22話
その後、結局面倒事に巻き込まれるのが嫌だとかでさっきの場所に4人は戻った。
「・・・あれってどうやったの?」
ミディアは焚き火に木を放り込んでいるロウに、さっきの盗賊を倒した事を聞いた。
「あれか?あれは、風魔法で相手の前に一瞬で移動して、驚いている隙に移動魔法で背後に飛ぶ。そんで手刀を首筋に叩きこんでいるんだ。それを高速でやるとあんな感じになる」
「いや、普通原理が分かってても出来なから」
祭は、手を横に振って否定した。
「ま、オレは対人戦に特化しすぎて、魔物とか動物の相手は苦手だがな」
「その辺はミディアと逆ですよね。ミディアの弓は超遠距離戦に役立ちますから、ロウの様な接近戦、特に対人戦はミディアの専門外と言っていいでしょうか」
ルスクは2人を交互に見ながら分析している。
「ミディアちゃんは弓が使えるのか?」
ロウの問に答えたのは、ミディアではなく祭だった。
「うん、ミディアは弓で最長700m飛ばせるらしいからね」
「それって殆ど暗殺の域じゃねぇか!?」
前の祭同様、ロウも驚いている。
「お母様、食材も多くないので明日は、あの村で何か買いに行きませんか?」
「そうだね。もし今後、村もなにもなかったら困るしね」
その日は、こうして幕を閉じた。
「それじゃ、行きましょうか」
3人はルスクの背に乗る。
食材はもう買ってある。
生の肉や魚は買えないため、保存食や日持ちするものばかりだ。
村に行く案の定、かなり騒がれたので、祭が魔装の闇魔法で「あれは夢だった」と、記憶操作を行いそう思い込ませ、なんとか静めた。
「ルスク、あとどれくらいで着きそう?」
「そうですね・・・、多分あと3日あれば着くと思いますが」
「ふ~ん、それじゃ頑張ってねルスク」
「はい、頑張ります」
そうして、ルスクは飛び立った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それから3日後。
ルスクの言った通り、祭達はハスト神聖国の領土に入った。
そして国境沿いの街にロウがギルドの事で用があるとかで、寄ることになった。
その街には、ギルドカードの提示と1人銀貨3枚で入れたため、3人は街に入った。
ロウはここに住んでいたらしく、ギルドにすぐに向かい、報酬の金貨30枚を貰ってきた。
「待ったか?」
ほくほく顔でギルドから出てきたロウは、外で待っていた3人に言った。
「別に待ってないけど、ロウはどうするの?これから」
「それはこっちの台詞だぜおふく―――マツリ。今更だが、なんでマツリはこんな国に来たんだ?あの森からじゃニストゥル王国にいるのが自然じゃねぇのか?」
街中での呼び方はロウにも教えてあるので、ロウは言い直した。
「えっと、ほら、今アーディウス帝国とメイラストール皇国が戦争中でしょ?私、ニストゥル王国で色々やっちゃって国に目付けられちゃってさ。シルヴァに言われて戦争が終わるまでこの国に避難するんだ」
「ほぉ、あのクソ兄貴はニストゥル王国に居るのか・・・」
ロウは、ニタァと怪しげな笑みを浮かべる。
「マツリ、オレもその戦争が終わったら一緒に行っていいか?」
その提案に祭は簡単に「いいよ」と言ってしまった。
その発言をルスクが急いで止めようとした。
「ダメですよマツリ!あの2人を合わせたら王都が壊れます!」
「いいっていいって。もしまたやり過ぎたら、昔みたいにルスクが制裁を与えればいいんだから」
「そう言う問題ですか!?・・・まぁ、いいですけど」
もう反論しても無駄だと考えたルスクは、渋々承諾した。
「大丈夫だって、姉貴。オレもクソ兄貴が暴れなけりゃ、一瞬で終わらせるから」
「それが大丈夫じゃないと言ってるんでしょう!?全く・・・2人ともいつも張りあうから・・・」
ルスクは額に手をやり、「はぁ~~~」と深い溜息を吐く。
「・・・ロウさんとシルヴァさんに何があったの?」
ミディアは、手を繋いでる祭に聞く。
「簡単に言うと、どっちが強いかって揉めて何度も本気で殺りあってるんだよ」
「・・・仲悪いの?」
「いや、むしろいいよ。ほら、喧嘩するほど仲が良いて言うしね」
「・・・殺しあって仲が良いって・・・」
この家族の非常識さを、改めて感じたミディアであった。
「で、本題に戻るけどロウはどうするの?」
「ん?オレか?オレはいつもの様に宿に泊まって寝るけど」
「それじゃ私達も同じ宿に泊まりますか。私達はこの街の事を知りませんし、今日はもう暗いですから明日にでも案内して貰いましょう」
「えー、案内とかメンド「いいですね」・・・・・・・・・はい」
ロウは断ろうとしたが、ルスクの顔があまりに怖かったため、頷いた。




