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どうやら超未来の滅んだとされている異星人になったらしい。とりあえず近くの星を確認したら憧れの異世界があったので、行ってみた  作者: ちょす氏


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侵略者

 まぁ考えれば当たり前の事なのだが、Ads人として活動してもう10数年。時間感覚と色々なものが欠落していってる気がするのだが、俺としてはまぁジェネシス()から預けられたこの一つの宇宙を操ったり楽しんだりするのは結構楽しい。


 まだまだ足りないくらいの事ができるし知らないことも多い。イベルワの他にも関わるべき部下にあたる生物や種族もいるようだし、いずれ会いたいと思うのだが、なんか聞きづらい雰囲気なのであえて聞いてはいない。


 あれから数年。

 俺は更に色々遊ぶことに力を入れていた。


 そう。技術を使った兵器作成もその一つだが、メインとなるのは電脳図書館にある様々な先祖達の記憶をパッケージ化した本を読み漁ることだった。


 一人一人の時間は有限であり、まだまだ文明が未発達時代の自分と似た境遇の人間たちの記憶を正確に遺したこの本たちを読むのが最近の遊びの中心となっている。特に剣や銃のプロフェッショナルと呼ばれるような何かを極めるというのに近い人間達の記憶はスリルがあって非常に良い。


 今はある惑星で『剣聖』と呼ばれるに至った一人の人間の話を読んでいる最中だ。一振りで数人の敵を仰け反らせ、睨めば相手が固まってしまうような絵に描いた威厳溢れる人間。


 ⋯⋯男はやっぱりこういうのに憧れ──


 『ネスト様』


 折角の読書中、思考に突然イベルワの声が入って来る。


 「どうした?」


 『読書中申し訳ありません』


 「全然いいよ。何かあった?」


 『現在私達が運航しているルート上に識別では敵艦と思われる艦隊が30程先を走っており、一度御意見を勝手ながら求めさせて頂きたく』


 「⋯⋯30!?艦隊だろ?」


 『はい。我々の常識では10機で1艦隊とみなしますので、ネスト様の感覚で仰りますと、数は多いかと』


 あまりに平然としている回答にそんな感じなん?と若干笑いが込み上がる。


 「とりあえずセントラルエリアに向かうよ」


 『お時間の邪魔してしまい申し訳ありません』


 



***


 ーーセントラルエリアメインコンピュータ室



 「よし、じゃあ航路に着いている彼らの情報は炙りだせそう?」


 「ジャミング、ハッキングは既に行っております」


 俺やる事あるの?


 「早いね。どんなの?」


 「この先に知的生命体が活動する星が一つ存在しているのですが、そこへ侵略という名の資源の回収、それからそこで生活している者達への暴力を奮おうという旨の会話が聞こえましたので、恐らくそういうことかと」


 「人間が暮らしているのか?」


 「はい。ヒト型生物、特殊粒子をメインに生きている人種が生存しております」


 「数は?」


 「40億人以上です」


 多いな。なんだその星は。


 「相手は侵略なんだな?」


 「はい。それは確実かと」


 「確かに"邪魔"だな」


 「畏まりました」


 ⋯⋯ん?


 「敵艦隊、全て撃沈。デブリの回収に入ります」


 「ん?んん?」


 行動早くない?え?デブリの回収!?


 「終わったの?」


 「邪魔だと仰られたので、すぐに待機中の者に命じ、塵にしました」


 ⋯⋯oh my god。


 「⋯⋯そうか。御苦労」


 「はい!ネスト様の指揮のお陰でございます!!」


 そ、そう?皆の力がオーバースペックの間違いじゃなくて!?




***



 「ハッハッハ!!さぁ⋯⋯あの星には様々な資源が山ほど落ちているぞ!」


 大きく足を開いて指揮官席に座って葉巻を吸う男、ハイルーンがゲハハと笑い声を発していた。


 「指揮官、本当に大丈夫なんですか?」


 「なーに。問題なかろう!」


 この二人が語っている問題とは、この銀河領域はAdsがかつて統べていたことで周囲の惑星は悪さをほとんど行わない。

 その中でこれだけ艦隊を率いて悪さをするというのだ、部下たちの心臓はバクバクである。


 「Adsの噂は知っているだろう?」


 「滅びたという話ですか?」


 「そうだ!俺からすれば奴らは自滅した。今いるのはただの案山子同然の見せ掛けに過ぎん。現にこうして当たり前のように運航できているのが答えじゃないか」


 そんなハイルーンの言葉に指揮官席に座る数十人の軍人たちは愛想笑いで話を合わせる。


 「さて──」


 ハイルーンが言葉を発したその直後。

 艦内では緊急信号のサイレンがビーッと鳴り響く。


 「なんだ!?何が起こっている!?」


 「すぐに原因を!」


 一瞬で静まり返ってタイプする音が聞こえる。だがその1分後。

 

 「ここから2キロ先、二隻のワープドライブを確認!」


 「識別を急げ!緊急信号など滅多に──」


 「し、識別完了⋯⋯」


 確認を終えた男は、凍えた人間のように続きの言葉を口にした。


 「なんだ?何処だ?帝国か?王国か?」


 「識別、Adsです」


 「何?Adsだと?」


 「艦隊背後から、未知の、強力なエネルギー反応を感知!」


 「何!?お前らは何をやってる!?背後にいる敵を何故今感知してるのだ!」


 「っ⋯⋯我々の技術力では探知不可能であります!」


 「⋯⋯なあっ?」


 我々エビスの技術力はあれからさらに進化しているのだぞ!?その探知をも軽々抜けてくるだと!?



 『Ads攻撃艦アザゼ、展開』


 ーー遺伝子情報を確認。

 ーーターゲット補足。

 ーー玉座の剣(アルデラパンデミオン)発射まで二秒。


 玉座の剣(アルデラパンデミオン)

 攻撃艦の一つであるアザゼの通常兵器であり、シンプルかつ最も他所から恐れられている兵器の一つだ。


 1000年以上前の兵器が、未だどの文明も超えることができないという未知の技術力。これがAds管轄の地域で他国が何もしない理由なのだ。

 単純な兵器でさえもノータイムでワープしてきてはほぼ同時に熱エネルギーをあり得ない出力で維持したまま発射までをやり切るのだから。

 

 

 「ワープアウトを急げ!!」


 「不可能です⋯⋯」


 く、くそっ⋯⋯!!!


 二人の会話は虚しく、たった数秒で全ての艦隊が跡形もなく消失した。


 『デブリを回収』


 「ふぅ⋯⋯」

 

 アザゼの指揮官であるマタライが背もたれにボフッと寄りかかる。


 『お疲れ様』


「撃沈完了ー!」


 『ネスト様が邪魔だと仰るから⋯⋯良いでしょ?』


 「こっちは仕事をやるだけよ」


 マタライはヒト型メイド[T546C]製の学習機だ。

 現在の彼女の知能はAIの大差なく、思考や感情パッケージを導入したアンドロイドより一つ上の存在だ。つまりは変義体の事だ。


 ジェネシスからの許可によって幹部候補見習いにまで進化した突然変異の一人だ。


 『腕を上げたわね』


 「イベルワ様に言われても嬉しくないです」


 『あら残念』


 「全てにおいてスペックが足りていませんから嫌味です嫌味」


 『はいはい。デブリの回収は終わった?塵一つネスト様のお眼にならないようにしてちょうだいね』


 「そちらは問題なく完了しました」


 『これから兵器の利用も増えていくでしょうから、出撃準備を怠らないようにね』


 「Yes,God,Nest」


 少しノイズが耳元を離れると念話が切れる。


 はぁ⋯⋯。今日はネスト様お気に入りの味噌ラーメンでも買って帰ろうかな〜。


 「ドライブ」


 そうしてアザゼ艦隊はすぐにこの場から消失したのだった。

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