Episode60 "貞操の逆転した世界より"
最終話!!当初は約十話くらいで終わらせようと思ったんやがな、ダラダラと続いてもうたべ。
「.........俺が初めに話したのは、母さんじゃあない。」
(あの看護師の男。マスクをしていた所為か顔も見る事が叶わなかったが。)
瀬名の言葉を聞き皆はうなだれ様に玉座へと座り込む。瀬名とケイトは意味が分からず八人の顔を見渡すが全員が全員、絶望に満ちた顔をしていた。
「一叔母さんじゃないと、何かproblemでもあるデスか!!」
ケイトはアルセへと向かい叫ぶがアルセは眉間に手を当て深く考え込んでいる様でケイトの言葉が耳に入って来なかった。
「ジョン...............」
一は涙目になりながら瀬名を抱き締める。
「いったい、どうしたって言うんだよ?」
一は何も言わず瀬名を抱き締めるだけ。瀬名は答えを聞くために暴れるが強く押さえつけられている。
「もう余り時間がないの.........ジョン、愛してる。」
「母.....さん?」
まるでお別れの様な言い草に瀬名は戸惑いの表情を見せる。
「良い加減、勿体ぶらず教えてクダサイ!!お別れみたいな言い方はやめて!」
ケイトは素に戻りアルセとネーレイスの胸ぐらを掴み上げる。
「.........ケイト。」
アルセは流す涙を拭きケイトの目を真っ直ぐと捉える。
「セナはもう時期にこの世界を去る。正確には魂が元いた器に戻ると言う事。だからケイトが心配する必要はない。数時間すれば今のセナは元どおり、以前の人格に戻るよ。」
ケイトはアルセが言う言葉に理解が出来ず瀬名と一を交互に見て頭を悩ませる。
「それじゃあ何でアルセ達は悲しんでるデスか?」
「ジョンが戻ればアルセ達もいなくなるからだよ。」
難解な情報量の多さにケイトは苛立ちを感じる。
「何でアルセ達もいなくなるデスか!」
「アルセ達の使命は世界の均衡を保つ事。世界は一つだけじゃない。幾重にも広がる枝葉の様に無限に続いている。でも一つでも歯車が狂えば其れは大多数の世界にも影響が出て来る。」
「意味が分かりません.....其れとジョンに何の関係があるデスか、」
「簡単だよ。セナには正史を歩まさなければならない。そこいらの転生者や神とは扱いが違う。天と地、うんうん、天と虫けら程の差があるくらい。混沌の先にこそ、セナは進まなければ行けないの。」
「混沌の.......先.....」
「そう、デメリットが少ない世界の方が良いでしょう?それにアルセ達は役目を終えた世界からは存在そのものが消滅する。其れは関係を持ってきた貴方達、人の記憶からも。」
これらが引き起こされるトリガーは二つある。
"本人が世界に干渉する。"
"octagon《八人》と瀬名が邂逅をする事"
絶句するケイト。いきなり過ぎて話について行けない。
「混沌の先に辿りついた本人って.........ジョ「ダメですよぉ、その先を口にしてわぁ♡」
レイスがケイトの唇を人差し指で塞ぐ。
「母さん、アルセ達が話している事は本当なのか?」
「そうよ。でも、ジョンくんからしたら都合のいい話でしょ?こんな世界じゃあ生きづらいんだもの。」
「た、確かにそうだけど........でもアルセの話が本当なら母さんも消えるのか?この世界の俺は一人残されて。」
「正確には違う。一度、リセットされるだけよ。何処の世界にも私達はいる。ただ、此処にいる私達がいなくなるだけよ。貴方の精神が本来の器に戻ったのなら貴方はこの世界で見てきた記憶は失う。だから、そんな悲しそうな顔を見せないで....うぅ」
一は瀬名に対しそう言うが瀬名以上に悲しい表情を浮かべ涙を流していた。其れは同様に七人の女性達もだ。
「ケイトは嫌デス!!」
ケイトが瀬名を一から引き剥がし八人を睨み付ける。
「何で皆さん、納得した顔をするデスか!ケイトは今!此処にいるジョンの事しか知らない!なのに何で諦めた顔をするのですか!何か方法はあるんじゃないデスか!!」
アルセが玉座から立ち上がりケイトの肩に手を置く。そして覚悟を決めたのか、一振りのナイフを渡した。
「ケイト、本当に止めたい?ならアルセを刺せばいい。」
ケイトは訳が分からずナイフを投げ捨てる。
「何でアルセを刺さなければ行けないデスか!できる訳ありません!」
「今のセナを留める事が出来たとしても?」
「....................出来ません。」
アルセはケイトを抱き締め、ネーレイスへと笑いかける。
「言ったでしょ、この子は面白くて...........優しい子だって。」
するとケイトは突然意識を失った様にアルセへともたれ掛かる。アルセはゆっくりとケイトを下ろし目を閉じると瀬名の前へと立った。
「セナ、ありがとう。」
何に対してのありがとうなのかは分からなかったが何処か満足した表情だった。
「光が............」
「時間ね。」
場内全てが光の泡に包まれる。そして一人、一人と姿を消して行った。
「ジョン、14年と言う短い間だったけどとても楽しく愛おしい時間だったわ。」
一は背中を向け振り返らず光と消えていく。瀬名は母を追う様に手を伸ばすが届かない。
「俺はッ..........」
海洋都市はその日と共に消滅し、人の記憶から忘れさられる。
★
「あら、起きたの?って何泣いてるのよ、ケイト!」
目を覚ますと伊都が自分の頭を撫でていた。
「..........分からない....デス」
ケイトは立ち上がり窓を除くと見慣れた景色が映っていた。
「USに戻ってます........戻ってます?何でケイトはそう思ったデスか..........」
頭のモヤが取れずボーっとしていると父であるジャックが昼食の準備が出来ていると呼びに来てくれた。
「パパ.......」
「どうした、そんな浮かない顔をして。ジョンくんに会いたいのかい?」
「ジョン............会いたい。どうしようもなく会いたい。ケイトは..........」
★
ア二メや映画みたいな世界に行きたいと思ったことはないだろうか。誰しもが常日頃からこの感情を心の内に秘めていると思う。
自身が小学生のころ自分は特別な存在で正義の味方のような存在になれるものだと信じていた。しかし現実はそう甘くはない。警察官や自衛官はたまた消防士にでもなれば‘それ’に近いものにでもなれるのだろうが心は満たされないだろう。
中学生にあがりたての頃、自分は空想上の英雄のような存在には決っしてなれないことに気づく。それからはいろいろな物に挑戦をするようになった。スポーツ、料理、音楽といろいろな物に手を出しては飽きを繰り返し初めての受験に突入する。
母子家庭で育ち自分の母に負担心配をかけないよう勉強面だけはしっかりと行なってきた。その努力は報われ地元では有名な公立の高校に合格することが出来た。ここでも只々つまらない日々が過ぎて行く。
友達はいるのかと聞かれればいるのかもしれない。友達の定義がどの範囲によるかだが。一緒に遊びに行く仲からが友達なのかそれとも校内で昼食を共にしたら友達なのかはたまた会話をしたら友達なのかオレにはよく分からない。認めるよ、友達はいないんだよバカ。
いつからかあまり笑わなくなった。笑わなくなったて言っても心の底からって意味なんだけど。最近は音楽を聞きながら空を見上げるのが大好きだ。海風にあたりながら夕日を眺める。至福の喜びを感じる。
部活はやっているのかって聞かれればやっていたって答えるよ。部活内でのイジメは見ていてつまらないからね。ちなみに演劇部に入ってたけど数ヶ月で止めたよ。
高校はバイト禁止だけどバイトは母子過程を理由に許可を貰っている。っても母は一流企業に務めるエリートビジネスウーマンで金銭面ではそのへんの一般家庭よりは余裕がかなりある方だ。母は放任主義でいつも自分に対し好きな道を進めばいいと言ってくれる。
「ジョン、アンタ絶対あれでしょ?」
食事を終えテレビに顔を向けていると対面側に座る母が話をかけてきた。
「犬が轢かれそうになっても助けない。イジメを見ても助けない。困っている老人をみても大丈夫かと声をかけない。他人に関心がないって訳では無さそうだけど人と距離を置きたがるタイプねアンタは。私に対してもどこか最近冷たいし。」
いきなり訳の分からないことを言い出す母にオレはいきなりどうした?と尋ねてみる。
「いや何、中学までのアンタは何でもかんでも首をつっこんでは助け怒られを繰り返しててけっこう喜怒哀楽が激しいやんちゃボーイだった筈何だけど、いつからそんなんになったわけ?黙ってクール気取ってればカッコイイとか思っちゃう痛い奴じゃないわよね。」
この母親は自分の息子に恨みでもあるのか。でも本質は間違っちゃあいない。いやむしろ正解です。最近某忍者漫画を読んで復讐系クズがツボにハマりまして真似をした所抜け出せなくなり高校では変人扱いのぼっちになりました。
「うーん、ライダーベルトが装着できなくなった頃かなぁ?大人になったってことだよ。」
開き直って肯定してしまう自分。あながち正義のヒーローとか超能力に目覚めたりとか出来ないって悟ったころからこんな痛い性格になっちゃたので矯正するにはかなりの労力と時間がいるだろうと自分なりに分析してみる。まぁ表に出したのは高校入学時と言う何とも言えない時期だったが。
「いやでもカッコ良くない?何か自分は他とは違うんですオーラを放つことで優越感に浸れるって言うか。」
母は自分がまだ話と言う名の言い訳をしている途中で自分の意見を押し付けたてきた。
「大人ですってぇ?アンタもしかして学校でもそんな態度とってるんじゃあないでしょうね?」
ギクっ!と身体を震わせると母は目を細めた。
「やっぱしねぇ、アンタ周りからドン引きされてるわよぁそれ。いじめは無さそうだし心配はしないけど大学ではそのキャラは捨てなさい。友人を作った方が大学内での生活成績では有利に働くから。それと不純異性行為は我が家庭では禁止です!」
明日は高校の卒業式だ。この態度のせいで彼女は出来なかったけど来月からは大学時代に突入だぜ!彼女は欲しい?いや主にエッチな事がしたいです! と複雑な顔を浮かべ考えに没頭する。
「アンタ......まさか、既にいるとか言わないでしょうね?いるの?確かにアンタは美男だからしょうがないでしょうけど.....もし仮にいたとしてもお母さんは認めませんからね!!」
焦る声で息子に彼女の有無を問う母上、しかし何故焦るのだろうか。
「ふっ、イケメンなのは認めよう。何せ美人な大和撫子系母さんと西洋から生まれたハイブリッドなのだから。だが甘い!彼女無し=年齢のチェリーボーイだぜ!」
くっ、何故だ!何故アニメ的な出会いがないんだ!告白がされたいんじゃない、したいんだ!!燃え上がる程の恋を感じたい!!!
「はあ〜よかったぁ!アンタの初めては私が頂く予定だったと言うよりもそうするつもりだから。」
一瞬頭がフリーズした。
「え〜今何て言ったのお母上?」
「聞こえなかった?」
「オマエノドウテイワタシノモノ」
誰だこの人!?お母さんは何処へ?
「えっ、怖い怖い!自分の息子に堂々とレイプ宣言!」
あれれぇ、おかしいなぁー(某探偵風)。母はもっと常識人だと思ってたんだけど。
「ほら私って、近親相姦系ヤンデレ女子だから。」
うん、全然違いました。常識を超えて来たよこの人。しかもそれ初耳です。
「自分のこと近親相姦系ヤンデレ女子って........」
あれ数分前までは普通に家族してたのにおかしいなぁ。
「ねぇ、私はあなたが成人するまでは手を出さないつもりでいい母親を演じて来たの、でももう女としての私は我慢が出来ないの!わかる?私の気持ち!!」
うん、わかりません。
「明日は卒業式、待ち遠しいはぁ〜」
まぁ、話しは戻し(母から眼を背けて)母の言うとおりオレは昔のように正義感溢れる主人公体質から脱っしどちらかと言うとサス系男子に近い存在になってしまったわけですよ。善悪に別れろと言われたら悪側に強制連行されるレベルに心が現実主義者となったわけだ。
そして今日は高校最後の日である卒業式だ。仲のいい友達もいなく楽しい記憶のない三年間だった。まぁ、某有名一流大学への切付はすでに手にしているし未来への心配は特にないが。
「はぁ、行きたくねぇなぁ。」
その日の夜、瀬名は早めに床に着き早朝に備えた。次の朝、母の手により最悪な朝を迎えた瀬名ジョンことオレは顔を洗い制服に着替えリビングへと向かう。リビングに着き母に朝の事を問いただす為抗議に向かうと危うく貞操を奪われそうになった。
(うう、もうやだ。)
顔色を悪くしながら朝食を食していく。朝食を食べ終えた自分は母に今日の卒業式について話しをした。
「母さん、今日の卒業式なんだけど、10:30から保護者の入場手続きだから受け付けには少し早めに行った方がいいよ。」
「んー」
朝食の最中で鼻で返事を返す母親を見て笑顔が漏れる。そう、これが普通の親子の会話風景なんだと。
「母さん、今迄ありがとう、オレそろそろ行くよ。」
母手一つで此処まで育ててくれた母に感謝の気持ちを伝えユニフォームの上着を着る。
「アンタ、」
「ん〜、どうしたの母さん?」
「うんん、何でもない。気おつけて行ってきなさい!」
何かを言いかけた母だったが何処か寂しそうな表情を浮かべ息子を見送る。そして玄関のドアを開き見送る母に向かい元気よく挨拶をし返す。
「おう!行って来まーす!」
こうして人生で一度しかない高校の卒業日である一日が始まるのであった。
Chaos:Demerit 〜貞操の逆転した世界より〜
終わりやで、読者のみんな!此処までこのクソ作品に付き合ってくれてありがとう!最後、何やねんこれ、見たいな終わり方やけど未完よりはマシやろ!まぁ、無理やりChaos:Demerit〜不屈の英雄〜、プロローグ1に引っ付けた感はあるが何とか終わらせたで!八人の正体が気になるなら読みいや(宣伝)。
ちなみに挿絵がウンコなのはしょうがない(最初期に描いた奴だから瀬名のビジュアルが違う)!其れじゃあみんな!ご愛読ありがとうございましたッ!!ドン




