我が名は《武器食人》
「お父さん、それって…」
「申し訳ないが、普通の生活とはおさらばしてもらう。その代わりと言ってはなんだが、君たちが望むものは全て与えよう。」
ダリの言葉によって、大広間は時計の針の音しかしなくなった。そして次に口を開いたのは黒澤だった。
「なぁ〜らぁ〜ばぁ~、大きな戦車をください!」
「「「???」」」
「大きな戦車をください!」
「「「???」」」
「ベルリンの壁も突き破る、大きな戦車を私にください」
「M60戦車でいいの?」
「はい!お願いします!もらえますよね?なんなら住めるようにしてください、あと戦車を置く土地もください」
「いいよって言ったけど、こいつ結構がめついな。」
黒澤の目はキラキラしていた。まるで親にお菓子を強請る幼稚園児以下を彷彿させる。腐っても3児の父親であるダリは、小さい頃の我が子とその姿を重ねてしまった。
「俺と茶野は欲しいものが見つかり次第言うって感じでお願いしたいのと、その…奥さんには俺等よりもご家族のほうがお話する機会は作りやすいんじゃないですか?」
「…リズは、妻は『悪魔』だ。そして私たち『食満家』のものは『天使』として生を受ける。この2つの勢力は今もそうだが、互いを抹消させることを目的としている相反する存在なのだ。
だから私たちよりも、君たちのような第三者のほうが耳を傾けてくれるかもしれない。」
「質問なんですけど、来夢さんのことを半分はどうだどの言っていました。けど、上官のことだけは認めているような感じがしました。あれはどういうことでしょうか?」
変わってしまった足を撫でながら茶野はダリに問う。来夢は皆の声が耳を通り抜ける度に、心拍数が上がるのを感じた。
「初めてのことで知らなかったんだ。『天使』と『悪魔』は交わってはいけないと。
怜夢は『悪魔』のチカラを。希夢は『天使』のチカラを持って産まれた。だが、来夢は違った。」
「なにがですか?」
「『天使』が武器を食器で食べるなら、『悪魔』は食物を武器で食べる。来夢はどちらでもあり、どちらでもない『武器』で『武器』を食べるものとなった。」
「それって…」
3人は瞳孔が勝手に大きく開いていった。茶野の足の接続部分は少し揺れ、まるで言うなと言いたげだった。来夢は深呼吸して口を開く。
「『天使』なのに武器を創り出す《職人》であり、『悪魔な』のに武器を食べる《食人》でもあるんですよ。
だから僕はこう言われている《武器食人》と。」
《本日のグリストーリー》
バトラーたちは基本的に姿が変わることはない。おしゃれに興味がないとかではなく、変えると来夢が酷く落ち込んだ顔をするから。
永遠を求める来夢にとって、変化は崖っぷちに立つほど嫌いなものである。




