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九条香久耶の恋色 EP4

「「九条さんが瀬名君とデート!?」」


蒼井、氷室が驚愕の叫びを上げる。


「九条の様子が可笑しいと思ってつけて見たら、彼奴、真一の奴と会ってたのよ!」


一ノ瀬は強く拳を握りしめテーブルを叩く。だが思ったよりも痛かったのかその場でうずくまる。


「うぅ.......真一の奴が如何やらジョンの電話番号を教えたみたいぃ.....痛い、」


涙目になる一ノ瀬は立ち上がり真一の机を見る。


「クソ、何で私には教えてくれないのよ!」


「其れはお前達が仲違いをしているからだろ。」


氷室が冷静に答える。


「ズルイ........ズルイよぉ.......ズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイよぉー!!」


頭を掻き毟りながらズルイと言う言葉を何度も連呼する蒼井。


「何がズルイだ。お前だって私達に内緒で瀬名君の家をストーカーして訪ねただろうが。」


「う、其れは........でも私、瀬名君のお母さんにボコボコにされたし、」


「もう!花の失敗なんて過ぎた事ぐちぐち言ってもしょうがないでしょ!其れよりも九条を如何するかよ!」


三人は頭を悩ませる。


「ただでさえ、最近では演劇部の女後輩二人がうろちょろと瀬名君の周りに群がってて近寄れないって言うのに九条さんだけ抜け駆け何てずるいわ!」


氷室は我慢が出来ず教室を飛び出す。大方、九条の元にでも向かったのだろうが既に日は沈み帰宅時間だ。生徒会室に向かうだけ無駄だろう。


「其れで如何するの?」


蒼井は一ノ瀬に尋ねる。


「アンタバァカァ?ツケルニキマッテルデショ!!」


一ノ瀬は口元を吊り上げるとそう言った。



「はぁ、ドキドキしますわぁ」


駅前にて約束を取り付けた九条は緊張した面持ちで瀬名を待っていた。


(少々早く来てしまいましたでしょうか......いえ、此れは九条家の、私の使命。早過ぎるに越した事はありません。)


「必ずや今日のデート、成功してみせますわ。」


集合時間までにまだ2時間程有る筈なのだが興奮のあまり早い時刻に着いた九条。その姿を遠くの裏通りから見張る一ノ瀬一団。


「九条さん、早過ぎないか?始発の電車に乗ったでしょ、アレ?」


氷室は欠伸をしながら九条を指差す。


「もし私が九条なら、昨日の夜からいるわね。」


「右に同じね。」


一ノ瀬と蒼井は九条に張り合うようにそう言う。氷室はドン引きの表情を見せるが、二人は気にした素振りを見せず九条へと注意を向ける。


「そう言えば、ウィリアムの奴に言わなくて良かったの?」


氷室はステラを思い出しそう口にする。


「何で言わなきゃ行けないのよ、彼奴に。」


蒼井が答える。


「最近様子が可笑しいのよ、ステラの奴。」


すると何処か変わった表情で話を始める一ノ瀬。


「いや、前からだと思うけど、」


「...........違うの。何度話しかけても上の空って言うか、一人ブツブツ言っててちょっと不気味でさ。何かジョンのママさんにやられてからずぅーとあんな風になっちゃってて、見てらんなかったわ。」


「其れは.........ちょっと心配ね」


蒼井は一ノ瀬の話を聞きステラに同情の感情を感じる。


「あ、瀬名君来たみたいよ。」


氷室が瀬名の到着を確認する。



「おはよう、九条さん。社交界ぶり、かな?」


ぎこちない表情で話す瀬名。本来ならば来たくはなかったのだろう。


(.........其れでも私は瀬名様との距離を詰めさせて貰いますわ。)


「は、はいぃ、お久しぶりですわねぇ。」


内心とは裏腹に思った様に口を動かす事が出来ない。余りにも瀬名ジョンと言う人物が美しいのだ。目の前に立たれるだけで心拍数が上がり顔はトマトの様に赤くなっていた。


「其れで、用事って何かな?」


「其れは............デー、おほん、社交界の際に助けて頂いたお礼として何か瀬名様の役に立てる事がしたかったです。」


(そう、謙虚に、謙虚に行かなくては行けません事よ、香久耶)


すると瀬名はクスッと笑った。


(笑った!?)


九条は何か勘に触ることをしてしまったのかと焦り頭を下げ謝罪の言葉を出す。


「ごめんなさい、私が何か失礼な事を」


「あはは、違うから頭を上げてくれ。だって電話越しだと真剣なトーンで話されたからさ、もっと大切な事だと思ったんだよ。」


「わ、私にとっては命に代えても果たさなければ行けない使命なのです!」


「大袈裟だな、九条さんって。」


瀬名は優しい表情で九条を見ると携帯の画面へと目を移す。


「でもまぁ時間は有り余る程あるしなぁ........せっかく街に来たし、普通にデートしよっか?」


九条はその言葉に胸をときめかせ耳を赤くする。もう死んで良いのでもないのかとさえ思った。


「は、はいぃ!ょ、喜んでお受け致しますわ!!」


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