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第三十三話 さあ、帰りましょう

あらすじ 分けわかんないけどさ、とにかく無事だった以上!



 五つの帝国の一つを支配している、199代目モラセス・デギゼ・ガレット皇帝陛下は、黄金に輝く玉座で呆れたような顔で笑って報告書を読む。


 純金で出来た玉座を巡って自分たちの祖先は、何度親兄弟で血を流したのだろう。そう考えるとモラセスは馬鹿らしくて玉座を溶かしたくなる。


 其れはともかく玉座がある謁見の間で、皇帝であるモラセスは足を組んで自分の直属の騎士部隊である隊長を前に報告書を放り投げた。


 蝶みたいにユラユラ揺れて、王族御用達の高級なお紙さまは床に着地した。それすら優雅である。


 「とんだ女神殿だ、これまでの努力が全て水の泡…いや、流石は女神というべきか?」

 

 頭を乱暴に掻くと大きなため息をつくモラセスを、楽しそうな顔で腕を組み玉座の直ぐ側で隊長は笑う。本気で困っているモラセスは久しぶりだった。


 「その割には嬉しそうじゃね~ですか?若よ」


 隊長はモラセスより大分歳をとって中年のオッサンという印象が強い。でも皇帝陛下の御前でキッチリ鎧を着用しているが敬語らしい敬語は聞いたことはない、ついでに無精ヒゲも剃ってきたほうがいいかもね。


 だが部隊の隊長をしているので当然逞しい。美少年好きではなく、ちょっと世の中を斜めに見ているナイスミドルが好きな渋い趣味の方なら受けがいいだろう。


 因みにモラセスの剣術の基本はこの男から教わった、王と騎士であるが師匠と弟子の関係でもある。だからとても気安い。


 モラセスが皇帝になるときに後継者争いの最大の貢献者だ。とにかくモラセスはニーダと同様に直属騎士部隊・隊長カートン・ミエル・ココス46歳(独身)はモラセスが裸で寝ていても熟睡できる数少ない人間の1人。

 

 モラセスが皇帝になったことで伯爵から公爵まで爵位が上がった男だ。


 本人は「公爵?そんなんお飾りに決まっているだろうーがぁ、あってもな?何の腹の足しにならねーもんだ」と公式な場所で言いのける御仁で、やっかみも多いが部下たちにはとても慕われている人柄で、古くからの貴族のように差別意識がなく人望も厚い。


 その男とニーダの2人だけで、後は人払いさせた静かな謁見の間に、モラセスは玉座に背を乗せて力を抜いた。


 「今回のヴァニーユ付近の一件、私たちの耳には入ってこなかったのも問題ですが…」

 

 ニーダは放り投げられた報告書を睨み呟く。


 「ああ、それは然るべき対処をとるが。はぁ~俺をここまで悩ませるのは賞賛に値するぞ」


 そうだ。多少あの一辺がおかしいという情報があったのが情報の限りでは、小規模と思い込んで、まだ戦闘に慣れていない女神である光喜を向かわせた…それがいけなかった。


 蓋を開いてみれば大規模な砂漠化、民の死亡率、城下街に大勢のヴァニーユの街付近の住民が避難しているというではいか。しかも穢れし者となった巨大な森があるとか。


 完全に自分のミスだ。こりゃカラクに後ろから刺されかねない。アイツは女神……光喜の保護者だからな。


 その事実はモラセスにとって寝耳に水どころか、桶で水を奇襲でぶっかけられた気分だ。さっぱり自分の耳には入ってこなかった、唯一大きな街であるヴァニーユが死にかけていたのならば、もっと小さな町や村は全滅と思っていい。


 その統括者は死んでくれたら祝い酒をしてやろうと思うほど、愛しているお兄様だ。


 我が兄ながら最高に使えない男である、どうやって降格させてやろうかと考えるよりも先に難題があった。


 もしかしたら国際問題または国家の威信に関わる重大な問題だ。


 ずばり、ノア・レザンに女神が光臨したのが民衆にばれた、突然に砂漠が元の緑豊かな自然が蘇ったのだ、女神の奇跡以外考えられない。


 何百何千という民衆が光喜を求めて流れ込んでくる。


 モラセスは頭を抱えた、ことごとく闇の使徒の粛清も失敗に終わり、光喜の身を守る騎士の選別も終わっていない。カラクと双子巫女がいるじゃないかと思いだろうが、それではガレットの威信に関わる。


 そこそこ爵位が高く、何より信頼に値する人物でないと無理。本当は目の前の隊長を女神の周辺を警護する専属騎士にしたいところだが、大規模に進めようとしている闇の使徒を粛清するには、この皇帝直属にして騎士部隊隊長のカートン以外任せられない。


 そして何より女神を妄信せず常識ある行動をとれなくては…ノア・レザンで女神は全知全能の神である、光喜にそれを勝手に望み勝手に失望するような騎士ではいけない。ましてや強要するなんてもってのほか。


 これは光喜を守るだけの話ではなくなってくる、政治的な問題にも発展しかねない。もし光喜が騎士に嫌気をさして他の帝国へ行くなんてノーセンス。


 国と国の威信を賭けた争いに女神が自国に居るのは絶対に有利だ。モラセスは見栄を張りあうのは下らないと感じるのだけど、皇帝のとしての立場から考えると、やるしかない。


 玉座に座った瞬間からモラセスの人生は他人のためにある。それが国家最高の地位に居るものの代償。


 それで光喜が万が一にも、ガレットを嫌って二度と来ないとか言い出し噂になって広がったら最高に悪夢だ。


 光喜が嫌う国は、イコール神に忌み嫌われる国。全世界から笑いもの。


 光喜自身そんな事は言い出さないと性格的に分かっているが、周囲がやれそれ光喜に吹き込む可能性は大だった。


 結構単純な性格しているからな、あいつ。


 そうしてモラセスは楽しくもない書類をニーダの手から取ると、書類をめくって読む。これは貴族の騎士たちのリストだ。


 「どっかにいい人材は落ちてネェかな?」

 「落ちているのを女神さまに相応しいと思いで?」


 光喜ラブのニーダは冷たい声でモラセスの呟きに反応した。それを笑うカートンの笑い声が広い謁見の間に反響して響いた。


 モラセスはニーダの視線から逃げるように窓を見ると、城下街は綺麗な夕日で染まっていた。多分明日の昼過ぎには光喜は城に帰ってくる、だから今のうちに対処しとかないと時間はいくらあっても足りない。


 「よし!」


 意気込みだけは立派なモラセスは、自分の膝を叩き。気合を入れて書類を読み始めた。


*** 


 モラセスが光喜の知らない場所で、自分に関する事を進めているとは知らずに、光喜は気持ちのいい風に吹かれ薄く目を開ける。


 結局あの宿に一泊して、今日でホスト皇帝モラセスの王宮に帰るようになった。


 エーリオも一緒に王宮までついてくると聞いて純粋に嬉しい、もしかしてここでお別れかと思っていたから。

 

 彼にはたくさん迷惑もかけたし、あのカエル殿下の情けない顔を身近で見せてやりたかった。それだけの権力は女神ってだけで俺にはある、絶対に許さん!


 ちゃんとエーリオの話を聞いてここらの人たちを助ける為に、彼らから税金を貰っているのだろうが!取るだけとって何もしないなんぞ言語道断!


 モラセスとダックを組んで赤っ恥をかかせてやる、具体的な策略は練ってないけど。きっとモラセスは喜んでえげつないのを考えてくれると思う。


 俺はそう心で決めると、ベットから起き上がろうとするが阻止された。


 重い……原因は分かっている、双子姉妹だ。俺を挟むように下着だけしか着なくて、俺を抱きしめるように寝ているから。


 俺の首の後ろにはマリの腕が通り、俺の足にはヨミの太ももが挟まれ、そして俺の両手は2人の乳の間に仕舞いこまれている。


 なんたる包囲、百合の完全なる世界の創造を俺は垣間見た。いや散々俺は女の人に(双子姉妹やニーダ)ストップをかけ続けたが、仮に…あくまでも仮だけど俺が男のままで、女の俺の姿をした子が別の人間として存在しているのならば、この光景は生唾ものではないのか?と問われれば。


 イエス!俺も百合モノ興味あります!


 と、答えるであります!!


 力いっぱいカミングアウトしたけど、それはエッチい本やDVDの世界だけの話。実際自分だと…どうなの?


 でも勘違いしないで欲しい、同性の男に迫られる気は全く有りません。男とかいや!


 カラクやモラセスに迫られたら100階建てのビルでも飛び降りる。いや楓さんならコンマ0,4秒ほど考えるな~あの人尋常じゃないほど綺麗だった、また会いたい。


 なんだろうな?この複雑な心境を、的確に表現できる言葉がない。俺頭悪いし。


 今は保留でいいや、体を貴族や王様みたいに洗われるのは抵抗あるけど、害はないから。

 

 「よいしょ」なんて中年層くらいのお歳がよく言う掛け声をかけて、俺は2人を出来るだけ静かに体を退けた。


 2人は結構低血圧なのか、寝れるならずっと寝ている。きっとお昼近くまで寝れるだろうな。俺は決まった時間に起きちゃうタイプでグッスリ眠れてもなくても起きちゃう損な方。


 休めるときは、休んどけって双子姉妹の体はなっているかもね、でもカラクは俺よりも早く起きる。多分音に敏感だから気配とかで起きちゃうかも。


 そう考えるとアイツの意識がないのは蔓に突かれて、意識がない時だけだったな。二度と見たくない。


 俺はベットから降りると、自動的に俺の腹はみなぎる。飯を食わせろって。


 中々勇ましい俺の腹の音に、下の食堂へ足を向けた。


 1階の食堂にはカラクとエーリオが、先にパンとちょっと飽きたかな?贅沢なのは分かっているけど、前に作ったスープを食べていた。


 ついでにサイドとして果物を水で戻したやつ。ドライフルーツのイチジクが豆腐みたいに白いプニュプニュしたのに入っている。美味そう。


 「お早う、光喜」


 エーリオがお茶片手に挨拶をするので、俺も返事を返す。


 「おはようさん、これデザート?いいの?」


 ドライフルーツ系は俺の腕輪には入れてない、だって新鮮なまま腕輪の中で保存できるからだ。だからこれはモールドさんのご好意。


 緑豊かになっても、農家みたいに作らなければ食べ物は収穫できない。


 砂漠が消えて、そっくり以前の豊かな大地は帰ってきたが、整備された森ではない開拓する以前の森に戻った。ので再び一から作り上げなければいけない。


 隣町との道の通行する為には道を作らなければ、陸の孤島となって孤立する。


 自然に木の実とか都合よく実ってたら、モラセスの居る城から救援がくるまでもつが、そうでないと少しでも食料は保存していたほうがいいのに。


 悪いとは思いつつ、俺は甘党ゆえにスプーンで掬って口に入れた。


 美味い!甘い!酸味も程よい!止まらないぜ俺のスプーン!!


 「日本のマナーに一品づつ食うのは下品ではなかったのか?」


 カラクは日本で習ったマナーを口にするが、カラク自身には下品な食べ方という意識はない。だって一度の食事にでてくる品数が少ないからだ。


 とにかく、俺はきっといろんな意味が篭ったデザートを有難くいただいた。余は満足状態で食事を終える頃には子姉妹も起きて食堂に降りてきた、全員が食事を終えると直ぐに帰る準備にかかる。


 準備なんて時間かからない。全部ファーロウに貰った腕輪に荷物詰め込んじゃえば、はいお終い。


 すごい、超便利。


 無事原罪の霧を浄化して皆がひと段落してリラックスしている中、カラクは側においてある武器…刀がないから居心地の悪そうな顔をしていたのを俺は知ってた。何処かで新しく新調してこないとカラクが落ち着かないだろう。


 モールスさんは最後まで、俺をただの旅人として見送った、俺もそっちのほうが嬉しくて手を振って別れた。きっと彼は最後まであの街に残って暮らすだろう。


 でも…勝手だけどさ、もう一度宿が開いてくれるといいな。


 俺達は森の遺跡に繋がる洞窟に向かって歩く。


 俺たちの足は魔獣だ、その二体は森の遺跡まで続く溶岩洞窟の入り口近くに放置プレイをしていた、俺が気絶している時は街までカラクたちは徒歩で戻ったらしい。


 魔獣に乗って帰っては、逆に溶岩洞窟までの距離は街よりも遠い。


 残された魔獣のほうも、一晩くらいほって置いても大丈夫。ちゃんと躾けられた魔獣は、飲まず食わずで一週間はじっと待ち続けているとか、健気だね。


 王宮へ帰るためにカラクを先頭に、魔獣であるヒポグリフと大蛇を迎えにいくと二体の魔獣が居なかった。ぽか~んとした緑が多い草原に俺たちは立ち尽くす。


 いやいや…歩いて帰るなんて嫌よ?どれだけ王宮とヴァニーユの街の間に距離があると思っているの?しかも豊かな森が蘇ったのはいいけどまだ道……作ってないのよ?


 元に戻ったのは緑で人間が作り上げた道やら川の橋なんかは…なかった事にしとこうか?状態。都合よく其処までは蘇ってない。


 頭上から獣の唸り声がするので視線を全員が、上に向く。


 ヒポグリフと巨大な大鳥が、凄い空中戦を繰り広げていた。その周りをオロオロと飛ぶ双子姉妹の大蛇が俺たちを見つけ、「助かった!!」って言わんばかりの顔でマリとヨミの近くへ降りる。


 まだ俺たちに気付いてない二体は、まだ戦っている真っ最中だ、太陽の逆光でヒポグリフと戦っている鳥らしき生き物は、体の詳細がよく見えなかった。まあ嘴と翼が大体分かるので鳥だろう。


 大蛇を他所にヒポグリフと大鳥はお互いが空中で近づき、一瞬でお互いの鉤爪を使い、また距離をあける。一撃離脱戦法の戦いをしていた。


 穏便でない剣道の試合か?これは。


 攻撃を何度も繰り返しているが、強さはほぼ同等であり些細な引っかき傷程度で、お互いの隙を狙い大きなダメージを与える機会を窺っている。ドックファイトのケツを取ろうとする光景は、空でまだ続く。


 「コカトリス!!」


 エーリオが大声で叫ぶと、ヒポグリフとタイマン張っている見慣れない鳥が一瞬だけ気を逸らした。


 よし!よくやった、殺してやる!っつぅ顔をしているヒポグリフは前足にある鷹の爪を思いっきり開き、大鳥に向かって突進してきた。


 大鳥がヒポグリフに気付いたときは遅く、避けようにも間に合わない。決定的なダメージを受けるだろう。


 「止めろ、ヒポグリフ」


 カラクも、地上から空に向かって自分の魔獣を止めた。


 絶対服従を叩き込まれているヒポグリフは、人間なら舌打ちしそうな顔で前足を下ろし、翼を広げて空気と風を身に受けさせ、スピードを落としてから、ギリギリで大鳥から身を翻し迂回して地上のカラクへ軌道を変える。


 ヒポグリフが先に地上に降り立ちカラクの前に立つと、隣に人よりも大きい雄鶏がヒポグリフと同じく、エーリオの前に降り立った。 


 巨大な鳥だと思っていた大鳥は、巨大なニワトリだった。


 どこからどう見ても見事なニワトリ。


 最初に戦った穢れし者は原罪の霧に憑かれたニワトリだったが、あれは原型が分からなくなるほどの変化だがこのニワトリはそのまま雄のニワトリの顔をしている。


 顔は大きく俺と目が合っても地球の伝説みたいに、目を見ただけで石にはならないようだ。双子姉妹に聞いたけど魔獣は魔法を使わない、そりゃ精霊と契約しないんだから当然だけど。


 地球の伝説上の生物であるコカトリスなら視線だけで、相手を石にする化け物だ。雄か雌かしらないけど、つがいに「ジバリクス」とか言う蛇の怪物がいるってネットのサイトで紹介されたのを思い出す。


 ニワトリの鋭い目に雄鶏の象徴である鶏冠とさかは角…いや王冠みたいに二枚に並び、尖がっている。


 ただ上半身はニワトリだけど、足は鳥の足じゃなくてドラゴンみたいに鱗のついている鋭い爪がついて、ヒポグリフみたいに四本足でなく人間にしたら腕のところには、俺の知っているニワトリより立派な翼がついていた。


 翼はドラゴンみたいな骨格にニワトリの白い羽根が覆ってあって、ドラゴンとニワトリの融合みたい。そして尾羽の代わりに長いトカゲの尻尾が、ヒポグリフを睨みブンっと振られた。


 ヒポグリフも鷹の喉を鳴らして威嚇する、それを撫でてなだめるカラクとエーリオ。余り相性はよくないご様子だ。


 俺は移動中にまたヒポグリフとコカトリスと呼ばれた魔獣が喧嘩しないだろうな?なんて考えてため息をつく。


中途半端なところで終わってゴメンナサイ!!

でも続きは数日には上げますので、GWの間はドンドン更新したいです。

ついでに魔獣は伝説の動物が多いですが、こだわりがあって、ただ一匹だけしかいない神々が乗る動物でなく、結構たくさんいる格下の魔獣を使ってます。

フェンリルとかケルベロスとか一体しかいないのでカッコイイのですが除外です。

惜しいですが。

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