冬美雪の劣情 EP9
クラスの女子生徒達に聞いて見たのだが、あの先輩の名前は瀬名ジョンと言うらしい。どうやら凄く人気な様で、殆どの新入生女子が彼を目当てにこの学校へと進学をしたと言う。
(知らなかった.......)
中学三年生になってから勉強一本だった為に噂は耳に入って来なかった。演劇部の倍率も昨日の件で跳ね上がった事だろう。
(.............可笑しいな)
予想通り一学年は築ける程の希望者が集まった。だが何故、この部長は全員を受け入れちゃってるのかな。まず第一に部室に入りきらない。
「よし!お前らの実力を図るために軽く台詞を読み上げて見てくれ!」
読み上げるも何もスペースがまずないのだが。一目で良いから、瀬名先輩に合わせろ!其れと周りのクソ女共は私を押すな。
「お前ら、もしかして瀬名を探しているのか?」
キョロキョロと目を動かす新入部員たちを疑問に思ったのか三年の部長がそう言う。
「あー彼奴なら今日は来なくて良いって返したから。」
女子生徒達からの大ブーイングが起きる。そして何人かが帰ろうとした所、誰かに肩を掴まれた。
「ちょ、気安くっ.......瀬名、先輩?」
肩を掴んだ人物は瀬名先輩だったのだ。心臓がドクリと音を立てる。
「すまない、通してくれ。」
「は、は、は、は、い!!」
テンパってはを何度も行ってしまう。穴があったら埋まってしまいたい。瀬名先輩はそのまま新入生を退け、壇上へと立つ。
「おい、新入生、今出て行った奴らに明日は来なくて良いと伝えろ。オレは真面目に演劇をする奴だけと演劇をしたいんだ。顔目当てで来たんなら、失せろ。以上。」
そんな事を言えば全員が帰ってしまうのではないかと思いがちだが違う。全員はより彼の凛々しさに惚れ直した。所詮顔なんだろ?って言われるかも知れないが、瀬名先輩の前ではその言葉はしょうがないと思う。
(カッコ良すぎでしょ//)じゅん
今直ぐに抱かれたい。無茶苦茶されたい。いや、寧ろ無茶苦茶にしたいまである。其れほどまでに瀬名先輩と言う人物は美しいのだ。
"ああー王子様ー私の愛しの人ー"
瀬名先輩だけを見つめ台詞を言う。演劇で実力を図ると言うが私は一度もした事がない。下手くそなのはしょうがないだろう。
「下手くそだな。」
瀬名先輩に罵られる。ちょっと興奮した事は私だけの秘密だ。
★
「今日は此れまで!明日に結果を報告するから絶対来いよな!其れとさっき瀬名が言った様に先に帰った奴らは来なくても良いと伝えろよー!」
「「はい!!」」
部活動が終わる。皆は瀬名の元へと集まるが瀬名は鬱陶しそうに部室を出て言った。ああ、あれがクールと言うものなのだろう。
「瀬名先輩かっこ良かったねー!」
「彼女いるのかなー?」
「いたら殺す!」
「どっちを?」
「「「もちろん彼女の方を!!」」」
集団で帰る新入部員達が危険な事を口走りながら下校へと着く。確かに瀬名先輩に彼女がいたのなら自殺ものだ。生きて行ける自信がない。
(............そもそも瀬名先輩ってどんな人なんだろう?)
皆んな好きだ好きだと言うが彼の中身を知らない筈。キッカケを作る何かがあればより親密になれる筈。
(ストーカーしかないよなぁ........)
自分は本来そんなキャラではない。だが瀬名先輩をどうしても欲しい。あの人が隣にいてくれるなら家族だって捨てられる。其れほどまでに私は惚れ込んでいる。
(セッ○スしようって言われたら即オッケーだし、中○しオッケーだし!)
寧ろガッチリホールドして嫌々でも中に出させるまである。
「セッ○スしたい」
公園のブランコに座りそんな事を口走る。つくづく自分が下品な女だと思う。
「...............ん?」
ブランコを漕いでいるとスキップをしながら歩く瀬名の姿を捉える。
(あれって瀬名先輩?てか、笑ってる!?)
「可愛い!可愛すぎるでしょ!!」
興奮が抑えられない。瀬名先輩の笑顔を見るだけで私はご飯を三杯はお代わり出来る。もちろんシモ的な意味もでだ。
(袋?何か買ったのかな?)
瀬名の後をつけながら観察をするとどうやら袋を握っている様だ。
「面白いアニメを見ると原作を読みたくなっちゃうよね!」
瀬名先輩が独り言でそんな事を言う。そもそも口調が学校とでは違う。もっと優しい口調なんだ。うふふ、私だけが知ってる先輩。頰が緩む。
(アニメって言ってたよね...........直ぐ帰って放送中のアニメに目を通さなきゃ。)
先輩の話に合えば必然と仲が良くなれる筈。小さな努力をコツコツと詰める女、其れが私、冬美雪なのです。




