番外編 ”仮に幼なじみとイチャイチャする男が同級生に入れば全力で寝取りに協力するだろう?”
「ふっ、今日はいつもより早く起きれたぞ。リビングでオトヒメが来るのを待つか。」
橘を驚かせてやろうと何時もより起きる時間を早めて置いたのだ。
「あいつの驚いた顔が楽しみ、ん?冷蔵庫にサンドイッチがあるから食べてね...だと」
膝を床につける。リビングにはメモが置かれていたのだ。
「あいつ...最近...朝早いな....」
ヤマトは取り敢えず立ち上がり冷蔵庫へと向かいサンドイッチを取る。
「む、美味しい......明日、つけてみるか。」
サンドイッチを口で頬張りながらもきゅもきゅと完食していく。
★
時間は遡り朝5時頃、幼馴染は眼を覚ます。
「早く準備して今日は家、六時ぐらいに出よ。」
三十分で支度を済ませ幼馴染の家へと向かう。鍵を開けキッチンへと向かうと食器が汚いまま置かれていたので洗い流し冷蔵庫からキャベツを取り出す。
(私って何で何時もこんな事してるんだっけ?幼なじみって言うより.....家政婦さんみたいだな、はは)
疲れた表情を顔に浮かべながらキャベツを刻んでいく。
「はは、私、最近タケルの事分かんなくなってきた。」
(昔あいつから結婚の約束をしてもらったけ?嬉しかったなぁ、あいつの隣には私がいないとって思ってたけ、でも一度も感謝の言葉とかって言って貰った事がないなぁ。やさしいけどやっぱり言葉に出して欲しいな、なんてね。)
キャベツを切り終わると食パンを取り出しフライパンでウィンナーを炒める。その間に食パンを取り出し一枚一枚を半切りにする。そしてその食パン達をトースターへと入れた。
「もうあいつはあの約束なんて忘れてるだろうなぁ。」
遠い眼をしながらサンドイッチを完成させるべく炒め終えたウィンナを出来上がった食パンの上へと乗せその上にキャベツを乗せる。そしてキャベツへとマスタード、ケチャップを少量入れるとサランラップで巻き冷蔵庫へと入れた。橘は使った料理器具を片付けるとメモを残し幼馴染の家を後にする。
「セナ君と話さないと」
嫌そうに言うがどこか足取りは嬉しそうに見えた。
★
「今日も海が綺麗だなぁ」
瀬名は長い髪をなびかせながら窓を開け外を見ていた。
「昨日はお腹が痛くて早く来れなかったなぁ、母さん過保護だから休みなさいとか大げさ過ぎるんだよ。」
ふふっと笑いながら瀬名は港から出る船を目で追う。すると教室のドアが勢いよく音を立てて開くのが聞こえたのでそちらへと顔を向けると橘が立っていた。
「はぁはぁ、おはよう瀬名君。」
息を切らしたながら挨拶をする橘に瀬名は苦笑いをしながら返事を返した。
「は、早いね橘さん。」
瀬名はびっくりしていた。こんなにも早くに登校してくる生徒は瀬名を置いてもいないのだ。瀬名は何とか許可を貰い管理人さんに教室の鍵を毎朝開けて貰っていたのだが本来ならば登校時間までにまだ30〜40分くらいはある。日直でさえ登校時間よりも十分早く来るくらいだ。
「ははっ、ちょっと瀬名君と話したくってね?」
橘は下へと俯いてしまう。瀬名はどうしたものかと頭に手を置き考える。
「あの、話って言うのは何かな?」
「あ、あの」
橘は緊張をしてしまい上手く言葉を出せないでいた。唯一言、一緒に部活動に顔を出してくれればいいと言うだけなのに。そんな心情を察っしたのか瀬名は冗談を混ざて場を和ませようとした。
「オレに惚れた?」
瀬名はこんな髪型の奴に惚れたなんて自信満々で言われれば、うけるー!と言う返事が返って来るだろうと考えていた。
「へ?」
だが思っていたよりも素っ頓狂な返事が教室をこだました。瀬名からすれば斜め上過ぎる返答だったのだ。
「ふふ、冗談だよ。橘さんって面白いんだね。」
人懐こい笑顔を浮かべるが髪で鼻から上が見えない。それに瀬名は橘を大和一筋の女子生徒だと思っている為、顔を一瞬見られたくらい屁でもないともないだろうと甘い考えをしていた。
「瀬名君、何で料理研究部やめたの?」
瀬名は少し驚いた顔をすると自分のカバンをまさぐり中から一枚の紙を取り出した。
「ほら」
それはバスケ部への入部届けだった。後数ヶ月が経てば二年生になるというのに瀬名は転部する予定だったのだ。
「瀬名くん、バスケやってたの?」
「全然、「なら、何で」オレは体験したいんだ。「体験....?」そう、体験だよ!経験したことない未知を体験するんだ!」
風が吹き顔が露わになる。瞳は輝き嬉しそうな顔を浮かべていた。綺麗、そしてそんな瀬名の考えを何故か尊く美しいと感じてしまう。
「そっか」
瀬名と同じく笑顔が自然と出てしまう橘。
「やっぱり、橘さんは笑った方が可愛いや。」
瀬名はただ思ったことを口にした。
「うっ//本当?」
つい嬉しくて確認をとってしまう。
「うん、大和くんもこんな素敵な彼女を持って幸せ者だよ!」
先程までは笑顔を顔に出していたがその一言で無表情へと戻る。そうか、瀬名くんからはそう見えてたんだ。まぁ誰だってそう思うよね。
「あのっ、タケルっ、大和くんとはそんな関係じゃないよ!私達家が隣同士ってだけだから、うん、そう、幼なじみで腐れ縁って奴だけだから!」
橘は手をパタパタさせながらそう説明してきた。
「へぇそうな「そうだよ」う、うん」
あまりの気迫に瀬名は顔を引きずらせる。
「....そ、それで話ってのは何かな。料理部を止めた理由ってだけじゃあないでしょ?」
橘はハッと思い出した表情になり瀬名へと詰め寄る。
「あっ、忘れる所だった!あのね、昨日部活に行ったとき先輩が瀬名君の退部届けを出してないから一度戻って話をしようって言ってたんだよ!」
「あぁ、なんだ....」
瀬名はつまらなそうな顔で窓へと向き景色を眺め直す。
「あの、きょ「明日行くって、言っといて」う、うん。」
「橘さんも料理研究部に入ったんだ?なら一緒に行こ?どうもあの部長と二人っきりで話すのは骨が折れると思うから。」
心臓がドクンドクンと跳ねる。
「い、いいよ、行こう!!」
大きな声を上げて返事を返す。
「ふふ、やっぱし橘さんって元気でおもし「乙姫って呼んで!」う、うん!」
瀬名は始めて異性の友達が出来たのではないかと心の中で歓喜する反面、踏み込み過ぎたかと後悔を感じていた。
「そろそろかなぁ」
「あ、そうだね。皆がそろそろ登校して来る時間だね。」
「そろそろ距離を取った方がいいよ。皆から奇怪な眼で見られるかもだし。」
瀬名は冗談からではなく真実からそう口にする。
「わ、私は気にしないよ!休憩時間とかも話そうよ!」
「ううん、やめとこう。関係っての大切だから、いつも通りにお願いね。」
渋々、橘は瀬名の提案を承諾したが代わりに自分の名前呼びの許可を求めた。瀬名は二文字でそれを答え橘はジョン君と呼ぶようになる。不思議な感覚だった。自分の名前を同年代の子が呼ぶのは彼女が初めてだろう。
「うーす!」「腹へったぁー!」「もう帰っていいかな?」「今来たばかりだろ!」「ウケるなそれ」
すると朝練を終えたクラスメイト達が姿を現し始めた。
「今日も早いな、橘さん!旦那は一緒じゃないのか?」
「タケルは唯の幼なじみだよぉー!」
「お、照れてる照れてる?」
「もぉ〜止めてよぉ〜!」
いつもどおりの朝が始まり瀬名は満足だった。そして一日が終わり下駄箱へと足を進ませる。
「ジョン君!」
階段を下りているとき上の階から声がした。
「....約束」
(朝約束したばかりなのにこんな人がいる場所で話かけるなんて.....)
生徒がたくさんいる中で声をかけたので周りの人達は驚く。瀬名は鋭く橘を睨みつけるとそくそくとその場を去って行った。もちろん視線は前髪で隠れているので橘は分からなかった。
「おい、約束って何だよ。」
橘は後ろから肩を掴まれ約束について問われる。
「た、タケル。「答えろよ!いじめられてんのかアイツに?脅されてんならオレが今からあいつを、チッ、もう帰りやがったか。」
瀬名は面倒事を避ける為、すぐさまその場を後にした。
「別にタケルには関係ないでしょ!それにイジメられてなんかない!」
「ならなんであんなキモイ奴なんかに話かけんっ」パンッ!!
橘により大和は平手打ちをくらう。
「人を見た目で判断するような人だったのタケルって!」
最低と言う捨て台詞を残し階段を下りていく。
「おいおい、夫婦喧嘩くらい家でやれよなぁ〜」
「ドラマのワンシーン思い出すわ」
「それウケるな!」
大和の友人達は大和の肩をポンポンと叩くが大和はそれを振りほどき走りさっていった。
「これも青春だねぇ」
「なにお前、賢者モード?」
「それウケるな!」
「「いや、受けねぇーよ」」
二人のツッコミを受け三人で大きく笑う。そして家へと帰宅した大和はすぐさま自室へと向かいべッドへと飛び込んだ。
「オレの馬鹿!何で、何であんな事言っちまったんだ!」
べッドへと顔を埋め横目で携帯を確認する。
「メールは無し、か。部活やってるんだったな....謝罪のメール送っとこ。」
心が痛い程騒いでいた。嫌われる恐怖、そして自分から離れていく孤独感、何よりもあのキモ男への嫉妬。
「あのキモ男がオトヒメに何かしたに違いない!それにオトヒメが朝早く登校し始めたのにも関係があるのかも知れない!」
大和は立ち上がり窓を開ける。そして隣の家に住むであろう橘の部屋へと目を向け宣言する。
「オトヒメ、絶対に助けてやるからな。」
★
学校の帰り瀬名はそのまま帰宅せず美容院へと向かっていた。料理研究部への退部届けが提出されていなかった為、バスケ部への入部が出来なかったのだ。そして、素顔を二人の女性に見られた事により最早、隠す意味が無くなったのだ。外部へと漏れるのは必然、ならばさらけ出してしまおうと言うのが瀬名の考えだった。
「あ〜、母さん怒るだろうなぁ」
許可なく髪を切れば母は怒るだろうがどちらにせよ、バスケ部に入る上では髪がうっとおしくなるだろうと切る予定ではあったのだ。
「いらっしゃいませぇ〜、ご予約の方は「ないです」分かりましたぁ〜、あそこの席で少々お待ち下さい〜。」
髪を染めた若い女性美容師は自分の姿を見て一瞬引いた顔をしたがすぐさま顔を戻し客として扱う。するとその女の店員さんが呼びに来て奥の席へと移動させられた。
(お客さん達みんな窓際で外から見える位置なのにオレだけ奥のちょっと汚い所に案内された....)
あまりの露骨な差別に瀬名は眉を顰める。だが自分の身なりは制服だと言う事を思い出し優先度も下かと自己補完する。
「今日はどうな感じに切る〜?」
やる気のない声で女店員は瀬名に聞く。
「短くお願いします、目元をすっきりしたいんです。」
「分かりましたぁ〜!短くですねぇ〜」
(とっととこの子終わらせて、次のお客さんに移ろう。)
女店員さんは自分の髪をばっさりと切っていく。
(切られてる時って何か落ち着くんだよなぁ)
瀬名は眼を瞑り髪が眼に入らないようにする。
「お客さんって彼女さんとかっているんですかぁ〜?」
(どーせいねぇ〜の何てわかってますけど一応の営業トーク!)
「いませんよ、たはは」
(ビンゴ〜!いたらTHE世界仰天だよ!)
「ちなみにぃ〜好きな子とかはいるぅ〜?」
「今は部活に専念したいと考えています。」
「ふぅー硬派ー!」
瀬名の長髪は素手に短髪となり、残るは前髪を整えるだけになった。
「これで最後ですねぇー。前髪切るので目元気をつけてくださいね〜」
眼を最初から瞑っているので瀬名はそのままの態勢でいた。
(どうせ〜キモオタの顔なんだろうなぁ~。美容院も初めてっぽいし頑張っちゃったのかなぁ〜?)
女店員はハサミを動かしていくと驚愕の表情になる。
(う、嘘..でしょ...)
あまりの美しさに一瞬動きが止まり、瀬名は疑問に思い眼を開ける。
「?」
瀬名は笑顔を向けながら店員さんの顔を見つめると顔から蒸気が発っせられた。
「あ、あっ、眼をと、閉じてくだしゃい!」
女店員は言葉を噛みながらそう言うと瀬名は不思議そうに再び眼を閉じる。
(や、やばい、ガチのイケメンじゃ....いや、イケメンなんて軽い言葉じゃあ表せない....日本内だけじゃなく国外でも確実に受ける程のスーパーモデル級、いやそれ以上.....)
チョキチョキと緊張しながらも髪を整えていく。
(どうしよう、美少年を幸運な事に一人占め出来ている、唇、柔らかそうぅ)
髪を切り終え、今だ眼を瞑る少年の唇へと自分の唇が吸い込まれていく。
「何をしているんですか?」
口元を少年の手で抑えつけられていた。それも優しく。
(やばい、触られただげで濡れちゃ)
瀬名はジト眼でその店員を見ると前に移る鏡に眼を移した。目元もしっかりと見え大分さっぱりとした。
「終わったようですね。それでは勘定をお願いします。」
席を立ち、レジへと向かおうとする瀬名。
「あ、あの、私の名刺です!いつでも連絡くだいしゃい!さ、散髪い、以外でも、ぜ、是非」
そこには電話番号、メールアドレス、そしてペンで書かれたLAMEのID名が書かれえていた。
「う、受け取れません。」
瀬名はドン引きしながら名刺を返す。
「な、なんでぇ?」
涙目に泣きながら手を掴んできたので答える。
「オレ、多分ここもう使わないと思うので「お願い!来て!もし来るのがヤダったら私が切りに行くからぁ!」
「いや、切りに行くって...」
女店員は瀬名を抱きしめポケッ卜へと名刺をねじ込んだ。
「と、年の差って今時関係ない感じじゃないかな~なんて?」ハァハァ
興奮して瀬名のつむじの匂いを嗅ぐが瀬名に突き飛ばされる。
「せ、セクハラですよ!」
瀬名はレジへとダッシュで向かった、すれ違う客や店員からも視線が突き刺さる。
「あの、早く会計お願いできませんか!」
金を突き出す。するとレジに立つ男性は頬を染ながら瀬名の手から金を受け取るがその触り方がねっとりとしていることに瀬名は鳥肌を立てる。
「て、店長!」
先ほどの女店員がレジにまで姿を表した。
「お、お釣りはいいです!」
瀬名は危機を感じすぐさまに美容院を後にする。その姿を追おうとした女店員は店長に腕を掴まれ阻まれる。
「マキちゃん〜何であの方を窓際の席に座らせなかったの!」
店長はオカマ言葉で女店員を怒る。
「そ、それはぁ「一人占めはダメよぉ〜、ダ〜メ!」
この説教の後、店内にいた女性客は瀬名について質問を浴びせるのであった。そして営業が終わる頃、女店員へくしゃくしゃにされた名刺が店長から渡され失意の中、家への帰路へとついたのであった。
「やっぱ千円カッ卜が正義だな。」
時刻は六時となり住宅地を歩いていた。
(繁華街を歩いていた時はスカウト、逆ナン、セクハラをされて、散々な眼にあった。)
「まぁ、何とか走ってまいてきたけど。」
瀬名は考える。これで小学校時代へと戻ったのだと。そう、瀬名は小学生の頃男女からいじめを受けていたのだ。男子からは嫉妬、女子からは私物を盗まれると言う小学生特有のアレで。
(先輩と橘さんは元の鞘に戻ればいい。これで先輩に脅される事も無くなるし。)
そんな事を考えて歩いている住宅地の坂から林檎やオレンジなどの果物が転がってっきたので足で受け止め拾い上げる。
「あのぉーすみませんー!」
若い女性が紙袋を片手にリードを握っていた。拾い上げ顔をその人へと見せると女性はフリーズした。
「よかったですね?洗えばまだまだ食えますよ!」
笑顔でその女性へと果実を渡し去ろうとすると女性は瀬名へと声をかけた。
「ま、まって!!あ、ありがとうございます!」
「どういたしまして!「はぅ//」それでは「あの!お礼がしたいので、家に寄って行きませんか?」
女性は果実を見せつけ家へと誘う。
「いえ、お気持ちだけで感謝します!それに後少しで家につくので!」
「な、なら是非、お母様かお父様にお礼のあ、挨拶を!」
女性は眼をぐるぐる回しながら無茶なことを言い出した。
「だ、大丈夫ですよ。」
ヤバイと感じた瀬名はすぐさま帰路へとつこうとするが女性が自分の横へと並ぶ。小さな犬も一緒にテクテクとついてきた。
「夜は危ないから、お、送るよ!」
(それって女性に対して言う言葉じゃぁ...)
「いや、本当にけっこうですので、」
マンションが見えるとすぐさま駆け出す。ロビーへと入り管理人さんにドアを開けて貰いすぐさまエレベーターに乗った。あの女性が後ろにいない事を確認して胸を撫で下ろす。残された女性はマンションの前に立ち上の階を眺めていた。
「家はわかったよ.......私の王子様」
瀬名は寒気を感じるのであった。
今期のア二メはすげぇー面白い!




