Episode 41 "妹(仮)"
「だ、だ、だれデスかぁ、この女ぁ!」
開口一番にそう口にしたのはケイトだった。
(つ、連れて来てしまった......)
瀬名は何故か分からないが彼女を自分の家まで連れて来てしまった。
「おまえ......だれ?」
ケイトをゴミを見るような目で睨みつけ彼女の眼前へと立つ。
「うっ」
多少怖気づくケイトだが自分へと一瞥すると自信を取り戻し高らかに宣言した。
「私はジョンのプリンセス!婚約者!肉便器デース!」
「おい!」
ケイトにチョップを入れる。痛いッ!と可愛らしく叫ぶと嬉しそうにチョップをされた頭を触り瀬名へと抱きつく。
「.......」ギロリ
眼鏡美少女は今度は自分へと鋭い眼光で見てきた。
(こ、怖い!)
可愛い容姿をしているのだが底知れぬ何かを素人ながらも彼女から感じていた。
「け、ケイトはオレの従姉妹だよ!」
眼鏡美少女はそれを聞くと多少は睨む力を緩め自分達へと近づいてきた。
「セナ..........従姉妹だからベタベタして良いわけじゃあないよ?」
ケイトに離れるよう目で制すとケイトは抱きつく力を緩めてしまう。その隙に眼鏡美少女は瀬名を正面から抱き締め上目遣いで彼を見る。
「逢いたかった.......セナ.......此れからは.....ずっと一緒.....」
訳が分からない。そもそも彼女は何者なんだ?それに何故だか分からないけど抱きつかれる事にも嫌悪感が無い。ケイトは終始その行為に唖然としたが正気を取り戻し眼鏡美少女と瀬名を引き剥がし瀬名を自身の後ろへと立たせる。
「貴方、セクシャルハラスメンツデスよぉ!」
"おまいう"が瀬名の脳裏を駆ける。
「さっきから............邪魔ばかりして............ケシチャウヨ?」
彼女は本気だ。あの目付きは母と同格かそれ以上の殺意が籠っている。ケイトは震える身体を抑えつけ構える。瀬名は二人の真ん中に立ち、仲裁を行おうとすると母と叔母さんである伊都が帰って来た。
「ジョンくんが家に戻って来たって聞いたから急いで帰って来たわよ!」
伊都の声がデカデカと玄関の方から聞こえる。
「ジョンきゅん........ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
呪符の様に淡々とその台詞を吐きながらリビングへと近づいてくる声。母である一だろう。大方、限界実験の後悔から謝罪をしているのだろう。
ガチャリ
リビングへと繋がるドアを開けると瀬名とケイト以外にもう一人いる事を確認する一。
「か、母さん、こ、此れは」
(ヤバイ......家に女の子、そして連れ込んだのは紛れもなく俺自身........監禁される)
だが予想に反し一は殺意よりも驚きと冷や汗を流していた。逆に伊都は何時も通りケイト同様に眼鏡美少女に罵声を浴びせる。だが伊都の発言を無視し一を見ながら口を開いた。
「リディ「ガシ!」
眼鏡美少女が一へと向け口を開こうとした瞬間、一は人ならざる速度で眼鏡美少女の口を塞ぐ。
「離せ.....気持ち悪い」
だが眼鏡美少女は手を叩き一を睨みつける。
「おまえの時間は終わり.......セナは......アルセの"モノ"だよ?」
「貴方っ.......何故、私の場所が........っ!」
何がなんだが分からないが母である一がこれ程までに焦りを感じる表情など見た事が無かった。
「あれだけ派手に表の世界で名を轟かせれば"誰だって貴方の事は認識出来る"」
一は表情を硬くし冷や汗を流す。
「誰だって......って事は貴方以外にも.....っ、そう」
眼鏡美少女の表情を察し一はソファーへと腰を下ろし眉間へと手を当てる。
「な、何がなんだか.......」
瀬名は状況を理解出来ずケイトの髪をイジっていた。ケイトが静かだったのは嬉しそうにそれを受け入れていたからである。
「母親ごっこは........お終い、リディ「ジョンの前でその名前を言わないで!私は一よ、そう、瀬名一!」
母が激昂する様に叫ぶ。
「か、母さん、その人は........」
瀬名は状況を理解するために彼女の正体を聞く事にする。
「アルセはアルセだよ?」
キョトンとした顔をしながら自分へと抱きつく眼鏡美少女。母も何も言わない。何故だ?
「ジョンきゅん.....」
「一........アンタ、大丈夫?」
「えぇ、唯ちょっと........此れからは前よりも騒がしいことが増えるわ。」
ズーンと沈む一の背中をパンパンと元気付ける様に叩く伊都。
「アルセって言われても......「じゃあ妹」じゃあ妹って「妹」いや、そんな簡単に言わ「妹」
「ジョンきゅん.......そのゴキブ、女は.............................妹よ」
え、えぇ......
「む、私とキャラが被りマース!」
ケイトがムスッとした顔でそう言う。瀬名は一体、何処が似ているんでしょうかねぇ?と心の中でツッコミを入れた。
「取り敢えず、名前を聞いておこうか?アルセってのは分かったけど自己紹介は大切だしね。」
ん、と頷き上目遣いで自分の自己紹介を始める眼鏡美少女。
「井門アルセ.......アルセはジョンの保護者....愛玩物....肉便器」
ケイト同様に危ない挨拶をする眼鏡美少女改めアルセ。
「あ、あぁ、よろしくね」ドン引き
顔を引きつらせながら手を差し出すとその手を掴まれ引っ張られると唇を奪われた。毎度のことながらケイトと伊都が怒りの声を上げるが母である一が何のアクションも起こさない事に疑問を感じた。




