番外編 "鈍感系主人公が癪に触るのは当たり前"
「やっと捕まえたぁ」
甘い声が瀬名の胸元から聞こえてくる。その声の方へと顔を向けると先輩が顔を埋めていた。先輩は片手で空教室の鍵を閉め瀬名を押し倒す。
「せ、先輩!?な、何してるんですか!」
自分に股がる先輩は制服を着ておらず下着姿になっていた。
「子供、作ろっか♡」
先輩は吐息を漏らしながら耳元で呟く。
「や、やめて下さいよ!」
手を振り回そうとするがいつの間にやら手錠が瀬名の手と空教室に置いてある部品に付けられていた。
「大丈夫だよぉ瀬名君、私も初めてだから♡」
「そ、そう言う事では無く、彼氏さんに申し「別れた」は!?「別に好きでも無かったし、やっぱし瀬名君が良いよぉ♡」
胸元を舐めながら先輩は自分のブラのホックを解いていく。
「や、やめて「可愛い//口にもキスしちゃうね、ちゅ//」
唇を奪われるが瀬名は暴れる。
「暴れちゃあ、メ!だよ。」
頭を我が子の様に撫で初めるとブラが外れ乳房が露わになった。
「興奮してくれるんだ!あは♡」
瀬名も男、下半身は反応してしまった。
「早く、どいて下さい!叫びますむっちゅ、ぷぁ、やめ、ちゅ」
叫ばせない様に瀬名の唇へ舌を入れ蹂躙する。先輩はトロンとした表情で下半身を瀬名の身体へと擦り付ける。
「はぁ.....はぁ」
「瀬名君の初めてのキス貰っちゃったね?ふふ」
嬉しそうな顔をしながら顔を猫のように擦り付ける。瀬名はこれ以上は優勢にとられてはダメだと思い言葉で反撃をする事にする。
「先輩が初めてって訳では無いですよ、勘違いしないで下さい。」
すると先輩は顔を離したと思ったらその場で硬直した。
「ダメ......ダメだよ.....私が....特別なんだから....」
瀬名の瞳を見つめながら顔を紅くしブツブツと呟く。瀬名はチャンスと思い女子にはかけたくなかったが小学校の頃習っていた柔道で覚えた寝技を使い先輩を拘束する。
「あら?え?なんだ、瀬名君が私を抱き締めてくれてるし唇を奪った女なんて嘘なんだ。はは、いないんだよねぇ、瀬名君?.....私.......だけだよね?」
寝技をかけられているにも関わらず嬉しそうな表情を浮かべ挟んだ腿をぺろりと舐め始める。
(狂ってる....)
気絶させるように強めに技をかけると徐々に先輩の力が抜けていきそのまま床へと寝そべる。
「この手錠、どうしよう、」
今は何とかして助けを呼ばねばと思い空教室から外の人影が来るのを待つと一つの影が見え叫び声を上げる。
「すいません!この扉開けてくれませんか!!」
すると外からこの扉が開き一人の女子生徒が入ってきた。
「せ、瀬名君?」
橘さんだった。
「ゴメン、橘さん、ちょっと助けてくれるかな。多分先輩のポケットに手錠の鍵が入ってると思うんだけど、」
瀬名は倒れる先輩へと視線を向けると橘は先輩のポケットを弄り鍵を見つける。
「鍵見つけたけど....ごくり」
唾を吞み込む音が聞こえる。瀬名は冷や汗をかきつつ橘へ笑顔を向けながら感謝の言葉を口に出していく。すると徐々に橘の耳が紅くなり慌てたように此方へと駆け寄ってくれた。
「すぐ外すね!」
手錠を外そうと瀬名へと近づくと顔が数センチしか無い距離まで近づきさらに橘の心臓の音が高鳴る。
(あぁ、瀬名君。吸い込まれる、匂いも、体温も、全てを私の物にしたい。)
鍵は手から落ち瀬名の腹部へと座り騎乗位に近い状態を取る。瀬名は暴れるが橘は両手で顔をがっちり挟み唇を近づけていく。
「だ、ダメだよ!君には大和君がい「うるさい」むううううぅ、むちゅ、ちゅ、じゅ、ちゅ、ちゅうううぅ、ちゅ」
口内を再度犯される瀬名は意識が朦朧とするが目の前にいる野獣の前で気絶しまいと自制し何とか意識を保つ。
「はぁ♡瀬名君の味ぃ、おいちぃ♡ちゅ」
今度は軽くフレンチキスをされた。 瀬名は苦渋の表情を浮かべ決意を心に決める。
「橘さん「オトヒメって呼んで」オトヒメ!オレはお前を抱き締めてオレの物にしたい!キスも一日中だってしたい!でも、これじゃあ抱き締められないだ君を「うん、わかった♡♡」ガチャ
案外簡単に言くものだと瀬名は安心する。そして橘の瞳を覗き込むと焦点が合っていない事に気付き扉の近くへと移動をしようとするが橘は瀬名を回り込み両手を広げる。
「瀬名君をもっと感じたいの。オトヒメを瀬名君の物にしてほしい、な?」
上目遣いを使うが瀬名は橘の前髪を上げデコピンをした。
「痛っ♡」
おでこをさすりながら嬉しそうな顔になる。
「瀬名君に触れられてるって思うと痛みも喜びに変わるんだね。」
橘は自分の股を抑えるようにしゃがみ込んだ。その姿にドン引きをしつつ瀬名は質問する。
「橘さん「オトヒメ//」
瀬名が橘の名を呼ぼうとすると橘は口を挟み下の名前で呼ばせようとする。
「駄目だよ、オレは君を橘さんって呼ぶから。それに大和君とは仲直りしたの?」
そう、本来なら彼らの関係に割り込むべきではなかった瀬名は素直に参っていた。自分が壊してしまったのではないのかと。
「さっきはオトヒメって呼んでくれたじゃん!!」
「橘さん、聞いて!君には大切な人がいるだろう?それはオレじゃ「違う!!」
「私を変えてくれた、素直にしてくれたんだ。瀬名君は私の旦那様になるの!!」
「それは大和君が「タケルは関係ない!」関係あるさ!君はオレの容姿に惹かれただけだ!そんな軽い気持ちで、幼馴染、大切な人を捨てるな!」
瀬名は久々にキレた。その怒った顔を見て橘はさらに顔を緩める。
(瀬名君が私の事を想って怒ってくれてる//あは、怒ってる顔も可愛い//私だけの旦那様、一緒にいるべき人♡)
「聞いてるの、橘!!」
呼び捨てにされた事でさらに機嫌が良くなる橘を見て瀬名の表情に影がつく。
「あはは、もういいや。」
「瀬名君?」
「ねぇ、君って大和くんの事が好きなんだよね?浮気は駄目だと思うよ。キスの事は黙っとくから二度と話しかけないでくれるかな。そこに倒れる先輩にも同じこと言っといて。それと彼氏さんに謝って復縁しろとも。それじゃあオレは行くよ、さよなら。」
しらけたように空教室の扉を開け廊下へと出る。
(もう、直接顧問に行ってやるよ。)
職員室へとより家庭科の先生へと話をつけると案外スムーズに言った。そしてバスケ部の顧問に会うため体育館へと行き入部届けを出しその日はそのまま帰宅した。視線を感じたが駆け足で家へと向かう。
(あの角さえ曲がればマンション)ドン
「いてて、」
尻もちをつきすぐさま立ち上がりぶつかった人の元へと駆け寄ると、
「あ、この前の」
果実を落とした人だった。
「ご、ごめんなさい、手を貸してくれるかな?」
「あ、はい!」
此方が走ってぶつかったのだと言う罪悪感を感じ手を差し伸べると女性は自分の手を握ってきた。
「ありがとうっ、」
痛そうな表情を浮かべた女性の足を見ると皮が擦りむき血が流れていた。
「っ」
瀬名に責任感と罪悪感が襲い掛かる。すると女性は自分の傷への視線を感じたのか心配するなと瀬名に言う。
「こんなの唾でもつけとけば治るよ!....もっとも誰の唾かによるけど」ボソ
最後の方は聞こえなかったが自分が招いた事態なので彼女の手を強く握り締めると嬉しそうな顔をした。
「家まで送ります。」
瀬名がそう言うと嬉しそうな顔を浮かべ共に足を進ませた。
(そろそろいいかなぁ、....離せない....)
繋いでいた手を離そうと手の力を緩めると力強く握ってきたのだ。それもこの手は絶対離さないぞと言うオーラと共に。
「そこを曲がればすぐだから!」
どうやら彼女の家は瀬名のマンションから徒歩10分の位置に面しているようだ。
「よし、ついた!」
彼女が嬉しそうに瀬名を家の中へと連れ込もうとするが玄関先で立ち止まる。すると彼女は不思議そうな顔をして瀬名の手を引っぱるのだが、
「あ、あの怪我の事は本当に申し訳ありませんでした。オレはもう行きます。」
「せっかく送って貰ったんだから上がっていきなよぉ!」
「いえ、今日はもう遅いので後日お詫びの品を「そんなのいいよぉ~」
すると女性は自分を抱きしめて来た。瀬名はたわわな胸へと押し付けられる。
(いい匂いがする.....が..この人もヤバい人だ)
瀬名はこの手の危機は既に百を超える程経験していたので目の前の女性が危険であることは理解していた。
「あのねぇ、私の事を思うならお詫びの品なんかより瀬名くんから直接欲しいなぁ。」
頭を撫でられながらお尻を触られる。
「ひっ!?わ、分かりました、後日、ご飯でも一緒に食べに行きましょう。」
「違うんだよなぁ〜、私が欲しいのはぁ〜」
手がお尻から前へと動いていく。
「お姉ちゃん?」
玄関の扉が空き女性の声が聞こえて来る。
「え、瀬名...君?」
「その声は先輩、ですか?」
女性の胸に押し付けられた状態でフガフガと答える瀬名の状態に先輩は怒りの表情へと変えていく。
「お姉ちゃん!!何してるの!!!瀬名君は私のものなの!!退いて!」
女性と瀬名を引き剥がそうと二人の真ん中へと立ち手を挟むが、
「私の王子様に触れないで!!真姫が相手でも私どうするか分からんないよ!!」
へぇー、先輩の名前ってマキなんだ。いや知ってたけども。
「はぁ?ふざけんな!!瀬名君は私の後輩で将来の夫なんだから気軽に触れていい存在じゃあないことくらい分かってよ!!!」
二人のぶっとんだ妄想垂れ流しな意見を聞きながら二人の胸の中を行き来させれる。
「真姫!あんた、彼氏いるでしょーが!!いい加減アンタが王子様にふさわしくないって認めなさいよ!!」
「別れましたー!!「ビッチ何かにも優しくする王子様が可哀想!」は?私まだ純潔だし!初キスは瀬名君だし!!」
「嘘乙!!王子様があんた見たいな性悪女とキスなんかするもんですかぁ〜」
「性悪女って、お姉ちゃんなんかオタクじゃん!!顔がちょっと可愛いからってオタサーに入ってお姫様なんて呼ばれちゃってさ、正直な話、キモいんだよ!」
「ちょっと?私、モデルもやってるんですけどぉ〜!テレビとかCMでも見るでしょ私のこと!!中学生のませた牝ガキが生言うんじゃないわよ!」
有名人だった事に驚くがそれよりも二人の性格が先程までとは違う事に驚く瀬名。
「ふん!だったら中学生の私達に関わらないで男アイドルとでも乳繰りあってろよ!なんならオタク共とでもシてこればぁ?だ~か~ら~離れてぇ~よ~!!」
ぎゃぎゃあと叫ぶ二人の隙をついて抜け出すと玄関の扉を開け外に急いで出る。
「後日、お詫びの品もってきます!では!!」
その場をすぐさま後にするが後ろからは二人の叫び声がいまだ聞こえてきた。
「ほらぁ〜お姉ちゃんのせいで逃げちゃったじゃん〜、ん?待てよ?お詫びの品?それに何故瀬名君が...」
真姫の姉はそんな妹を掴み外へと投げ捨てると玄関の鍵を閉める。
「あぁー、馬鹿真姫の所為で王子様が逃げちゃったぁ〜!早く種付けしてもらわないと安心出来ないぃ〜」
「キモッ!」
妹のツッコミが部屋に響き渡る。
「あんた、ちっ、スペアキーをアンタに渡したの忘れてた。その鍵置いてとっとと帰りなさい。」
姉は真姫をゴミを見るように見下す。が真姫はくつろぐように荷物を下ろしソファーへと腰を下ろす。
「私、此処に住むから。以上」
「無理「それが無理」本当に無理だから帰って真姫「なら何で瀬名君が此処にいたのか説明して」説明したらかえるのね?「う、うん」
すると姉はこれまでの経緯を説明し瀬名がこの家の近くに住み先程仕事帰りにぶつかり此処まで送ってもらったことを説明すると真姫は無表情となり姉はドヤ顔となった。
「さ、満足でしょ「住む」は?約そ「住む!」ふざけない「住むってばぁー!!」
駄々をこねながら床へと転がる妹を見て本気で殺意が湧いたが昔からこうなると言うことを聞かなくなる妹を知っているので諦めた様に承諾すると嬉しそうな表情を浮かべ私に抱きついてきた。
「調子のいい奴」
「お姉ちゃんに似たのかもっ!」
姉は早まったか?と思うのであった。
「ふぅ、良し!一日が無事に終わったぁ。」
少しでも気を抜けば犯されるのは必然、ならば少しでも己を鍛えるは真理。宿題、夕食を済ませた瀬名はダンベル、腕立て伏せなど己の身体を磨く訓練を毎日二時間は風呂に入る前に行なっていた。既に時刻は11時を超える頃だった。
「ふぅ、お風呂入って寝よう。」
汗を服で拭い風呂場へと向かう。そしてシャワーを浴びながら考えるのであった。
(バスケ部への入部届けも終えた。そして、一年生が終わるのも残り二週間、そうすれば休める。)
春休みに入れば休めると考える瀬名はまだ理解をしていなかった。その安直な考えが間違えなのだと。
という訳で番外編(中学編)は一時此処までと言う事で!




