じつりょくてすと
いつものように目覚ましで目を覚ます。ただ少し時間は早め。
ベットから抜け出して制服に着替える。姿見で確認。うん、まあこんなもんやろ。
1階に下りて歯磨きなどをさっと済ます。台所に入ってすぐ昨日の夜に洗っておいた弁当箱を確認する。かなり小さめのものとそれより少し大きめのもの。自分と母さんのとして昔買ったものだ。一応デザインはお揃いで一段弁当。今日から弁当にすると言ったら母さんが私と紅羽にこれを使うように言ってきたのだ。
すこし弁当をつくるかどうか考えたが今日は食堂は絶対人が多いと思って結局作ることにした。人が一杯おるとこに行くんややしな。
そんなこんなで今日はいつもより少し早めに目覚ましをセットしたのだ。
メニューは昨日思い立ったことなのでかなり簡単に済ませることにする。まず冷蔵庫から卵を幾つか取り出し、それを使い卵焼きを作る。簡単にだしも混ぜて砂糖で甘めにした。
アツアツの卵焼きをさましているうちにキャベツと少量の豚肉、玉葱を切って簡単な野菜炒めを作る。それをお弁当箱のおかずの部分に大きめのアルミの仕切りを入れそこに入れた。卵焼きを切りそれも弁当に入れる。そしてご飯も詰める。そこにふりかけを掛けた。そのままさますために蓋をせずに置いておく。
そろそろ2人が起きて来る頃なので食パンを焼き始まる。さすがに2枚までしかトーストに入らないためまず1枚焼く。焼き上がった頃にちょうど母さんが入って来た。
「もうできるさかい座っといて」
「そか。ほなお言葉に甘えて」
マーガリンを塗り卵焼きを添えて座った母さんの前置いた。
「ほなお先にいただきます」
母さんが仕事があるのでさきに食べ始めた。
次に2枚食パンをトーストに入れる。
「おはようございます」
まだ眠そうな紅羽が入って来た。昨日もそうやったし朝弱いんかな?
「おはよう、紅羽ちゃん」
「おはよう紅羽。もうできるし座っとって」
「昨日に続きありがとうな」
焼き上がったのでマーガリンを塗りこっちにも残りの卵焼きを添えて机に置き私も座った。
「ほな」
『いただきます』
私たちが食べ始めてすぐに母さんが口を開いた。
「弁当つくるようになったら洋食が増えそうやね」
「そやね」
「え?」
「どないしたん?」
「いや、稟、お弁当って」
ん?なんかおかしいことでもあった?
「今日は午後も学校あるんやろ?」
「いやいや、そうやなくて、いやそうなんやけど。違くて、稟お弁当作ってくれてたん!?」
「あぁ、そういうこと。簡単なもんやけどな」
「ありがとう!めっちゃうれしい」
どうやら目は完全に覚めたらしい。ほんまに紅羽は何でもすぐ喜んでくれるな。なんやこっちまで嬉しい気持ちになるわ。
「そか。喜んでくれてよかったわ」
「愛妻弁当作って嫌がられたらショックやしな」
「母さん!もうそのネタええから」
そんな感じで若干母さんにからかわれながら朝食は終了。母さんはさっさと仕事に出かけて行った。紅羽には昨日のように先に用意をしておいてもらうことにした。
食器を洗ってから冷蔵庫からミニトマトと昨日切っておいたブロッコリーを弁当箱の隙間に詰める。ブロッコリーの入れてある仕切りの底にはマヨネーズを少し入れておいた。
弁当の蓋をして2つとも袋に入れる。それを机において2階に上がって自分の部屋に行き鞄を取る。
あ、そういやケータイのこと話すん忘れてたな。まあ今日帰ってからでええやろ。
「紅羽。先下におりとくで」
紅羽の部屋に声をかけてから1階に下りて台所から弁当の入った手提げ鞄を持って玄関まで来るとちょうど紅羽も下りて来た。
「おまたせ!」
「行こ」
「うん」
「それお弁当やんな?ウチが持つよ」
玄関を出てすぐに紅羽に弁当の入った鞄を取られた。昨日の件で断るのが無駄だとわかったので素直に持ってもらうことにする。
「ありがと」
「お礼なんか言わんといてぇな。食べさせてもらうんやしあたりまえやん」
「言うても簡単なもんやで?」
「簡単かどうかなんて関係ないよ。手作り弁当のロマン?ってあるやん?それに稟が作った料理がまずいわけないし」
「なんやそれ」
「哲学?」
「なわけないやん」
やっぱり紅羽と話すと不思議な感じがする。母さん以外とこんなに普通に話せることなんかなかったのに、昨日なんか紅羽が一緒にいるだけで姫路さんや柊さんとも不思議とそれなりに話せたし。
「そういや稟、ケータイどうやった?」
「ごめん、聞くん忘れてた」
「そっか」
「今日聞くつもり。て言うても多分賛成してくれると思うけどな」
一応昔に母さんに「ケータイ持ったら?」と聞かれたことはある。やっぱり体が弱いのもあって持っておいた方がいいと思ったみたい。でもそのころは別にケータイでわざわざ連絡を取る子もおらんかったしで断った。だから多分言ったら大丈夫だと思う。
「そやし明後日の土曜に見に行くのがええかなと思てんのやけど。紅羽も来てくれへん?うちケータイのこと全然わからへんし」
「そらもちろん。言われんでも付いてくよ」
そんな感じに軽く会話をしていたらすぐに学校に到着。そのままクラスの教室まで階段を上がって行く。昨日同様上りきった頃には若干息がきれた。ほんま3階ってやめてや。
教室の後ろの方のドアから入り自分たちの席に付く。あまり時間は早いわけではないのでもう教室には結構な生徒がいた。
「姫路さん達はまだみたいやね」
紅羽が軽く教室を見渡してから口を開いた。
「みたいやね。電車通学って言うてたしギリギリに来るんやない?」
「あぁ、そうやね。朝はできるだけ寝たいしな」
「紅羽朝弱そうやもんな」
「うぅ。だって布団の魔力が」
「ないない。ウチもよう寝る方やけど起きようと思たら起きれるし」
「もう、いじわる言わんといてや」
「ごめんごめん」
「神宮さんに夏芽さんおはよ」
「おはよ~」
姫路さんと柊さんが席に着く。
「おはよ」
「おはよう」
時間を見るとチャイムギリギリだった。
「2人とも結構ギリギリやね」
どうやら紅羽も同じことを思ったらしい。
「うん。やっぱり電車通学だとどうしてもね~。これでも6時30分起きだし」
「晴はまだええやん。私6時起きやし」
「やっぱり遠いと辛そうやね。うちは無理そうや」
紅羽が聞いた時間に感じ入る。
「まあ慣れることに期待かな」
姫路さんが苦笑いを浮かべた。
「はい、着せーき」
チャイムと同時に先生が入って来た。
「さて、連絡事項だが、1度昼食のあと話す時間があるから午前中のテストについてだけ。当たり前だがケータイは電源切って鞄に仕舞うこと。それにカンニングも勿論禁止。中学と違って見つけたらテスト全教科0点なうえ停学もありえるからくれぐれも守るように。定期考査だと全教科0点を1回とると留年がかなり近づくからな。ま、今回は留年には関係ないが、それでもしないように。話は以上。皆、テストをがんばるように。このクラスが学年トップ取れるようにな」
それだけ言うとさっさと教室を出て行く。ほんまにサバサバした先生やね。
「ねえねえ、皆勉強やった?」
先生が出て行ってすぐ柊さんが後ろに向き直って聞いてきた。
「ちょっとは入試の時に使った参考書の見直したかな」
姫路さんが答える。
「そっか~。やっぱそうだよね~。あたし昨日面倒くさくなって寝ちゃったよ。やっぱり神宮さんと夏芽さんも勉強した?」
「そんな心配せんでもうちも稟もやっとらんよ」
「ホント!?あぁ、でも2人ともしなくてもできそうやもんね」
「そんな理由やないよ。実力テストやしわざわざ勉強せんでもええかなって思ただけやし」
「そんなふうに言えるのができる証拠だよ~」
柊さんがムッスリする。でもこの高校に来てる時点で柊さんも勉強できる方なんやないの?
「はい、皆静かに」
入って来た先生は中年の男の人だった。
「テストはまず国語からで英語、数学、理科と順にします。時間は5分後からチャイムが鳴るまでの45分間で丁度授業時間と同じ時間でやります。なのでテスト間で10分の休憩を取ります。では解答用紙を先に配るので名前を書いてください」
そう言うと先生が解答用紙を配り始める。回って来た解答用紙に名前を書く。
「では次に問題用紙を裏向けて回します。始めと言うまで表向けないように」
行き渡ったことを確認すると時計を見て
「始め」
と言った。
その声と同時に問題用紙を表向ける。国語はこの私は苦手じゃなかったし昔の私に至っては言語自体超得意だったのでスラスラ解いていく。中学のテストと違い答えが1つの問題ばかりだったので少しも詰まるこたはなかった。
解き終わってから1度軽く見直す。黒板上の時計を見るとちょうど9時だった。まだあと30分も時間が余っている。どうせなので寝ることにした。起きるのはさっと起きれるのだがいつも眠さが少しあるのだ。病弱なんが原因かもしれんけど。
机に俯せになる。するとすぐに意識は沈んでいった。
「はい、時間です。後ろから解答用紙を前まで回してください」
静寂を破る先生の声で目が覚める。解答用紙を言われるまま姫路さんに渡した。
先生は解答用紙の数を確認してから封筒に入れると休憩を言い渡して教室から出て行った。
「終わった~。2つの意味で終わった」
柊さんが悲痛な叫びを上げた。
「姫!できた?」
「それなりには?国語は苦手やないし」
姫路さんが困ったように答える。
「が~ん。夏芽さんは?」
急に振られる。いや急ではないか、ただ私が話しかけられるんに慣れてへんだけで。
「まあまあ?」
なんとか無難な回答を返す。
「何言うてん。開始すぐに気持ち良さそうに眠ってたやん」
紅羽に突っ込まれる。どうやら寝ていたのを見られたらしい。それに寝顔までも見られていたようだ。恥ずかしい。次からは窓を向いて寝よう。
「な~んだ。やっぱり夏目さんも姫も余裕だったんだ~」
柊さんが頬を膨らませた。なんやこの可愛い生き物。
「うちは余裕やなかったよ?」
「人が寝てるか見れる時点で余裕あるやん」
「たまたま気づいただけやって」
紅羽が困り顔で言い訳する。どうやらテストは普通に解けたみたいだ。
「はい、話したい気持ちはわかるけどまだあと3つあるんだからね。静かに」
先生の言葉でガヤガヤしていた教室が静まる。もう高齢だろう女の先生が封筒を持っていつの間にか教団の前まで来ていた。
「はい、早速解答用紙から配ります。様式は先と同じなんで説明は省きます」
そう言うと黙々と問題用紙も配る。
「はい、初めてください」
英語のテストも一瞬で終わった。だって、ねぇ?昔の私はアメリカ住まいやったわけやし。余った時間はありがたく睡眠時間に回した。
数学のテストと理科のテストも瞬殺で終わってしまった。この私だけの力だったらかなり難しいテストだったけど理系大学を出た知識がある今の私にはまるでお遊びみたいな問題だった。




