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第三十五話 お人形のあと悪巧み

あらすじ 帰ってきたら大歓迎……怖い、以上!


 王宮の広い浴槽で自分の体を念入りに洗う、マリとヨミが手伝いたがったがそれだと俺が暴れるしドレスはともかくアクセサリーを俺が選んだ所でセンスは皆無。


 だからドレスに合うものを選んでもらえるように頼んだ俺は、一人でテニスコートほどあるドでかい浴槽に入り足を伸ばしたり、泳いだりしている。


 風呂がこれだけデカイんだ、俺が部屋として使っている賓客室も当然デカイ。


 部屋として小分けされているが王宮の中でも賓客室のための庭園があって、その真ん中に経っているのだ。


 すごいぞ?一つの公共施設のように大きくて、その中には賓客を向かえるための専用のコックやメイドや庭師が常に常備されている力の入れよう。


 だいたい賓客室を使うのは各国の皇帝やそれに匹敵する人々らしいから、金をかけるんだろうね。


 俺はマリとヨミに言われたとおり隅々まで体を洗い、それを三回繰り返す。面倒だけど長くなった髪も丁寧に洗う。


 そろそろのぼせそうだから、水が流れる場所に行ってお湯を入れた桶に水を入れて、大きな大理石のイスに座り頭から被る。


 ちょっと体温の上がった体には気持ちがよかった。


 光喜が何気に前を見ると天井まで彫られた彫刻の飾り壁と、大きな鏡があった。


 目の前には濡れたからだの女性、でも俺。


 しかし映るのは女体であるわけでして、ちょっと直視しにくい、だって色っぽいもん。体はお湯で少しピンクに染まって豊満な胸に引き締まった腰と細くて長い足。


 エロイ、自分の体がエロイ。前よりも成長して大人の香りが強くなったのも要因の一つ。


 マリとヨミはフレッシュな魅力がありニーダさんは妖艶な魅力がある、彼女たちもかなりランクが高いが女になった俺も負けていない。


 俺は黙っていたら、確かに純白な髪と陶器のような白い肌にお湯で赤みがさした顔をもって、女神って言われても納得できる気品さもあった。


 そんな全裸の美少女が誰の咎もなく触れられる状況の俺。


 鏡の自分にゴクリと息を呑む。


 俺は一瞬何を考えた!!!??俺は横に置いていた桶をとって純粋な水を汲むと頭から被る。


 「うわあああああ!!!」 


 洒落にならない!!思春期の暴走に身を任せるところだった!!悪霊退散&煩悩退散!!


 何度も水を被ると俺の疚しい感情も流れていって、そのまま一度だけお湯につかると直ぐにお風呂から上がった。


 情けない気持ちで満載の俺は浴室からでると、柔らかいタオルのたくさん置かれた籠から一番上のタオルを取ると髪から水気を取る。


 そして置いてあったパンツとブラジャーと薄い上着、ブラジャーはもう1人でつけれるようになりました。これは…そうアレだ大胸筋肉矯正サポーターだ!


 こうでも思わないとやって行けない、手馴れてしまった動作でフックを取り付けると手でブラ…じゃなくて大胸筋肉矯正サポーターに乳房が入りきるように手で微調整して上に薄い服をきる。

 

 着てもどうせドレスきるから直ぐに脱ぐけど。


 光喜が扉を開くと待ち構えていたメイド十数名とマリとヨミが膝を付いて待っていた。


 この瞬間嫌い、俺一般人だから。どうしても違和感を拭えないんだ。


 メイドと双子姉妹たちの真ん中には、とうを編んで出来たちょっと南国風の椅子が置いてあって、俺は無言でそこに座る。


 レッツお人形ターイム☆


 母さんが行く美容院か、ここは?俺は理髪店にいく。男の頃には短髪だったから20分もあれば完成だったぞ。


 背もたれが低いタイプなので、後ろのメイドが丁寧に湿った髪を乾かし、肘掛に置いた手はクリームを塗りこみ爪の形を整える。抜かりなく足置きのクッションの上に置かれた俺の足の爪も。


 お風呂上りなんで、マリがジュースをくれる。喉が潤うが特別自分の容姿を誇っていない俺にはお人形タイムは中々窮屈な時間でしかない。


 ただみんなの前で挨拶するだけなのに。


 でも奇跡のような女神の顔は無駄な毛なんかなくて助かった、眉毛抜くとか痛いじゃん?慣れない痛みは苦手。それに厚化粧もしないからその分時間は短縮できる。


 ちょっと乱れた髪を切りそろえて、爪には色をつけた筆でノア・レザンのネイル(詳しく知らない)っていうのを書いていく。


 姉貴がちょっとネイルに興味もっていたな、口では邪魔になるとかいっていたけど本当はやってみたいと俺は知っている。


 姉貴がやらなくて、別に望んでいない俺が全身エステを受けているのが、何だか可笑しく感じた。


 下準備が終わると早速ドレスの登場。実はモラセスが俺を気遣ってくれたのか、一着だけ上着とズボンの組み合わせな珍しいドレスのタイプが紛れていた。


 迷わず其れを選ぶ俺、真っ白いドレスのズボンを自分で穿くと、刺繍と宝石が縫いこまれた上着のみたいなドレスを上に着る。


 前がヘソの辺りで開き、フリルが綺麗に後ろへ流れる。中性っぽいドレスだった、これは動きやすいし。


 そして白い靴を履き、俺は目をつぶってまた椅子に座った。


 今度はお化粧と飾りをつける、目をつぶって視界が途切れて俺の肌に筆やアクセサリーがつけられる感触がやけに敏感に分かってしまう。


 うわ~いやだな。お化粧って…、顔の白粉(古い?)は薄い膜が貼られているみたいで気持ち悪い、唇はヌルヌル、瞼になんか塗られている。


 女の人は毎日これをするのかと思うと、男性には理解できない苦労を背負っているんだ。感心するわ、俺。


 「光喜さま終わりました」


 マリの優しい声に俺は瞼を開く、目の前には大きめな鏡。


 母さんも姉貴もそんなに化粧をしないし、必要以上に飾らない性格なので多少化粧をしてもそんなに変わらないじゃん、とか思っていた。


 「いかがでしょうか?」

 「すっげぇ…俺、凄いマジで綺麗じゃん」


 元々作りはよかったが、化粧なしで飾りなしだったら素朴な美しさがあった、けどこうやって手間をかけると上品な美しさが引き立った。


 首はサファイアの優しい澄んだ空の青と、少し緑色がはいった美しい海のようなパライバトルマリンのネックレス。


 白い髪飾りは象牙と真珠で作った髪飾り。


 最後に両腕とも二の腕まで純白の手袋を装着して完了。


 ……長かった、俺座っているだけなのに疲れちゃった。本番はこれからってのに。


 鏡に映る、俺の姿ではない俺を見つめると、小さくため息をつく。ここで一般的な女子の反応はトキメキくんだろうな。


 とにかく完了した、後は茶番劇をまたカエル殿下の前でやったるでぃ!俺がここまで我慢した分、壮大にやってもらおう。


 「「素晴らしく麗しいです、光喜さま」」

 「マリとヨミもね」


 ちゃんとマリとヨミもエグゥテ式の着物に似たアジアテースト的な服。上から下までキッチリ着込んでいる。


 赤のマリと青のヨミの着物に似ている服が、とても美しかった。


 主をたてる為に装飾品は控えめだ。


 光喜が新品の白い靴の感触を確かめると、俺の着替えに使っていた部屋の扉が開けられた。


 扉には珍しいカラクの姿、いつもは厚めの服を着ているのに、こいつも公式な場所なだけに甲冑というほどでもないが殆ど体を隠すような実用的でない、礼儀用の鎧を着ていた。


 カラクの体格がよいので濃い色をした鎧は似合って、カラクをますます色男に見せてしょうがない。


 何処かの絵本から出てきたお花と平和が似合う王子様ではないが、戦場を猛々しい様で戦う王者の風格と高貴さを兼ね備えている、そんな風に見えた。


 こうやって、ちゃんと飾ればコイツはとっても映える。普段は口うるさくて乳のことしか真剣に考えていないような男なのに。


 チッ、男だった俺よりも断然着こなすコイツが憎い。


 俺より身長が高くて逞しくてモテる男、皆爆発すればいい。誰だ?殆どの人間が死ぬって思ったやつは。


 「よう、似合っているじゃないか?カラク」


 俺はひがみ半分、からかい半分にカラクに近づく。


 「くだらん…無駄な時間だが、仕方がない」


 ここで光喜が人の前にでないと光喜を支援してくれるモラセスの立場が、ほんの少し悪くなるだけじゃなくて、余り焦らすとノア・レザン全土で絶大な信仰心を誇っている民衆の鬱憤が溜まって何か起こす可能性もあり。


 そこはもう諦めだ、そして光喜にはやるべきことがある。エーリオの部下や砂漠となった周辺にいた人たちの無念を少しでも晴らさないとな?


 カラクが来た扉に光喜が歩いていく、光喜が身を整える前にカラクと双子姉妹は十分自分の身を整えているので先頭を光喜が歩けば、直ぐ後ろにカラクと双子姉妹が続いて歩く。


 光喜は謁見の間に向かう途中、どうやって皆を引っ掻き回してやろうとにやける顔を押さえきれない。


 なんせ皇帝であるモラセス公認なのだから、好き勝手やってやろうじゃないか。


***


 時間は少し戻って、光喜はメイドに手紙を渡された直ぐ後。


 宴が始まる少しの時間だけ1人にして欲しいと、部屋から人を払ってモラセスの精霊が来るのを待っていた。


 もう一度メイドから渡された手紙を開く、そこには「俺の相棒が行くので付いて来い by貴方の隣人モラセス」


 これだけしか内容は書いていなかったが、何を求めているか大体検討はつく。


 そうして待っていると、暖炉の隣の柱が内側から引っかくような音が聞こえた。一瞬ビックッと震える、ホラーの定番脅かしかよ?俺ホラー大苦手なのを知っていての狼藉か!!


 すると柱がギイィィィィィっと軋みながら、扉のように開く。


 ごくりと息を殺して光喜が扉と化した柱を見ていると、隙間からアナグマの鼻先がニョキっと出てきた。


 「なんだ、お前か」


 俺が立ち上がって近づく、顔だけ出したアナグマが顔を出して俺を見つめた。


 モラセスと契約をしている土の精霊ルヴュールだ。外見は大きなアナグマをしている。


 ちょっと光喜と目が合うと嬉しそうに目を細め、後ろに振り返って歩いてくが直ぐに振り返った。


 「ついて来い……てか?」


 ルヴュールが肯定するように、また歩き出した。ルヴュールの通ってきた道は薄汚れているのを覗けば人一人くらいは通れる通路になっている。


 お城のたくさんある隠し扉と、隠し通路の一つなのね。


 俺はルヴュールの後を付けるために柱から出来た空間に体を入れて、後を追う。


 隠し通路は暗く、薄汚れて白骨死体が転がっていてもおかしくない雰囲気の中、ルヴュールを頼りにひたすら歩く。


 所々に廊下が覗き見できる小さな穴が空いてあるから真っ暗じゃないから何とか進められる、そうして階段があったり坂道だったりをルヴュールの尻尾を目印にして後を追いかけると、暫くして明るい場所に出た。


 広い場所は何処かの庭のようだ。整えられた庭園の端で隠れるようにある小さな洞窟から出た光喜は、頭を振って汚れを落す。


 「よう、ごくろうさん」

 

 腕を組んで石の椅子に座っているモラセスが光喜を見つけ、声をかける。さらにモラセスの隣にはニーダがいた。


 「もっとマシな道はなかったのか?つか俺の部屋覗き見してるんじゃないだろうな?」

 「するか、アレは昔の皇帝の間者が情報を得るための通路だ、今は使うほどの賓客はいない」


 悪かったな俺が、隠し通路を使うほどの賓客じゃなくて。


 光喜はモラセスとニーダの近くによる、珍しそうに上から下までじっくり見るので、自分の姿が変わったのを光喜は思い出した。


 「すごいだろ?」

 

 ちょっと体をくるっとモラセスの前で周り、360度見せてみた。


 「正直な感想は前よりずっと女らしくなったな、俺好みに近づいているぞ」

 「うれしくねーよ」


 光喜は憎くたれ口をモラセスに返して、笑う。冗談とわかっているから安心してじゃれ合えるのだけど。


 実は光喜は今の姿は結構気にっている、身長が前より高くなったので。一センチでも高くなるのは光喜ほど身長に恵まれない者にとってはすごく嬉しい。


 「ほんに、美しくなられましたこのニーダ…まさに奇跡を目の当たりにしておりまする。幼い女神様はまるで春の日を待つ蕾のような愛おしさがありましたが、今の女神様は綻び始めた花の初々しさ」


 恍惚の笑みで賞賛しないで、冗談じゃないと分かっているから返すのに苦しい。


 大人と子供の間の微妙な年頃って言いたいらしいのね。


 「それより、時間があまりないだろう?」


 女神に似合わない笑みを光喜は2人に見せる。モラセスもニーダも笑みを深くした。


 これから女神を正式に披露する、ガレット国の主要人を集めた宴が開催される時間はもうそんなにない。


 「俺をワザワザ呼び寄せたんだ。何かの芝居を一発、やるんだろ?」

 「……ああ、邪魔な兄上様と邪魔な貴族たちを、お前を使って失脚してもらう」


 モラセスも悪い笑みを溢す、光喜にとってはその他の貴族など、どうでもいいがパネトーネが失脚してもらうのは大歓迎だ。


 アイツがこのまま政治に関わらせると不幸になる人間が増えるだけ、それはモラセスも同意見だった。


 「それと女神様をガレット国の代表としてお守りする任命騎士なのですが」


 ニーダは数枚の書類を光喜に渡す、そこには名前と年齢など詳しい個人情報が書かれている。それ以外にも功績に素性まで、プライバシーって何?美味しい?


 なぞ聞きたくなるほど、友人の関係から妻や子供まで調べ上げられた書類を渡されても光喜には意味がわからない。


 「ここから女神様が相応しいと思う者を、女神様の護衛する騎士をお選びください」

 「つまりカラクみたいなヤツ?」


 光喜の質問にモラセス、楽しそうに笑う。


 「アイツみたいなのが多くいたら帝国は潰れるぞ?…そこに載っているのは難しく考えなくていい。専属のガイドでも思え」


 各国によって信仰と政治に関しては、統一されているが細かい文化の違いを説明して、女神の身を守る人間を自分の国から1人選びたい。


 これがモラセス側の思惑、正式に賢者から1人だけ女神の気分を害なさない者を絶対条件として認められている。


 建前と女神の媚び売りが大半を占めているが、戸籍のないエグゥテの民だけだと何かと不便な時もある。


 「だったら俺、アイツを専属の騎士にしたい」

 「誰だ?」

 

 資料も見ずに光喜が望む相手は?万が一にも城下街であった闇の使徒の青年を……。なんて言ってくれるなよと祈りながら。


 「エーリオ、カエル皇子の配下らしいけど、引き抜けるだろ?」

 

 モラセスとニーダは一瞬だけ、誰だ?という顔をしたが光喜が帰ってから何故か一緒にいた騎士に、何が起こったのか詳しい状況をその騎士にさせたのを思い出す。あの男は確かエーリオだったと思い至った。


 エーリオの印象は民のために財力を投げうる報告も含め、好印象にモラセスにも映っている。あの男なら大丈夫だろう、大丈夫ではないのならカラクが最初から近づけてない。


 「仰せのままに女神殿」


 演技くさい動作でお辞儀をするモラセス、「だが」と付け加えて顔を上げ。


 「お前も俺に協力しろよ?」


 ホストのような大人の笑み、目の奥にやはり獰猛な動物がいそうな目で見られた光喜は。


 「まかせとけ」


 男に戻ったらこういう女にモテる男になりたいと思いながら。

ストーリーが進みません、次はカエル皇子をコケ落します。

そして次の展開の前ふりですね。

次はラブロマンス(光喜はそんなの望んでない)をしたいです。

出来るだけ早くアップしたいのですが体力が持たないので、ゆっくりお待ちください。

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