Episode 20 "ハーレム崩壊の序章”
「ねぇ、誰あの人?凄くかっこよくない?」
「かっこいいとかそんなレベルじゃあないっしょ!」
「話しかけようかなぁ?」
「あんたじゃあ、釣り合わないでしょ.........はぁ、ホントにあの人....かっこいいなぁ。」
などと女子一同は黄色い声で瀬名の立つ校門前を少し離れた場所から見ていた。
(行きにくい......)
真一も女子達同様、少し離れた位置から瀬名を見ていると瀬名が此方に気づき歩いて来た。
「おい、いるならいるって言えよ!........恥ずかしいだろぉーが。」
照れた顔をしながら真一へと言う表情を見て周りの女子達はその美しさと可愛さに悶える。一定の見ていた男子達も顔を紅くする。しかし彼等も何故自分が赤面したのかを理解出来ていなかった。
「まぁ、ここじゃぁ話しづらいだろうし屋上行こうか。」
真一は瀬名を連れ屋上へと向かった。数多の生徒達も瀬名を追う様に後をつけようとするが何とか彼等をまき屋上へと辿り着く。
「ふぅ、やっと着いたぁ。」
息を整えながら屋上から見える校庭を一望する。
「それで瀬名さん、これからのプラ「まだこんな所で油を売ってるの、真一。早く海斗の所に行って仲直りしてあげた方がいいわよ。」
瀬名へと話しを始めようとした途端、給水タンクの横からハーレムの一員である通称クー子が姿を現し間に入る。
「それと、この人だ........れ」
振り向き瀬名の顔見た瞬間、口を開けた。瀬名は片目を閉じ真一へと顔を向けると真一はクー子を指さしながら口パクでハーレム要員である事を伝える。瀬名はそれを理解し行動へ移る事にする。
「はじめまして、真一の友達の瀬名です。」
クー子の手を握り笑顔を浮かべる。クー子はその行動と笑顔に顔を赤面させ腰が砕けた。そして倒れる寸前、瀬名はクー子の腰に手を当て倒れないように支える。
「大丈夫ですか?」
「はぅぅ//」
それはまるでおとぎ話に出てくる王子様のようだった。真一はその姿を見て思う。イケメンに限るとはこの事を言うのだと。
「あ、あの.....わ、わ、わたしゅは....はぅぅ....氷室、空....氷室空でしゅぅ...」
クール系女子で通っていたはずの女子が今では恋する乙女のような出で立ちに真一は驚きを隠せない。海斗の前ですら態度はクールな女子だった筈なのに此れではハーレム崩壊など簡単に終わるではないかと考える真一。
「綺麗な名前ですね、氷室さ「空でいい!」
海斗にのみ許された名前呼びをわずか一瞬の触れ合いで解除する瀬名の魅了。
(凄すぎる.....性格がよければいいなんて偽善が許されない.....人の本性を無自覚にさらけ出させる....その美しさは最早、呪いの域だ。)
瀬名はクー子改め氷室を立たせ手を離す。だが氷室は何処か名残おしそうに瀬名の手を見つめた。
「真一、行こうか?」
目で行くぞと命令をする瀬名に首を縦にブンブンと振る真一。
「ど、何処に行くの、真一?」
「あ〜....教室に案内、かな?」
「.....私も行って、いいかな?」
氷室が振り向き真一へと言うが氷室の後ろにいる瀬名が視線でダメだと言っている。
「いや、でも迷惑掛けるし「構わない」でも「構わない」だから「構わない」......」
氷室の瞳には絶対に連れていけと言わんばかりの殺意が漏れていた。だが真一は瀬名の計画を反故には出来ないと思い再度、首を横に振る。そして真一は氷室へと大槍を突きつけるような発言をかました。
「お前には海斗がいるだろ?」
その強烈な発言に氷室は冷や汗を流しつつ恨めしく真一を睨みつける。だが、氷室は振り向き、再度瀬名の顔を見ると胸のトキメキを感じ真一へと視線を戻し告げる。
「.....別に、私は海斗の事、何とも思ってないから。」
その発言を聞いた瀬名は口元を緩まる。真一は驚いた表情を表には出していたが内心では失笑していた。
(瀬名さん.....怖い人だ.....だが、もう始まってしまったからには最後まで、突き通すしかない。)
「氷室さんと海斗くんって人は付き合ってるの?」
瀬名が唐突にそう言うと氷室は弁解を始めた。
「瀬名くん、違うよ。私達は‘唯’の友達なだけ。別に特別な気持ちとかないから、うん。」
瀬名は笑うのを堪えながら止めへと入る。
「そう....良かった。氷室さんに彼氏がいなくて.......あ、何でもない、今言った事は忘れて。」
照れる様に言う瀬名。その表情を見て胸がときめく氷室。男である真一でさえその表情と台詞にトキメキ掛ける程に美しく愛おしい表情だった。だがこれは瀬名が魅せるだだの演技だと言う事に氷室は気づかない。
「あ、う、うん、はい//私、一度も彼氏とかいたことない//」
瀬名の心情ではだから何だよなのだがイジメを止める為の演技はしなければならないと心に誓う。そして、これは自分の演技の練習になるではないかと少し嬉しかったりもする瀬名。
(瀬名さん.....本当にハーレムを崩すつもりだな.....ふふ)
言葉では海斗を傷つけるであろうハーレム壊しはしたくないと言うが本人は気づかない。瀬名と言う人物に関係を壊され悲しむ海斗の姿を一番見たいのは自分であることを。
「空さん、嬉しいけど、今回は真一と二人で校内を回る事にするよ.......恥ずかしいし」ボソ
最後の台詞をわざとらしく小さく言うがあくまでも氷室にも聞こえる様に言う瀬名。その発言を聞き氷室は照れた様子でしょうがないなぁと引き下がる事にした。
「氷室が着いて来てたら計画が台無しだった。」
屋上から教室へと向かう最中、瀬名は真一にそう口にした。
「凄くいいかもともの凄くいいかもではまったく違う。一人一人と対面で話す事により特別性が出る。」
真一は黙って瀬名の話しを聞きながら歩く。
「でも、一人一人にこれだけ時間を掛けていたら、イジメが酷くなる....」
「だったらお前の親友がハーレムを形成している中心にオレをつっこめば万事解決だぞ。」
「そんな事をしたら海斗は立ち直れない程に心に傷を負う。」
「だったら多少の犠牲くらいは目をつむれ、真一。ゆっくりとハーレムの輪から離れて行けば、自ずと親友はお前の元へと戻る筈だ。」
「オレがジェラシーを感じてるヤンホモ扱いするの止めて下さい。」
冷静なツッコミをする真一の発言に瀬名は笑い、真一も釣られて笑う。
「良し、次の獲物は誰だ?」
瀬名がハーレム要員の名を聞くと真一は答えた。
「一ノ瀬月子、通称ツン子と呼ばれているハーレムの一人。」




