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秋山紅葉の初恋 EP1

取り敢えず秋山ENDはケイトが来日しない世界にのみ起こるルートだ!

私が瀬名くんと会ったのは愛犬欽キンが彼の家に迷い込んでからだ。


初めて見た時、私は恋に落ちた。正直な話、即座に攫い家に持って帰ろうとまで考えていた。


仮に瀬名くんの母があの場で出てこなければ私は欲情に駆られ襲いかかっていたのは確かなのかもしれない。


「瀬名くん、今日も一緒に帰ろう?」


瀬名くんは何時も何故か教室を最後に出る。彼は外をずっと眺めているのだ。あのマスクの下ではどんな表情をしているのかは分からない。


「うん、帰ろっか。」


ああ、返事を返してくれた。その美しい音色の様な声に頰を紅くしてしまう。極端に男性が少ないこの世の中で私が彼と接点を持てたのは奇跡に等しいだろう。


(私はこのチャンスを逃す事は出来ない。)


瀬名くんと出会い数ヶ月が過ぎた。クラスの女子達はいつも通り下品な話をし人気のある男子生徒を視姦する毎日。瀬名くんは未だにマスクと伊達眼鏡を着用している。私も協力して何とかクラスメイトや他クラスの生徒に対しバレない様にしているのだ。


(幸せだ.........彼と共に居られるだけで何もいらない)


そう感じられる程に今の関係に満足している自分がいた。


「ねぇ、紅葉ってさ、瀬名くんと仲が良いの?」


隣のクラスの友人が唐突にそう聞いてくる。私は悟られない様に演技をした。


「うんうん、瀬名くんってたまに遅れて来る事があるんだよね。だから、先生からプリントとかあげる様に頼まれてるんだ。」


「へぇ、そうなんだ............一緒に帰ってるとこ見たんだけど、アレもプリントをあげるためなの?」


分かっていて聞いてきたのか。つくづく女と言う生き物は男が絡むと怖いな。


「............瀬名くんに一緒に帰ろうって言われたから。」


つい強がってそう言葉に出してしまった。友人は怪しげな顔で自分を見る。


「あんた、もしかして、瀬名くんの顔の事で何か知ってるんじゃないの?」


こう言う時だけは女の勘が冴える。秋山は目を瞑り友人へと伝える。


「私が知りたいくらいです。」


疲れた様な表情で話す自分に友人は手を肩に置き、どんまいと励ましの言葉を送ってくれた。


「そんな事があったんですよ、瀬名くん!女の人は怖いんですから、絶対について行ったりしては行けませんよ!」


「ふふ、何だか秋山さんはお母さんみたいだね。ありがとう。秋山さん以外にはついて行かないから安心して?」


ああ、今笑ってくれた。出来ればマスクの下に見える男神の微笑を目にしたかった。


「今日も送ってくれてありがとう。」


「いえいえ、瀬名くんと一緒に帰れる私こそ、ありがとうですよ!」


瀬名くんが玄関に入るのを確認すると私は帰路へとついた。瀬名くんの家から徒歩で10分の位置だ。


「ただいまー」


「ただいまー紅葉。学校はどうだった?」


母がリビングから声を掛けてくれる。


「今日も一日楽しかったよ!」


そう、私は世界で一番の幸せ者。この楽しい日々を手放す事は出来ない。いや、手放したくない。


「ふふ、瀬名くんからやっと聞き出す事が叶ったアドレス.....んんんンンンン♫」


私の最近の日課は瀬名くんのメールアドレスを眺める事だ。本当なら今すぐにでも瀬名くんにメールがしたい。でも、瀬名くんに嫌われたくないから瀬名くんがメールをしてくれた時にだけ目一杯話そうと決めていた。


「明日もまた良い日になります様に。」



ピピッ!ピピッ!


次の日の朝、メールが届く。眠たい感情を殺し私は即座に立ち上がった。何故ならメールの差出人が瀬名くんであるからだ。


「な、何だろう。もしかして告白のメールだったり//」ゴクリ


朝なのか思考が上手く回らない。ただ、瀬名くんから届けられたメールが嬉しいのだ。


「えっと、...........今日は学校に行かないから、先に行ってて?」


落ち込む自分の姿が鏡に映る。


秋山:風邪を引いたんですか?


瀬名:うん。微熱なんだけどお母さんが休みなさいって。


秋山:見舞いに行きますね。


瀬名:ありがとう、でも風邪が移ると行けないから気持ちだけで嬉しいよ。


ああ、瀬名くんは何て優しいのでしょうか。この世の男性達は皆、傲慢かつ我儘だと言うのに。


(私に移してしまえば良いのに.......いや、寧ろ自分が吸い込みたい。)ジュルリ


イカンイカン、つい妄想を膨らませてしまいました。ヨダレを拭きながら返事を書き込んでいく。


秋山:分かりました。風邪が早く治る事を神社にてお祈りして参ります。お大事に。


瀬名くんは大げさなだよと返してくれたが大げさではない。瀬名くんが仮に死んでしまえば私もこの身を投げ捨てる程に私は貴方が大好きなのだから。


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