こういしつ
更衣室に戻るとむわっと生暖かい空気が充満していた。そこに色々な種類の消臭スプレーの臭いが混じり合って何とも言えない空間を作り出していた。
「うわぁ、やっぱり最近暖かくなってきたし体育はいやになるわ」
姫がその空間にやられて愚痴を漏らす。運動も得意ってわけやなさそうやし普通に体育は嫌いなんやろな。
「えぇ〜、体育いいじゃん。机で授業受けてるより大分ましじゃん」
「まぁ晴はそうでしょうね」
「そうでしょうねってどういうことかな、姫?」
「自覚あるんでしょう?」
「むぅ〜。紅羽〜、姫が虐める」
「はいはい、燈も調子のらない」
そんな会話を聞きながら自分は着替えを済ませる。もちろんズボンはスカートを履いてから脱ぎました。
「3人とも、ダラダラしてるんやったら先行ってまうで?ここからはよ出たいし」
「あぁ、ちょっと待って。すぐ着替えるし」
そう言って紅羽は体操着をサッと脱ぐと制服を着始めた。
そう言えば紅羽の下着姿見てもやっと平気になったな。まぁあんだけ一緒に風呂入ったら当たり前やけど。
そうこう考えている内に紅羽が着替え終える。
「お待たせ」
「うん」
紅羽が着替え終わってすぐ姫も着替え終えた。ちなみに晴は瞬殺で着替えを済ませたので先に着替え始めた紅羽よりも先に制服姿び戻っていた。
皆着替え終えたので4人揃って更衣室を出る。
「紅羽と晴って運動得意なんやね。授業中すごかったし。なんかやっとったん?」
感想も含めて授業中に出来た疑問をぶつけてみる。
「一応中学でバスケやっとったよ。弱小チームやったけど」
「あたしは小学校からずっとソフトボール浸けやったかな」
紅羽がバスケで晴がソフトボールか。ぽいな。でも、
「それやのにコンピュータ部で良かったん?」
「前も言ったけど高校では入る気なかったしね〜。通学にこんな時間かかるうえ勉強難しいしムリムリ」
晴が顔の前でヒラヒラと手を振る。
「うちも高校でまで続ける気なかったしな。中学もそんな厳しい部やなかったから続けれたようなもんやし」
やっぱり高校でも女の子がスポーツ続けんのって珍しいんかな?中学で帰宅部(前世含め)やった私には感覚はようわからんけど。
今日最後に授業は、
「道徳の授業やけど今日はクラスの役員を決めます」
ということで係決めになりました。先生はもちろん天連先生。
「まず委員長から決めたいんやけど、誰か立候補あるか?男女それぞれ1名」
当たり前やけどだれも手上げへんな。
「まあ無いのは予想通りなので私が勝手に決めます」
ええ!?案の定教室が一気に騒がしくなる。
「はい静かに。1年だしまだ推薦できるほど相手を知ってるわけじゃないだろうし仕方ないだろ?じゃあまず男子のクラス委員は君、東くん」
先生から見て一番前の一番右の席の男の子が指指される。指された男の子は最初驚いた様子だったがすぐに諦めたように肩をすぼめた。
「もう1人は新子さん」
次いで指名された新子さんも東くんとおおむね同じ反応を示した。
「ほな次に他の役員やけど黒板に役名と人数書いていくからどこにしたいか考えといてな」
役員か。何にしようかな。
「稟〜、何にするか決めた?」
隣の席の紅羽が身を少しこっちに寄せてくる。
「ん〜、まだ迷っとるかな」
「それやったら同じ係にならへん?」
知らん子と同じになるよりはありがたいな。と言うか嬉しい。
「うん。もちろんええよ」
「よかった。ほな委員は稟が決めて。うち別になりたい委員もなりたくない委員もないし」
「そやな〜」
黒板に書き出された名前を順番に見ていく。
「図書委員はどう?」
「ええんやない?稟本詳しそうやし」
「ちょっと多く読んどるだけやって」
「じゃあ第一希望聞いていくから挙手してな。人数が多かったらクジ作るん手間やしジャンケンで決めてな。負けた子は余ったとところで我慢してな」
順番に先生が委員を聞いていく。そして。
「ほな次は図書委員がいい子〜」
図書委員の順番が回ってきたので手をあげる。私と紅羽を含めて5人の女の子が手を上げた。
「5人か、ジャンケンやな」
先生がそう言うと前の3人が回りを見渡す。
そして私と紅羽が手を挙げているのを見て3人とも手をサッと下ろした。
「うん?3人はもうええんか?」
先生の問いに3人が頷く。
「そうか?まあジャンケンで負けたら残りもんになってまうしな。じゃ、図書委員は夏目と神宮っと」
なんでかわからんけどあっさあり決まってしまった。
「やったな、稟。まぁ譲られた感すごいけど」
「そうやね。なんでやろ?」
2人して首を捻る。
そして順調に委員は決まって授業は早めに終わった。
帰りに姫に「委員を譲られた理由が何かって?そりゃ稟と紅羽の間に入っていく勇気なんてだれにもないでしょ」ってよくわからないことを言われた。
ちなみに姫と晴は保険委員になりました。晴が体育委員になりたがってたけど姫に押し負けたみたい。




