冬美雪の劣情 EP8
私は頭が良く無い。容姿も優れて言い訳でもない。普通よりは上だと自負しているつもり。男の子で例えるなら雰囲気イケメンという奴だ。此れを女性版にいい例えれるならば雰囲気美少女とでも言えば良いのだろう。
「高校に受かった!」
中学はそこそこカーストの高いグループに所属していた。でも自分はそのグループに置いてもあまり目立つ存在では無かった。友達達が楽しく会話をしている際に隅で笑っている程度。其れがどうしようもなく悔しかった。
「お母さん!受かったよ!」
電話で母親に合格の通知を伝える。受験は必死に努力して県でも有名な進学校に入学する事が出来た。だが其れと同時に友達達を失った。容量が良く無い私は常に図書館、塾へと通い勉強に時間を潰していたのだ。
(高校ではもっと自分に自信を持たなきゃ!)
女友達というものは薄情者達ばかりだ。付き合いが悪いと直ぐに陰口を吐かれる。外面上は仲良くしてはいるがウンザリだ。もう周りに合わせる事なんかしない。私は自由なんだ。
高校に入ったら好きな事をしよう。周りに合わせた趣味ではなく、自分の好きな物に時間を割く。そう決意した。
★
「あら雪!似合ってるわねぇ!流石私の娘ね!」
高校の入学式があと数時間で始まる。母は自分の制服姿を褒めてくれた。
「でも私はまだ反対よ〜その頭!」
高校デビューという事もあり茶髪に染めている。母はあまり良く無い顔をしたが自分は変わると決意したのだ。先ずは身なりからのスタート!そう自分に言い聞かせ、少ないお小遣いで美容院へと行った日が少し懐かしい。
「いいじゃないか、母さん。雪だっておしゃれくらいしたいよな?」
父が自分の肩を持ってくれる。
「もう!そうやって甘やかして、雪が不良になったらどうするのよ!」
「そ、そりゃ、俺が止めるよ、」
父は母の圧にやられ縮こまってしまう。髪を染めただけで不良と言うのは古い人の考え方だ。勿論、男の子達がナチュラルな黒髪を好きでいる事も知っている。だけどやっぱり自分の容姿くらい自分で決めたい。
「お母さん、お父さん!もう時間だから、私行くねー!」
早く家を出なければ電車に遅れてしまう。勿論、入学式には母と父も来るとは言っているが初日はやはり慣れる為にも電車での通学をしたかった。車で一緒に行くという選択もあるのだが、やはり恥ずかしい。
(ウチの学校の制服着ている人が沢山いる。皆んな、頭良さそうだなぁ。)
電車を降り学校へと続く道を歩いていると複数の生徒達が歩いている事を確認できる。やはり初日という事もありかなり緊張している。
"野球部でーす!" "囲碁なんて如何ですか?" "テニスしましょうよ、テニス!"
校門の近くには複数の先輩方が部活の勧誘をしていた。勿論、放課後には見て回るつもりだ。
(やっぱり、怖いな。)
だが友達もいない中で初日の朝から回る勇気はない。私は直ぐに群衆を抜け下駄箱へと向かった。
「えっと、確か.........」
主席番号を確認しながら自分のロッカーを探す。
「ッ........ごめんなさい」
すると自分は誰かにぶつかってしまった。おどおどとした様子で謝られる。
「私こそ、ごめん!」
ぶつかった子は目元を髪で隠し、表情が見えなかった。そして一礼すると直ぐにその場を去って行く。
(あんな暗い子もいるんだなぁ。)
友人がいなさそうな彼女を見て何処か優越感を感じる。勿論自分も現在はいないのだが作る事は容易いだろう。
「此処が、私の教室かな?」
教室の扉を開けると新入生が数名いるだけだった。黒板には入学おめでとうと書かれ、今から私の高校生活が始まるんだと感じた。
(此処が私の席か)
自分の席へと座り既に隣にいる男子生徒へと声をかける。
「あの、よろしくね!」
なるべく優しい表情で話を掛けてみた。
「あ、うん、よろしくね!」
上々。少し照れている感じから童貞であることは確かだろう。少し彼の表情に花が咲いたように感じられる。
「私の名前は冬美雪。雪って呼んで?」
男子生徒は照れながらも自分の名を呼んでくれた。童貞はちょろい。少し構ってやると自分に気があるのではないかと勘違いをする。暫くすると周りの机にも生徒達が座り始めた。
「私、雪!よろしくね!其れとこの男子ちゃんはハヤトくん!」
「よ、よろしくお願いします」
「うん!よろしくね〜!」
背後の席に座る女子へと声を掛けると彼女も嬉しそうに返事を返してくれる。男子の方はおどおどしながら挨拶をした。そうして三人で楽しく話をしていると周りの生徒達も自分たちの輪へと入ろうと話を掛けて来る。
(一日目は大成功だ!)
コミュ力があると言うのはとても便利な事だと思う。友達も何人も出来たし、メールアドレスだって沢山交換した。これがリア充ライフへの第一歩なのだろう。 そうして入学式初日を終えた。
「また明日ねー!」
新しく出来た友達とも別れ部活動宣伝がある校庭へと向かう。勿論一緒に行こうと誘われたが、一人で見て決めたい。一緒にこの部活に入ろうよ〜なんて台詞を吐かれたくないし。
"私は醜い.....姿をお見せする事は出来ませぬ"
"私は其方の心遣い、そして中身に惚れたのだ。容姿など気にするものか!"
大きな声が鳴り響く。部活動宣伝でも一際大きい声。私はその声の正体が気になり近づく。
「おい、姫役の生徒、仮面を外すぞ」
どうやら声の正体は演劇部のデモンストレーションの様だ。大方、姫役は女子部員なのだろう。声も透き通りように美しく立ち方も可憐だった。どんな美人な先輩なのか、はたまた残念な先輩なのかが気になってしょうがない。そして姫役の人が仮面を取った。
「っ...............」
声が出ない。あまりに.......
「何を恥じることがあろうか_其方は誠に美しい_」
そう、あまりに美しくもあり儚いその端麗な容姿に息をするのも忘れていた。目が離せない。いや、離したくない。其れほどまでの魅惑、色香が姫役の先輩から感じられる。
「貴方に出会えて_私は_幸せでございます_」
姫役の先輩はそう言うが、其れは此方の台詞だ。中には腰を抜かす生徒もいるほどにその人物は可憐にして完璧だった。
「以上で、演劇部の部活紹介を終わります!」
「「「ありがとうございました!!」」
立ち尽くす生徒達の反応を見て先輩方は嬉しそうな表情を浮かべる。劇が終わっても私は余韻に浸り立ち尽くしていた。いや、私だけじゃない。チラホラと見ていた女子生徒達も胸を押さえ赤面をしているのだ。
「あ、あの先輩、ネッ卜とかテレビで見るイケメンより...............バリ、イケメン」
ついそんな台詞が出てしまう。イケメンなどと言う台詞に当てはまらない程の容姿。あれは人を惹きつける天使、いや悪魔なのかも知れないない。
(私は......)
変わる。そう決めていたはずなのに手が勝手に演劇部の入部届へと伸びていた。抗えない。あの人を見てからあの人のことばかりが頭を駆け巡る。
(あ〜...........いっか)
考える事をやめた。もう欲望に任せよう。
冬美雪なんてキャラ覚えてねぇーと思うけど、一話に出て来た後輩の一人(いじめてた方)って言えば分かるだろ。取り敢えず、"ANIMEの世界にようこそ!"の方も読んでくれよな!(ブクマ&感想please(秋玉さんは良心!))




