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にちようび

 今日は完全にやらなくてはいけないことがないため(弁当を作ることにしたら母さんが土日の朝は作らなくていいと言い出したのだ)目が覚めてからもベッドの上でゴロゴロしている。

 

 時たま迫ってくる睡魔にも抗わずそれに身を任せる。時々意識が浮上してもボーッと微睡みの心地よさに身を委ねる。


 今日は夜までこうしてよ。


 〝ドンドン!〟


 今日を寝る日と決めた矢先ノックの音で微睡みから意識を引き上げられた。


 「稟~入るよ~」


 ドア越しで少し籠った紅羽の声が耳に届く。


 ん?今日はなんかあったっけ?


 ドアが開き紅羽が部屋の中に入ってきた。


 「やっぱりまだ寝てたんやな。もうお昼やしなんか食べに行こうよ」


 昨日急に母さんから日曜のお昼は紅羽と外で食べるように言い渡されたのだ。もちろんニヤニヤしながら。紅羽との外食自体は全く嫌やないし了解したんやっけ。


 「ごめん、忘れてたわ」


 正直に謝る。すると紅羽は少し頬を膨らませる。


 「忘れるってヒドない?せっかくのデートやのに」

 「デートって。うちら女の子同士やん」


 少しドキッとしたものの3回も一緒にお風呂に入ったため大分耐性が付いてきたのか冷静に返すことができた。でも何故か紅羽が寂しそうな表情を一瞬浮かべた。


 「そらそうやけど・・・そんな簡単に忘れられたんはショックやわ」

 「それはホンマすいませんです」


 結構ショックを受けてる紅羽にベットから体を起こし頭を下げた。


 すると紅羽から「ふぅ」と力が抜けた。


 「こんなこと話してても時間経つだけやし用意して行こ」

 「うん、すぐ用意するわ」


 ベットから抜け出す。


 ・・・・・・・。


 「紅羽?部屋から出て行ってくれへん?」

 「なんで?」


 キョトンと首を捻る紅羽。


 「いや、なんでって。恥ずかしいやん」

 「そんなん一緒にお風呂入った仲やのに気にせんでええやん」

 「ここはお風呂場やないやん!」

 「まぁまぁ女の子同士やし、それに見張ってやな稟また寝そうやしな」

 「うっ」


 それ言われたらなんも言えへんやん。


 諦めて着替えることにする。


 パジャマの上下を脱ぎ畳んでベットの上に置く。目線を感じるが無視、無心を心がける。


 タンスからTシャツを出して着る。ジーンズもだして履いてからベルトを締め最後にカーディガンをクローゼットから出して羽織った。


 財布と家の鍵、それにケータイを持つ。


 「お待たせ。顔洗ってくるから玄関で待っとって」

 「うん」


 何故か満足気な紅羽が頷いてようやく部屋から出て行った。


 私も部屋をでて洗面所に向かう。


 いつものように歯磨きと洗顔を済ませ軽く身だしなみをチェックしてから玄関で待っている紅羽の元へ。


 「どこ行くとか紅羽は考えてる?」

 「なんも。稟は今食べたいものとかってある?」

 「いうて起きたばっかやからな。軽いものも食べられるとこがいいな」


 玄関を出て戸締まりをする。


 「それやとファミレスとかは?色々あるし」

 「そうやね、ええかも」

 「ほなそれで」

 「この辺でファミレスって何処にあんの?」

 「ちょっと歩いたとこにあるよ。学校への道から外れたとこやけど」

 「じゃあ案内お願い」

 「うん。任せて」






 少し歩くとファミレスに着いた。うちの学生にはええ場所やな。


 中に入ってウェイトレスさんに案内された席に着く。


 「ご注文はお決まりでしょうか?」

 「すみません。まだなんで後で呼びます」

 「かしこまりました。失礼します」

 

 やっぱりこういう時サッと受け答えできて紅羽は凄いな。


 「稟、何にする?」

 「う~んサンドウィッチかな。たまごサンドとか」

 「ほなウチはハムサンドにしよかな。飲み物はドリンクバーでええやんな?」

 「うん」


 紅羽が呼び出しボタンを押す。


 すると間もなくウェイトレスさんが注文を取りにきた。


 「え、とドリンクバーとハムサンドとたまごサンドで」

 「はい、承りました。ドリンクバーはあちらのコーナーにコップとカップがございますのでご自由にお取りください」


 ウェイトレスさんが下がって早速紅羽が席を立つ。


 「取りに行こ」

 

 紅羽に頷いて私も席を立って紅羽の後に続いた。


 ドリンクバーコーナーには結構な種類の飲み物やシャーベットが用意されていた。


 ん~。何飲もうかな。ドリンクサーバーのアイスティーの銘柄を見ると紅茶○伝だったのでそれにする。


 サーバーにコップをセットして入れる。


 「稟って紅茶好きなん?」

 「それなりにな」

 「へ~。ウチも紅茶飲も」


 私に続いて紅羽も紅茶○伝も入れてそれにシロップとフレッシュを入れる。

 

 「紅羽って甘党?」

 「そうやね。結構甘いの好きかも」


 オムライスが好物なことといいお子様な舌やな。


 「稟、何考えてるか顔でわかるで」

 「なんのことやら」


 ジト目に知らんぷりで返す。


 席に戻って注文したものがくるのを待つ。


 「なんかええな、こういうの。休日の昼下がりに2人で外食って」

 「そう?まあご飯作らんでええ分楽やけど」

 「1人やと家でおってもあれやし外食してもなんや味気ないしな。先週までは休日潰すのに苦労してたわ」

 「ウチは1人も別に苦やないけどなぁ。1日中寝とってもええし」

 「稟ってほんまよう寝とるよな。朝は強いみたいやのに」

 「ん〜、起きるのは別にそこまでやけど何時も少し眠い感じやな。起きようと思えば起きれるけど寝れるんやったらいつまででも寝れるな」

 「でも寝てばっかやとなんやもったいなない?」

 「ん・・・そうやな」


 今までは全然そう思わんかったけど紅羽とかといる方が寝てるよりよっぽどええもんな。


 「おまたせしました」


 サンドウィッチが紅羽と私の前に置かれる。


 「失礼します」

 「ありがとう」


 さりげなく去り際の店員にお礼を言う紅羽。やっぱりコミ力高いな。


 「どうしたん?じっとこっち見て」

 「何でもないよ」

 「そう?」

 「うん。食べよ」

 「そうやね」

 『いただきます』


 一口食べる。うん、普通のサンドウィッチやね。


 「どう?稟」

 「普通にサンドウィッチやね」

 「ま、そらそうやろな」

 「まあファミレスやしな」


 どちらとも無しに笑い出した。






 食べた後はドリンクバーを飲みながらすこしの間ダラダラ話して過ごした。


 その後病院の診察には1人で行った。紅羽も来たがったけどどうにか断ることができた。まぁ次も断れる自信はないけど。




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