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その三十八

 我がグランデ王国側は、腹立たしいことにウォルタナの領主が人身売買組織のバックについている。

 だから、我が国の税関の買収は有り得ると思っていた。


「お義兄様、どうしましょう。ヘルメア公国側の税関まで買収されているのは想定外でした」

「マズいことになったな」


 領地内の犯罪行為は、領主が管轄する裁判所で裁判する。

 人さらいの移送を現行犯で捕らえたと主張しても、取り調べや裁判で税関役人たちに嘘の証言をされる恐れがある。

 自国の役人が敵でも、隣国の役人に証言してもらえると安心していた。

 だけど、まさか両国とも買収されているとは。


 収賄自体が処罰の対象なので、両国の役人たちは結託して嘘の証言で悪事を隠そうとするだろう。


「あの、シャルロッテ様。それってどういう意味です? 私たちは助かったのですよね?」


 ディアナ様が首をかしげた。

 この反応が本来の令嬢の反応だと思う。

 わたくしのように外交や政治の駆け引きが好きな女子は普通じゃない。


「街で情報収集をしたとき、隣国の国民を衛兵に突き出しても、解放されることがあると言っていました。さらわれた本人が人さらいの被害者だと主張しても、黙殺されるかもしれません」

「そんな!」


 コテンパンにやられた賊のリーダーが、地面で体を丸めたまま声をあげる。


「お前らのやったことは輸出品の強盗だ。領主様に訴えてやる」


 すると、命の脅威がなくなり強気になったヘンリー様が、賊のリーダーを小突く。


「うるさい。だまれ、悪党め!」


 ヘンリー様は理解されていないようだ。

 このままでは、お義兄様と一緒にご自身も強盗として手配されかねないということを。

 裁く側まで悪党では打つ手がない。


 助かってもなお続くピンチに、天を仰いだときだった。

 急にヘルメア公国の言葉で呼びかけられた。


 声のする方を見ると、お馬から降りた隣国の騎士たちが歩いてこちらにやってくる。

 先頭は周りの騎士より頭ふたつ大きく、茶色のあごひげを生やした熊の様な大男。

 かつての外交でやり合ったライバルで、ヘルメア公国のブランターク領を治めるノーツ・ブランターク侯爵だ。

 後ろには付き人兼執事の初老の男性もいる。


 わたくしはディアナ様と一緒に荷馬車を降りてから、通訳魔法を発動させた。


『ブランターク侯爵!』

『バーナント様、フォルタナ様、この惨状は一体⁉』


 侯爵がわたくしとディアナ様を見て驚く。

 わたくしはピンク、ディアナ様はオレンジのドレス姿だけど、かなり汚れてところどころ破けている。

 顔も薄汚れて髪は乱れ、手首の縄の痕が見えていた。

 侯爵は辺りに散らばる悪党の死体を見やったあと、剣を収めるお義兄様を見て小さく頷く。


『どうやら俺の出番はなさそうだな。バーナント様、フォルタナ様、体は大丈夫ですか?』

『ええ。兄のユーリアス・バーナントに助けてもらいました』


 ブランターク侯爵がお義兄様の方に向く。


『その白い騎士団服、バーナント様の兄君は王国騎士とお見受けした。事態を収拾していただき感謝申し上げる。ノーツ・ブランタークと申す者です』


 ブランターク侯爵がユーリアスお義兄様へ挨拶したので、わたくしが通訳して挨拶をすませてから状況を説明する。


『わたくしとディアナ様がウォルタナの首都でさらわれて、そちらの国の人身売買組織へ連れて行かれそうになりました』

『それは本当か⁉ 無事でよかった! 俺たちは税関役人を捕縛しに来た』


 彼の言葉にヘルメア公国側の税関役人たちがざわついた。

 侯爵は役人たちを睨みつける。


『貴様ら税関の連中が人身売買に加担しているのは判明している!』


 ブランターク侯爵の合図とともに、周りにいた兵士たちが税関役人たちの捕縛を始める。

 慌てて逃げだす者もいたが、次々と逮捕された。

 我がグランデ王国の税関役人はというと、自領の領主がバックにいるからか、黙って捕縛の様子を眺めていた。


 ユーリアスお義兄様が一歩前へでる。


「侯爵。もしよろしければ、賓客として王都へ来ていただけませんか」


 お義兄様が侯爵へ申し出たので急いで同時通訳する。


『俺が貴国へ? 確かに役人が敵側にいては、この事件を収めるのは困難か』

「はい。このたびのことは我が国にとって大変な恥ですが、ウォルタナ領主自らの悪行なのですぐに裁けません。我が国王の采配を得るためにお力をお借りしたいのです」


 貴族のお義兄様が深々と頭を下げるのを見て、ブランターク侯爵が驚く。

 そして、わたくしとディアナ様を見てから納得したようにうなずいた。


『承知した。まあ、妹君には以前よく交渉で世話になったしな。力になれれば先々いいことがあるかもしれないか。よし、準備して明日一緒に王都へ向かおう』


 侯爵はわたくしへ視線を送ってニヤリと笑った。



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m(_ _)m

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