終章
「それでぇ?どうだったわけぇ?」
次の日。ギルはニヤニヤと楽しそうにエラに尋ねた。しかしエラは質問の意図が分からず首を傾げた。
「どう、とは何のことですか?」
「団ちょーのことに決まってんじゃぁん。婚約したの?それとももう結婚した?」
エラは顔を真っ赤にさせた。それを見たギルはさらにニヤニヤと笑った。
「何何ぃ?姉御ってばやらしいなぁ」
「へ!?な、何言ってるんですか、ギル様」
「だぁってぇ」
「もう。変な想像はやめてください。私とレオン様は何もありませんでしたよ。ダンスを踊ってその後二人で帰ってきただけです」
「はぁ?」
ギルは素っ頓狂な声が出た。
「何それぇ」
「何と言われても本当にそれだけですから。レオン様は……それはとっても素敵な方ですけど……こ、婚約とかは……も、申し込まれてませんよ。そ、そんな夢みたいなこと……あるはずないですし」
エラは昨夜のことを思い出し、顔を赤くしながらそう答えた。
そう。二人はとても健全で、楽しくダンスして、楽しくおしゃべりしながらこの寮に帰ってきたのだ。そうしてお互い自分の部屋に戻ってゆっくりと体を休めたというわけである。
ギルは愕然とした。
まさか我らが第一騎士団の団長がそこまでヘタレだったとは思ってもいなかった。
「ぜ」
「ん?ギル様?」
「全員集合ーー!!緊急会議するよぉーー!!」
ギルは大声で叫んだ。エラは何事かと目を丸くしたが、驚くほどの速さで騎士達が集まってきた。
「どうしたんだい、ギル」
「報告!団長と姉御に進展なし!」
「ギル様!?」
ギルが大声で叫んだ。その内容にエラは居た堪れない気持ちになった。
確かに進展はしていない。
そう見えても仕方ない。
けれどエラにとっては結構大きな一歩を踏み出したと思うのだ。だからそう大声で言わないで欲しい。
「何だって!?」
「ふふ。団長ならありえるかな、て思ったけど。まさか本当になるとはねえ」
「ここまでいくと奥手じゃなくてヘタレ」
「姉御が来たことに安心して忘れてたに一票」
などなど。騎士達も動揺を隠せず様々な憶測が飛び交っていた。
せめて見えないところでしてほしい、とエラは心の底から思った。
「何事だ?」
そしてその場にレオン本人までやってきてしまった。騎士達はここぞとばかりにレオンに詰め寄った。
「団長!どう言うことですか!」
「俺たち結構頑張ったよな?」
「その苦労もフリダシじゃあ納得いかねえよな」
ブツブツと文句を言ってくる騎士達、それに顔の赤いエラ。レオンはすぐに何のことかわかった。
そして大きくため息をついた。
「俺、殿下に呼ばれてた」
そうしてこの場から逃げることを選んだ。
「あ!団長!?」
「逃げられると思ってるんですか?」
「往生際が悪い!」
賑やかな騎士達を、エラはクスクスと笑いながら見守っていた。
そうして今日もエラは彼らのためにご飯を作るのであった。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
ラストまでかなり時間をいただきましたが、何とか完結することができました。誤字脱字報告、そしていいねやブックマーク、評価、ありがとうございました。とても励みになりました。
この物語が、読者の皆様に少しでも楽しかったと思っていただけたら幸いです。




