Episode13 "怖いと恐い"
主人公と言う存在は作中の最後で死ぬと名作になると言われるが確かにその通りだと思う。ただ、その最後に死ぬと言うフラグをオレには建てないで欲しいと切実に思う。
個人的に好きな漫画のシーンと言うのは第一部の主人公が第二部の主人公のピンチを救ったり、圧倒的な力を見せつけ敵を葬るシーンだ。だが逆に二部の主人公のかませや庇って死ぬシーンなどは吐き気がする。
話は戻すが是非ともそのフラグを乱立しないで貰いたい。この逆転世界と言う世界は個人的には日常やギャグマンガと言った類の世界だと思っている。
「メタい発言をするが.....この小説のジャンルがホラーになってるんですが?」
瀬名はそんな事を天を仰ぎながら考えていた。
「そもそも、ホラーと言うのは自分が恐怖を感じない限りはホラーとは言わないと自分は思う。」
この物語の一人称は勿論瀬名を中心に展開されいる。だがお気づきだろうか?仮にこの一人称視点から三人称視点に変わればホラーになる事を。
(ヤメろ、ホラーは好きじゃない。だからと言ってテンプレ展開もクソ喰らえだが。)
瀬名の朝は七時起床から始まる。目を凝らしながら手をべッドへとつけると人の温かさが残っていた。
「.....」
瀬名はベッドへと入る前は必ず部屋の鍵を閉める。疑問に思いつつも勘違いだろうと顔を叩き洗面上へと行く。
「早く歯磨きして朝食を取らないと。」
歯ブラシは母が買ったお揃いのア二メ柄の物。そして、それを数ヶ月利用していた影響でキャラの絵柄が変化をしていた筈なのだが新品物同様にキャラは戻っていた。だがその変化に瀬名は気づかない。
「おはよう、母さん、伊都さん。」
「おはようージョンきゅん!」
母の一は瀬名へと抱きつき頭を撫でる。だが瀬名本人は気づかなかった、一が瀬名のつむじへと顔を近づけ匂いを嗅いでいる事に。その表情は正に麻薬を吸う中毒者の様に歪な笑みを浮かべていた。しかし瀬名はその表情の変化には気づかず食卓が並ぶ自分の椅子へと座る。
「おはよージョン。」
伊都は新聞を広げ記事を読む....振りをしていた。新聞で顔を覆い瀬名からは顔が見えない様になっていた。だが伊都はその隙間から瀬名を何かを思う様に顔を紅くさせ凝視する。その姿は何かに憑かれた人のように荒い息を上る。瀬名は何かを感じ取り寒気を感じた。
「あれ、伊都さん、ケイトは?」
赤面する伊都は目元だけを新聞から覗かせ瀬名の問に答える。
「あ、あら?お、起きていないのね?遅刻になっちゃうからジョン、起こしてくれない?」
その慌てたような受け答えに瀬名は疑心を積もらせる。今日の伊都さんは可笑しいと。
「.....はい、分かりました。」
だが瀬名はすぐにその考えを捨て二階にあるケイトの寝室へと向かった。その後ろ姿、お尻を凝視する伊都は薄く笑みを浮かべるのだった。
「ケイト、起きてる?」
ドアをノックするが返事が返ってこない。瀬名は遅刻をしたら可哀想だと思い部屋のドアを開ける事にした。
「ケイト、起きないと遅刻するよぉ!」
ゆさゆさと肩を揺らすが置きない。だらしがない格好で眠る姫に瀬名はしょうがないなと前髪を上げデコピンをする。痛いと可愛らしく漏らすケイトに思わず笑みが出る瀬名。
「起きないと、もういっぱつ入れるよ、ケイト。」
ケイトは目をこすりながら寝ぼけた様子で瀬名を見る。
「えへへ、ジョンがいるぅ〜。好き、好き、好き〜❤︎」
いつもの口調であるデースなどの語尾を使わず素で話すケイトに苦笑をする瀬名。だが瀬名は気づかない。寝ぼけた振りをして頬ずりをしているケイトの“計画通り”と言う表情に。
「ほら、寝ぼけてないで顔洗うよ。」
ケイトと言う少女はとても聡明で頭が切れる。一つひとつの瀬名との会話に置いていかに自分が優位に立てるのかを模索し実行する。周りから一歩先へと進んだ関係を見せつける為にワザとやっているのだ。だが瀬名はその彼女を唯の天然だと思い込んでいる。そこに焦点を置かれている事にも知らずに。
「はいデース!」
笑顔を浮かべ寝室から出ていこうとする瀬名の腕へと引っつき甘えた声で昨晩見た夢を語る。瀬名はその彼女の無邪気な言葉に騙され楽しく会話をしていた。
ピンポーン
家のチャイムが鳴る。瀬名は玄関へと向かおうとすると一が先にドアを開け何かしら話している状況を目にする。話の内容は瀬名の耳へとは入らなかった。だが鐘を鳴らしたのは昨日のi3と呼ばれる親衛隊の方々だった事に首を傾げる。
「あれ、オレって家の場所教えたっけ?」
帰宅はいつも秋山とケイトと共にしている筈だが。
「ジョンきゅん、変な人と付き合ったらダメよ!.........危うく殺してしまうところだったじゃない。」
後半の台詞を瀬名は聞き取れず一に繰り返し言う様に要求をするのだが気のせいだとはぐらかされる。
「伊都が来たせいでジョンきゅんとの日常が壊されて行く.......ろさないと。」
ブツブツと呟く一に瀬名は寒気を感じるがなるべく気にしない事にした。そしてリビングへと戻り一は車の鍵を取る。
「ジョンきゅん、もし学校に行きたくなかったら別に行かなくても良いのよ。一生、私が面倒を見るのだがら。」
「はは、ありがとう母さん。冗談でも嬉しいよ。」
瀬名は先に車へと向かう。だが母である一はその瀬名の遠ざかる背中を眺めながら顔付きが鋭くなり呟く。
「冗談じゃあないわ、'私'と'ジョン'は'一生'一緒にいるの.......そう、永遠に。」
病的なまでに息子である瀬名に心酔する一は病んだ目でまだ見ぬ理想の未来を想像するのだった。
「さて、マスクと眼鏡はした、ジョン?」
「はぁ、うん。」
溜息を吐きながら装着するとガラージの戸が開き車は車道へと出る。それを追う様にケイトが飛び出し瀬名達が乗る車に乗せるよう窓を叩くが。
「この車、二人用だから。」
ス○夫の様な言い方で一はケイトをシッシッと払うと車を発進させた。
「叔母さんのケチデース!」
ケイトは涙目で両手を広げトボトボと家に戻って行く姿をバックミラーで確認する瀬名。
「可愛そうじゃないの母さん?」
「もぅ、ジョンきゅんは優しんだから!でも、ダメよ。調子に乗らせたらあの親子は更に調子に乗るんだから。」
さいですかと返事を返す瀬名の頭に手を置き撫でる一。さながら普通の家族の様な光景だがその際の一の表情は肉欲に溺れる痴女と同じ表情だった。その手つきはイヤらしくねっとりとしたものだが瀬名はそれを普通の物として受け入れ拒まなかった。




