーキ屋なんて滅多に来ないけどこんなん見ちゃうと皆なんで来たがるか分かるわ」
姫と晴がケースに入ったピースを食い入るように品定めする。
確かにめっちゃ美味しそうやな。数十年生きてやっとケーキの魅力に気づくんもどうかと思うけど。
「稟は決めた?」
「まだ。てか種類多くて決められそうにないし紅羽と同じのにするわ」
「え〜、うちも稟選んだのにしようと思っとったんやけど」
「前もそうやったし今回は紅羽が決めてよ」
「う〜ん・・・そうやなぁ・・・ほなこれはどう?」
紅羽が苺がたっぷりのったものを指さす。
「やっぱり苺が王道やない?」
「うん、ええんやない?」
苺は好きな方なので頷く。
その後、晴と姫はまだ少し悩んだ末、晴がフルーツのタルト、姫はメロンのタルトを頼んだ。
ケーキと紅茶が来たところで待ってましたとばかりに4人ともフォークでケーキを一口口に運ぶ。
っ!
なんやこれ。・・・ケーキ?・・・ケーキってこんな水水しい味がすんねんな。
「やっば・・・ちょうウマ」
晴はついといった感じで言葉を零す。
「ホント美味しい」
姫も晴に同意する。
紅羽の方を向くと此方を見て微笑んできた。どうやら私も頬が緩んでしまっていたらしい。
「あ〜、お金があれば毎週でも来たいかも」
「私は毎週は厳しいかなぁ・・・カロリー的な意味で」
晴と姫がそう口にする。
私も晴に同意かな。本当に毎週でも来たい味だ。でも・・・そんなことしてたらお金が保たない。
それから暫く4人とも存分に味を楽しんだところで晴が口を開いた。
「あ、そうそう、あらためてだけど木曜ありがとね」
「急にどうしたん?」
紅羽が首を捻る。
「いやさ、今日出かけるとき母さんに宿題あるんだし出かけてる暇ないでしょって言われて終わったって言ったら母さん目が点でさ。なにがあったの?なんて言われたんだけど、確かに何時もならそうだったしさ、今何も心配せずに美味しいケーキ食べられてるのは皆のおかげだと思うともう一回ちゃんとお礼言っときたいと思って」
お礼はいいんやけど、晴、親に信頼されてなさすぎやろ。
「そんな畏まらんでええって。それにうちも間違ってるとこ直せたし」
「そうそう、私も何となくで解いたところの確認もできたし。まぁ私達3人とも稟にはお礼言わなくちゃだけど」
え!?私?
「いや、稟、何でうちが?って顔するんおかしいから」
「いやだって、教えてたんほとんど紅羽と姫やん」
「量的にはそうやけどうちとか姫が自信ないとこ教えてくれてたやん。それに回答があるんと無いんとやとぜんぜんちゃうって」
「うちのが合ってる保証ないのに?」
「いや、それはないから。なぁ?姫」
「うんうん。あんだけ綺麗な回答並んでたら合ってるとしか思えへんって」
そうなん?・・・う〜ん、確かに回答あったらやりやすいのはそうかもしれんけど。でもなぁ・・・私の場合チートやからなぁ。勉強関連で褒められたりお礼言われるんはなんかズルした気になってまうな。
「ま、あたしは皆に感謝しないとってことだね」
ダラダラと続いてしまいそうだった話を晴がまとめる。
やっぱり晴はムードメイカーやな。私にはとても真似できへんわ。
「そろそろ出る?かなり人並んできてるし」
紅羽が入り口を見ながら提案する。
確かに入り口には列が出来ていた。
「そうね」
「だね」
姫と晴もその列を見て頷く。
私達は残った紅茶を飲んでしまってから席を立った。




