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 ちりん――


 村人が逃げ惑う叫び声や騎士たちの怒号、襲撃者と激しく争う物音が大きく響き渡る。その最中、微かに鈴の音が鳴った。周囲の騒ぎに比べると、それは本当に小さな小さな鈴の音。

 だが、その涼やかな鈴の音が、村の火災で生じた熱気や煙が漂い、殺気の充満する濃密な空間を切り裂く。

 その瞬間、突如訪れる静寂。まるで、時が止まったかのように全ての動きが止まる。


 ガウエンが前に出ると、ゆらりゆらりと舞っていたのだ。

 右へ左へと剣を振るう度に鳴る鈴の音。

 それは、神韻しんいんとした玄妙なる剣の舞い。

 燃え盛る炎を背景に、頭上から降り注ぐ月の光を浴びるその姿は、幻想的ですらあった。

 漂う熱気や煙ですらガウエンに遠慮してか、その周りを避けてるようにさえ見えた。

 月下で行われる剣舞に、周囲にいた者たちは息を飲み魅了されていた。だから、その動きを止め、ガウエンの舞いから目が離せないでいたのだ。

 その時のガウエンはまさに、神をその身に降ろす古代の呪術師シャーマンが如く、神がかっていたのである。

 しかし、そこに怒声がとどろく。


「ただのまやかしだ!」


 怒りに満ちた声を発したのは、村人に紛れていた『断罪の剣』を後方で指揮していた男。

 その男こそ、『断罪の剣』の首魁でもあるマルコムその人であった。


「何をしている。その男も侯爵も、早く斬れ!」


 その叱声に、侯爵一行を囲んでいた男たちが、ハッと我に返り動き出そうとする。

 だが、その前にガウエンが男たちの間をするするとすり抜けていくのである。と、同時に最初は優しく柔らかだった鈴の音が、徐々に激しく鋭いものへと変わった。

 男たちの間で片足立ちなると、独楽のようにくるりと回転し、やすやすと撫で斬りにしていく。その度に、『断罪の剣』に所属する男たちが、血飛沫を撒き散らして倒れていくのだ。『断罪の剣』の男たちも幼い頃より修練を積み、王国内で伝説とまで噂される暗殺集団。それが、まるで赤子の手を捻るように、次々とガウエンにほうむられていくのである。

 この日、この瞬間のガウエンは、冴えに冴え渡っていた。トラッシュを飛び出して以来、十年の想いのたけを全て爆発させ弾けたかのように。

 次々に斬られる配下の姿を眺め、苛立つマルコムが、また声を荒げる。 


「皆で囲め! 先にその護衛士を片付けろ!」


 その怒鳴り声に、ガウエンを手強しと見た暗殺集団が、必殺の陣で一斉に殺到した。自らの命を捨て、相打ち覚悟で四方八方から迫る『断罪の剣』の男たち。たとえ味方の剣に傷付けられようと、構わず必殺の剣を繰り出す。いかな名人達人といえど、前後左右から迫る最初の四人は切り伏せ逃れたとしても、その後ろから相打ち覚悟の者が四人、八人と続くとなると逃れることはほぼ不可能。

 だが、振り下ろされるやいばを体を半身に開き、突き出される切っ先は体を捻って、横薙ぎで迫るやいばも体を屈め、次々と繰り出される斬撃を紙一重で躱すガウエン。それどころか、あっさりと難を逃れると、屈んだ姿勢のまま逆に横薙ぎの斬撃をおくるのである。まるで、相手の剣の軌道が全て見えているかのような動きであった。

 この時のガウエンは――周りの殺伐とした雰囲気とは真逆に、その心には一点の曇りもなく澄み渡る。例えるなら、さざ波ひとつない鏡面のごとく澄み切った湖面の如し。そこに波紋となって映る敵の動きに合わせ、勝手に体が反応する。名人達人と呼ばれる人たちよりも更に上、生死の狭間を乗り越えた遥か高みにまで達していたのである。

 かつて師ローエンが語った直感を越えた第七感すら飛び越え、今のガウエンは剣士の到達点ともいえる『無我の境地』にまで達しようとしていたのだ。

 暗殺団の必殺の陣をもってしても、ガウエンには傷一つ付ける事も出来ぬのも当然。次々と、為すすべもなく斬られ果てていく。

 ここに、ガウエン独自の剣技『鈴鳴りの剣』が完成しようとしていたのである。



「これほどであったとは……」


 アルベール侯爵が呆けた様子で呟く。その横では、騎士団長のジェイクも、斬られたはずの肩の痛みすら忘れ唖然としている。周りで剣を構える騎士たちも、呆気にとられ見入っていた。

 噂に聞いていたガウエンの実力をまの当たりにして、驚嘆の思いを禁じ得ないでいたのである。

 そして、ユラも……。


「……トマスにぃさま」


 と、掠れた呟きをもらした。

 本来で有るなら目を背けたくなる殺戮劇。だが、ガウエンの美麗ともいえる剣の舞いが、皆の目を引きつけ見惚れさせてしまうのである。

 瞬く間に、三十人ほどいた配下の半数以上を倒され、しびれを切らしたマルコムが前へと飛び出した。


「えぇい、どけ! その男とはこの俺が決着を付ける!」


 遠巻きに囲むように退く『断罪の剣』の男たち。その中央で、ガウエンとマルコムが睨み合う。

 そこでようやく、ガウエンが「はぁ」と長く呼気を吐き出し口を開いた。


「やはり、お前が『断罪の剣』を率いるマルコムか?」


 最初に出会った夜、覆面で顔こそ隠していたが、その声には聞き覚えがあったのだ。

 マルコムが、僅かに表情を歪め憎々しげな口調で応じた。


「どこまでも邪魔をする男め!」


「お前が、ゴーグをそそのかした張本人であろう!」


「あやつ、存外に使えぬ男であったな」


 あざけるマルコムに、ガウエンが激昂する。


「な、なにぃ!」


 ゴーグは、ガウエンにとっては兄貴分とも頼む男だった。それが、この目の前の男の奸計によって、ガウエンと雌雄を決する結末となってしまったのだ。この男さえいなければ、今もゴーグはガウエンの横で笑っているはずとの想いを隠しきれない。

 だから、


「斬る!」


 ガウエンの想いを乗せた刃がほとばしる。

 だが、それは逆効果だった。その想いは、『無我の境地』からは程遠いもの。逆に切っ先の鋭さを鈍らせる。高めた境地が、マルコムの一言に乱されたのだ。

 実際のところマルコムもまた、ガウエンの剣技に目を見張り、恐るべしと舌を巻く思いであった。だからこそ一計を案じて、言葉でもってガウエンの心を掻き乱そうとしたのだ。これも、マルコムの老練さを窺わせる技。それにガウエンは、まんまと引っ掛かったのである。


 横薙ぎに伸びるガウエンの太刀を、真っ向上段から切り落とすマルコム。


 ギィン――


 切り結ぶ刃が火花を散らし、心を乱され滑らかさを欠いたガウエンの太刀が大きく弾かれる。対して、マルコムの剣は正中線に沿った、十分に勢いの乗った剣。太刀を弾き、なおかつガウエンの膝を傷付けた。


「かはぁ!」


 思わずガウエンの口から痛みに耐えた声がこぼれ落ちた。

 しかも、それだけでは終わらない。マルコムの返す刃が、下段からするするとガウエンの喉元へと伸びる。それをガウエンは、大きくけ反りかわそうとする。が、避けきれず胸元の衣服が裂け、周囲に鮮血が飛び散った。そのまま後ろに転がるガウエン。


「剣獣の弟子にしては意外と甘い男。勝負あったようだな、くっくく」


 含み笑い共に、勝ち誇った顔を向けるマルコム。

 倒れるガウエンに、とどめを刺そうと追撃を仕掛けないのはさすがである。実のところ、倒れた者に追撃しようと不用意に近付く瞬間が、もっとも危ないのだ。ガウエンもこの時、斬撃を繰り出そうと待ち構えていた。


「無駄だ。お前の考えなど、全て見通しておるわ!」


 全てを見透かし、更に勝ち誇るマルコム。


 ――ちぃ、やはり子供だましのような策には引っ掛からぬか。


 痛みをこらえて、ガウエンがよろよろと立ち上がる。

 マルコムが言うように、すでに勝負は決したかに見えた。それほど深くではないが、傷付けられた胸元と膝頭から、どくどくと血流が溢れ出す。

 剣を振るうのに際して、剣自体を操る腕や上半身に目は行きがちだが、腰より下の下半身で行う足捌きも重要なのである。膝頭を傷付けられれば、思うように剣を振るえぬのは自明の理。誰の目にも、次の瞬間にはガウエンが斬られると思っただろう。

 マルコムもこの時は勝ったと思い、喜色に満ちた笑みを顔に張り付かせ、剣を肩に担ぎ上げてガウエンに迫る。

 しかしこの時、ガウエンの視界の端に、息を飲み心配そうに見つめるユラの姿が映った。


 ――くっ、俺はこの十年……誓ったはずだ。何にも負けぬ力を手に入れると。


 ここで負ける訳にはいかないと、一歩踏み出す。が、やはり膝の傷は如何いかんともしがたく、膝から崩れ落ちそうになる。そこへ、マルコムの一撃が迫る。と、その時、「ちりん」と鈴の音が鳴った。その瞬間、ガウエンの脳裏に、ある思い出が閃光となり蘇った。

 それは師ローエンが、秘太刀『無拍子』を使った時に言った言葉。師は「力を使うのではなく、逆に体の力を抜く事で動いておる」と言ったのだ。

 それは偶然か、はたまた怪我の功名か、傷を負った事によって程よく全身から力が抜け、逆に滑らかに動くのである。

 本来、人が体を動かそうとする時には、最初に必ず何処かに力を込める。が、それを力でなく、逆に力を抜き、己れの自重によって自然と下に向かって落ちる体の動きを起点とし、それをほんの僅かだけ前へと向けてやる。それが、『無拍子』の極意でもあるのだ。 

 その極意ともいえる動きを、師ローエンほど洗練されたものではないが、天性の感だけで咄嗟とっさにやってのけるガウエン。


 袈裟けさに降り下ろすマルコムの斬撃を掻い潜り、ガウエンの必殺の太刀が跳ね上がる。


「があぁ!」


 今度はマルコムが、悲鳴を上げる番であった。

 マルコムにも、何が起きたのかが分かっていなかった。気付けば、両手で握り締めていたはずの剣を、左手一本で持っていたのだ。その剣の柄には、己れの右手首がぶら下がっていたのである。


「な、馬鹿な……」


 痛みを感じるより先に絶句するマルコムであった。

 ガウエンの太刀が、マルコムの右手首を断ち斬っていたのだ。


 右の手首を抱え込み、その場にうずくまるマルコム。それでも、剣を手放さないのはさすがであるが、もはや勝負の決着は動かし難い。たちまち、あふれ出る血流で、周囲に血溜まりが出来上がっていく。


「父上!」


 そんなマルコムに、叫び声と共に駆け寄る影がひとつ。

 それは教会襲撃の際に捕らえた娘。

 勝負に見入っていた騎士の隙をつき飛び出すと、ガウエンとマルコムの間に割って入ったのである。

 背中にマルコムを庇い、燃えるような眼差しでガウエンを睨む。


 ――この男の娘だったのか。


 僅かに顔をしかめるガウエン。とどめを刺そうと、振り上げていた太刀をそっと下ろした。


「すぐに血止めを行えば、その命をとりとめることも出来よう」


 とは言っても、これだけのことを仕出かしたのだ。のちに命で以って償うは当然のこと。


 ――俺は甘いのかな


 と、自嘲ぎみの苦笑いを浮かべるガウエン。後は侯爵に任せようと思い周囲を見渡すと、いつの間にか空は東から白み始め朝の到来を告げていた。そして、生き残っていた『断罪の剣』の男たちも、この場に集結する騎士や治安局の兵士に捕らえられている。仲間の殆どが倒れ、目の前で頭領でもあるマルコムが敗れたのである。さしもの暗殺集団も、ほぼ無抵抗であった。

 その中に、笑顔を向けてくるダンの姿を見付け、ホッと安堵の息を吐き出す。そこでもう一度マルコムに目を向けると、血止めを施そうとする娘を押しのけ、歪めた顔をガウエンに向けた。


「……師弟揃って、俺の邪魔をするとはな」


「ん? 我が師ローエンを知っているのか」


 最初の夜に軽く手合わせした時も、マルコムはローエンを知ってるような素振りを見せたのだ。その事を思い出し、怪訝な様子を見せるガウエン。


「この間は知らぬと言ったが……実は一度、手合わせをしている。望まぬ形ではあったがな」


「手合わせを……何時の話だ」


 痛みが酷いのか、マルコムが切れ切れに話し出した。


「あれは……十年以上も前。今代の王が……玉座に就いてまだ間もない頃……王に招聘されたローエン殿と、御前にて立ち合った……」


 それは暑い夏の日差しを避け、避暑地に静養に赴いた先でのこと。王の気紛れで行われた、退屈しのぎの座興でしかなかった。だが、その立会いでマルコムは、完膚かんぷなきまでに叩きのめされたのである。しかも、ローエンは剣を抜くでもなく、手に持つ鉄扇でマルコムを簡単に打ちえたのだ。その時に使ったのが秘技でもある『無拍子』。何が起きたのか分からぬままマルコムは頭頂部を打たれ、軽い脳震盪を起こした所を続けざまに喉を突かれ、あっさりと昏倒こんとうした。

 それは周りから見れば、棒立ちになってる所を容易く打ち込まれたようにも見える不様なものであった。それまでのマルコムは、王国の武術師範の要職にあり、武人としての名声も欲しいままにしていたのである。しかも裏では、『断罪の剣』を率いる者としても、王から絶大なる信頼を寄せられていたのだ。それが、手酷い醜態を晒したのである。負けるにしても、もう少しまともに打ち合う事が出来たなら、或いはその後の経緯も違った形になっていたのかも知れない。


「……それからだ。王が我らに向ける目が変わったのは。信頼は不信へと変わる。我らも信頼を取り戻そうと必死になった。それでも、一度離れた王の心が戻ってくることはなかった。挙句に我らを廃し、新たな裏の組織を立ち上げようとする動きまで示されたのだ。だから、我らは伯爵の謀計に乗った。今一度、我らの力を示すために……」


 マルコムの告白に、ある意味ガウエンは衝撃を受けていた。

 一切の加減もなしに完膚なく相手を叩きのめすのは、師らしいといえば師らしいのだが、その遠因が巡り巡って弟子であるガウエンに降り掛かる。そこに、世の中のえにしの妙味と深さを思い知るのである。


「それで、王の勅命も偽装したと?」


「……いや、あれは本物だ。もっとも、意識は混濁し夢現ゆめうつつでなされた物ではあるがな……」


 その言葉に、騎士たちを従え近付こうとしていた侯爵が、驚いたように息をのむ。

 意識は混濁しようとも、ある意味それが、反対に王の本心とも言えるのである。


「それは……真実まことか」


 立ち止まり、呻くように声を絞り出す侯爵。衝撃によろめく侯爵を、寄り添って支えるユラ。

 その姿を見たガウエンの表情が、僅かに歪む。

 そこで、「くくく」とマルコムの含み笑いが響く。その声は次第に大きな笑い声に変わっていくのである。


「ん……何がおかしい!」


 鋭く詰問するガウエンに、笑い混じりに応じた。


「だから……俺がここで終わろうとも、お前たちもまたここで終わりなのだ」


「なんだと、どういう意味だ!」


「王が存命の間は、いくらお前たちが頑張った所で賊軍ということだ! あれを見ろ!」


 マルコムが村の周囲を指し示すと、いつの間にか軍旗が林立していたのである。


「あれは、反対派の貴族の領軍か!」


 それは、ジェイクの苦々しさを含んだ叫び声。その声に、周りにいた騎士や治安局の兵士がどよめいた。

 遠目にざっと見渡しただけでも、軽く千を越える兵士の数。それに対して侯爵側は、一連の争いで数を減らし二百にも届かない。とてもではないが、まともに抗えるとは思われない兵力差。しかも、蟻の這い出るほどの隙間もないほどに取り囲まれているのである。


「くっ……」


 侯爵の顔は歪み、ガウエンもまた取り囲む軍を睨み呻くしかない。

 と、その時、不思議なことにガウエンは気付いた。優勢なはずの貴族の軍が、動揺したように軍旗を乱して退いていくように見えたのだ。


「軍を退いているのか?」


 呟くと同時に、トラッシュの街に繋がる街道から喚声が届いてくる。


「何が?」


 それは誰ともなく呟かれた声。

 しかし、その疑問はすぐに氷解する。

 なぜなら、囲みを破り騎乗した謎の一団が駆け込んできたから。

 その先頭にいるのは、争いの場にもっともそぐわない商人であるはずのハンスであった。その後ろには、トラッシュの治安局に所属するカシムやマクベインの顔も見える。それ以外にも、続々と姿を現すトラッシュの兵士達。


「へへ、カシムのおっさんも、どうやら間に合ったようだな」


 そう言って、にやけ顔でガウエンに近付くのは、ダンことダンカン。

 近付く一団は、カシムやマクベインが声をかけ集めた義勇兵の一団だったのである。

 驚く事にガウエンたちが脱出した後、カシムたちはその足で中央政庁に赴き侯爵に背く者たちを引っ括り、そのまま駆け付けたのであった。恐るべし迅速さであったが、裏を返せば、それだけ侯爵を敬愛する者が各所に多かったためでもあるのだ。


「……ましたぞ……なされ!」


 よく見ると、先頭を駆けるハンスが何やら叫んでいた。その頭上では、ハンスがビリーと名付けた鳥が、くるくると円を描いて飛んでいる。

 近付くにつれ、その内容も徐々に明らかになっていく。


「昨夜遅く、アイザック王がご崩御なされましたぞ! 今は喪に服す期間、双方剣を引きなされ!」


 ハンスが声を枯らして叫び続けていた。


「あ、兄上が……」


 侯爵が絶句し、マルコムが血の気を失った顔で天を仰いだ。が、すぐに……。


「アルベール侯爵さまに物申す! まことに勝手な言いぐさながら――」


 突然、威儀を正したマルコムが、強張り蒼白となった顔を侯爵に向けた。


「――今回の反侯爵派に与しての騒動。『断罪の剣』の総意ではござらん。全ては、我の独断。何卒なにとぞ、生き残った一党に寛大なるご処置を……これを以って!」


 叫ぶように言うと、マルコムは己れの首筋に刃の切っ先を当て、一気に押し引いた。途端に、噴水のように血飛沫を撒き散らして倒れるマルコム。


「父上えぇ!」


 娘の悲痛に満ちた声が、周囲にこだました。


 思わず顔をそむけるユラを、抱きしめるアルベール侯爵。それを横目に眺めつつ、ようやくこれで終わったかと天を仰ぎ、深く息を吐き出すガウエンであった。

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