九条香久耶の恋色 EP5
(お持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたいお持ち帰りされたい..................お持ち帰りされたい、ですわ)
瀬名の隣を歩く九条は常にこの様に邪な感情を抱いていた。
「ねぇ、九条さん?大丈夫?」
瀬名はそんな九条を見てか心配の声を掛ける。
(は!?わたくしったら、なんと破廉恥な、)
「すみません、瀬名様と共にデートが出来る事が嬉しくて頭がぼぉーっとしておりましたわ。」
純粋に本心を言う九条。
「そ、そうか。ありがとう。」
瀬名は満更でも無い顔で礼を言う。一応言うが瀬名も男であり女性の純粋な好意には照れるのだ。
「九条さんってもう朝食食べた?」
「い、いえ、まだですわ。そ、そ、そ、そうでした!この辺りに美味しいと評判のレンストランが有るのですがい、行きませんこと!」
呂律が上手く回らずテンパった様子でスマートフォンのマップを見せる九条。この日の為に、九条は念入りなデートプランを立てていた。本当ならば自然に向かいたかったのだが緊張した今の状態では其れは叶わない。
「そうなの?じゃあ行こうか。」
瀬名は優しく笑うと九条の隣に付き歩く。先程迄は女性の嗜みとして一歩瀬名から下がった位置で歩いていた。 だが瀬名は其れを気にして自ら後ろへと下り九条の隣へと付いた。
(優しい..........良し!)
「人通りが多いですわね。逸れてしまっては大変でしてよ。」
何度も家で練習した台詞だ。此れで手を繋ぐ口実が出来ると画策する九条。
「.........俺たち以外、余り歩いてないけど?」
だが現実は違った。瀬名を見るばかりで周りを見ていなかった。此れでは自分がバカみたいではないか。
(私は何をしているの..........)
悲観に満ちた顔をする。瀬名はそんな表情を察してか手を伸ばす。
「九条さん!せっかくのデートだし、手、繫ごっか?」
もし良かったらだけどと付け足す瀬名。九条は表情をパァーと輝かせ元気良く頷いた。
「はい!」
★
「「「"はい!"じゃあなぁーい!!!」」」
九条と瀬名を監視する一ノ瀬軍団は叫ぶ。通行人達からは奇怪な目で見られているが彼女らは気にしていなかった。
「彼処にいるのは本当は私の筈なのにぃ!」
蒼井が爪を噛みながら嫉ましく九条を睨みつける。
「ジョンぅ〜私の所に戻って来てよぉ。真一のバカが私を無視しなかったらこんな事にはならなかったのにぃ!もぅ!」
一ノ瀬は涙目になりながら瀬名の姿を見ていた。
「瀬名くんは私に気がある筈なのに、何でなの?」
三人は顔を見合わせ頷く。
「「「金か!」」」
そうだ其れに違いないと三人は表情を明るくする。
「そうよ!ジョンは九条に脅されてからしょうがなく付き合ってあげてるのよ!」
「私が瀬名くんを助けるわ!」
「拳が唸るわねぇ!」
三人は酷い勘違いをしたまま瀬名達の後を追うのだった。
「絶対にあたしが助け出すんだから!」




