表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者ゲーム ~13人の勇者候補は願いを叶えるため異世界で殺し合う~  作者: 玄野 黒桜
旅路の果てで森は謳う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/129

現状確認

第5章スタートです!

 クリーチャーの襲撃から一週間が過ぎた。だが、俺たちはまだハルヴォニの街で足止めされていた。理由はいくつかあるのだが――


「ん?ニシダ、早いな」


「あっ、スギミヤさん! おはようございます」


 一人ぼんやりと朝食を取っていた俺は食堂に入ってきたスギミヤさんに声を掛けられた。


「おはよう」


「昨日目を覚ましたばかりなのに起きていて大丈夫なんですか? 」


「ああ、何ともない。むしろ調子がいいくらいだ」


 言ってスギミヤさんは少し困った様な表情を浮かべた。


 そう、これが未だハルヴォニに足止めされている大きな理由の一つだった。あの夜以来、スギミヤさんは3日も目を覚まさなかった。蒼月の雫のリースベットさんのおかげで傷は癒えていたはずなのにである。


 さすがに不安になった俺たちは医者を呼んだりもしたのだが、特に異常は見られず原因は不明と言われた。結局彼は昨日の朝目を覚ました訳だが、その間エリーゼちゃんが付きっ切りで看病をしていた。だが、不思議なことに前回俺たちが行方不明扱いされたときとは違って彼女はあまり深刻そうな様子が見られなかった。もちろん彼女が不安に思っていることも俺たちに気付かせなかった可能性もあるが……


(彼女にはスギミヤさんに異常がないことが分かっていた?)


 俺は正面で食事を始めたスギミヤさんの顔を見ながら考える。


(そもそも目覚めなかった原因は何なんだ?)


 考えながら、しかし、俺には思い当たるフシがあった。


(スギミヤさんにあって俺になかったこと……やはり“欠片”を取り込んだことか)


 そう、同じ変異種と戦った俺とスギミヤさんの唯一の違いはこれだ。


 今回を含め結局全ての変異種を倒したのはスギミヤさんだった。3匹の変異種に分割されていたであろうマサキ・ベレスフォードの“勇者の欠片”は再び一つになりスギミヤさんが取り込んだことになる。つまり彼の中には今2つの欠片が存在していることになるのだ。


(スギミヤさんに特別変わったところは見当たらない。本人も体調はいいと言っている。だけど……)


 もし、俺たちが予想したように欠片が何らかの力を与えているとするならば、今のスギミヤさんは以前よりも力が増している可能性がある。


(いずれどこかのタイミングでは確認しないと)


 欠片を取り込んだことの影響、これは早めに確認しておく必要がある。


「それより悪かったな」


 俺が欠片を取り込んだ影響について考えていると、スギミヤさんが突然そんなことを言ってきた。


「えーと? 」


 俺は何のことだか分からず首を傾げる。


「俺の分もギルドに報告してくれたんだろ? 」


「ああ、そのことですか! 構いませんよ。どうせ自分の報告をしないといけなかったですし」


 漸く何についての謝罪か理解した俺は改めてそう言葉を返す。


「しかし、困ったな。せっかく大移動(スタンピード)が終わったと思ったのに足止めか……」


 そう言ってスギミヤさんは困り顔で頭を掻いた。


「仕方ないですよ。ギルドも事後処理でバタバタしてるみたいですし、俺たちの立場が複雑ですからね……」


 俺もそう言っては見たものの恐らく同じような顔をしているだろう。


 そう、このギルドの対応が足止めされているもう一つの理由だった。


 何故、ギルドが俺たちの足止めをしているのか? それは曖昧になっている俺たちの処分が原因だった。


 俺たちはギルドから受けた指名依頼の対応について処分が決まるまで、依頼を受けることも街を出ることも禁止する通達を受けている。あのとき変異種の対応を依頼されたのはイレギュラーなのだ。そして、俺たちは見事に変異種を倒したのだが、そのことが事態を複雑にしていた。


 蒼月の雫によりギルドにも俺たちが変異種を倒したことは報告された。それにより今回一番の功労者は俺たちということになった。俺たちとしては別に自分たちだけの手柄にするつもりなどなかったのだが、蒼月の雫が良しとしなかった。


 そこで改めて問題になったのが『俺たちの処分をどうするか』ということだった。


 ギルドの中でも「今回の功績で処分を相殺してはどうか? 」という声と「功績と処分は区別するべきだ」という声で意見が割れ、未だに結論が出ていない。だが、ギルドには今回の件の事後処理も行わなければならない。


『クリーチャーの襲撃』という予想していた中でも最悪の部類に入る結果にギルドは後始末に追われていた。そこに俺たちの問題が加わった結果、俺たちへの処分は後回しにされてしまったのだ。


 これは仕方のない部分でもある。何せ冒険者の中にかなりの犠牲が出てしまった。ギルドでは亡くなった者の遺族や怪我をした者へ対応を行う必要があり、こちらが急務でもあるのだ。ギルドでは今も犠牲者の確認に追われていた。


 問題はまだある。それはハルヴォニの森の状況だ。


 ギルドは未だに森への立ち入り制限を解除していない。今も高ランク冒険者のパーティーがギルドから氏名を受けて森の調査を行っていた。「変異種を倒したのに何故? 」と思うかもしれないが、そこには変異種を倒したからこその弊害があった。


 今回変異種が生まれたことでハルヴォニの森の状況は大きく変わっていた。多くのクリーチャーがそれまでの縄張りを追われていた。森で新しく縄張りを得たものもいれば森から追われたものもいる。だが、その原因となった変異種はもういない。


 その結果、何が起こったかと言えば――急激な揺り戻しが起こっているのだ。


 森を追われたものは戻ろうとする。森を追われていないものも元の縄張りへと戻ろうとするものも出てくる。そうなれば当然縄張り争いが発生する。


 更に厄介なことに変異種は以前のボスだったものを追い出すか殺してしまっている。つまり現在、森にはボスとなるクリーチャーがいない状態になっているのだ。結果として生き残った強力なクリーチャーたちによって森の新たなボスの座を巡る熾烈な争いが発生してしまっているのだ。


 縄張り争いとボス争い、この2つが同時に発生している現在の森は完全な無秩序状態になっている。もしかすると変異種がいた頃よりも危険な状況になっているかもしれない。


 そんな状況の森に低ランクの冒険者を入れる訳にもいかず、結局ギルドは大移動(スタンピード)中の状態をそのまま続けていた。


「今日あたり被害者の確認が終わって保障を発表すると言ってましたけどね」


 俺は聞いているギルドの状況を思い浮かべながらそう付け加えた。


「そうか。だが、もう暫くは動けないのだろう? 」


「まあ俺たちについての話し合いはこの後に再開予定ですからね」


 俺はスギミヤさんの質問に肩を竦めた。


「まだ時間が掛かりそうだな。それでお前は今日はどうするんだ? 」


 俺の反応に苦い顔をしたスギミヤさんだったが、ここで話題を変えて今日の予定を聞いてきた。


「俺ですか?俺はブルンベルヘン工房に行く予定です」


「工房? 装備の点検か? 」


 スギミヤさんが首を捻る。


「それもあるんですがちょっと考えてることがありまして」


「考えてること? 」


 俺の返答にスギミヤさんはますます首を傾げた。


「まあそれはお楽しみということで」


 俺はそう言うと「お先です」と言って席を立った。


 さて、工房に向かうとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良ければ評価をポチ…(≧∇≦)ノ凸として頂いて、ブクマ登録や感想やレビューなんかも書いてくれちゃったりすると作者が喜びます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ