表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者ゲーム ~13人の勇者候補は願いを叶えるため異世界で殺し合う~  作者: 玄野 黒桜
湿った大地に咆哮す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/129

再会は涙とともに

2020/9/11 改稿

 副ギルド長への報告を終えた俺たちは部屋を出た。廊下を進み受付のフロアに出る。恐らくピークの時間帯は過ぎたのだろう。冒険者の姿は見えるものの、その数は疎らだ。それに比べるとなんだかいつもよりフロアにいる職員の数が多い気がする。


「なんですかね?」


「さあな。そんなことよりさっさと宿に戻るぞ」


「あっ、スギミヤさん!ちょっと待ってください」


 俺はギルドを出ようと歩き出したスギミヤさんに声を掛けて受付へ向かった。そこには先ほど俺たちの受付をしてくれたおばさんが変わらず座っていた。


「ああ、ニシダさんにスギミヤさん!副ギルド長への報告は終わられたんですか?」


「はい。それでギルドの皆さんにもご心配やご迷惑をお掛けしたと思いますので一言とお詫びを、と思いまして。皆さんお仕事中でしょうしそのことをお伝え頂けませんか?」


 俺がそう言うとおばさんは驚いた顔をしたがすぐ笑顔になると、


「そんなことをわざわざ仰る冒険者さんも珍しいですね。分かりました!私から伝えておきます」


 と言ってくれた。俺は礼を言って頭を下げる。


「それともう一つお願いしたいんですがいいですか?」


「構いませんよ」


「蒼月の雫と夢幻の爪牙の皆さんにもお詫びをしたいのですが、生憎俺たちは2組の滞在先を知りません。2組がいらっしゃった際にでも、俺がお会いしたいと言っていたとお伝え頂けませんか?」


 俺がそう言うとおばさんは更に驚いた顔をした後、


「ええ!ええ!もちろんです!承りました」


 と言って笑った。俺はもう一度おばさんに頭を下げて受付の前を離れた。


 俺が側に戻るとスギミヤさんが意外そうな顔でこちらを見ていた。


「なんですか?」


「いや、前から思っていたがお前のそういう気配りは高校生離れしてると思ってな」


 スギミヤさんに言われて俺は「ああ」と言いながら苦笑いした。


「よくあっちの世界の友達にも言われました、『なんか硬い』って」


「そうなのか?」


「ええ。まあこれは親の教えみたいなもので、もう癖になってることなんで気にしないでください」


 俺の言葉にどう思ったのか、スギミヤさんは「そうか」とだけ言うとギルドの入り口へと歩き始めたので俺も後に続いた。




 ギルドの外へ出るとすっかり日が落ちていた。俺たちが街に着いた時点ですでに日が傾き始めていたことを考えれば当然だろう。


 ギルドの周辺には飲食店も多いので人通りはあるのだが、やはりと言うべきか俺たちが指名依頼に出発する前に比べると心做しかその数が減っているように感じた。


 そんな通りを横目に俺とスギミヤさんは宿に向かって歩き始める。


「……処分、どうなるんでしょうね…」


「なんだ?気になるのか?」


 俺がポツリと呟いた言葉にスギミヤさんが反応する。そんな彼に俺は「気になりませんか?」と聞き返した。


「気にしてもしょうがないだろう。それに俺たちが処分を受けるようなことをしたのも事実だ」


 スギミヤさんは特に悩んだ様子もなく淡々と言う。


「もちろん俺もそれは分かってます。でも、もし冒険者の資格剥奪とかになったら今後の行動に支障が出ませんか?」



「それはないな」


「どうしてですか?」


 俺の懸念を「ない」と言い切るスギミヤさんに首を傾げる。


「考えてみろ。ギルドは大移動(スタンピード)が落ち着くまで俺たちに街に留まってほしいはずだ。少なくとも戦力として計算してるはずだからな。そんな状況でギルドからの制約を無くすような処分をしたら、俺たちが街を出ていくかもしれないだろ?俺たちの資格を剥奪することはギルドとしてもメリットがないんだ」


 スギミヤさんは前を向いたまま淡々と説明する。


 確かにスギミヤさんの言うように俺たちの資格を剥奪することにはギルドもメリットがないだろう。もちろん騒動が収まってから処分する方法もあるが、それがいつになるのか分からない状況で先送りし続けるのも難しい。


「まあ降格はあるかもしれないがな」


 スギミヤさんがそう話を締め括ったところで俺たちが泊まっている宿『海の親父亭』が見えてきた。




■□■□■□■□■□■□■□■□■□

「ニシダさんっ!スギミヤさんっ!2人ともご無事でっ!!」


 俺たちが『海の親父亭』に入るとすぐにそんな子供の声が聞こえてきた。見れば受付カウンターの前に皆が揃っていた。


 感極まった表情で両手を広げているのは俺たちをアーリシア大陸まで連れてきてくれたフリードアン共和国のカディオ商会代表のレオナールさん。見た目は小学生にしか見えないが23歳の歴とした成人男性だ。最初に聞こえた子供の声も彼のものだ。


「ったく心配させんなよっ」


 ぶっきらぼうに言ったのはレオナールさんの後ろに立つ浅黒い肌のゴツイおっさん。この店の主人のアンットさん。口調はぶっきらぼうだが時折鼻を啜っているあたり心配してくれていたようだ。


 そして……


「エリー」


 レオナールさんの隣で先ほどから俯いたままのエリーゼちゃんにスギミヤさんが声を掛ける。その声は普段のやや無愛想なものとは異なり、優しい響きをしていた。


「エリー」


 スギミヤさんがもう一度彼女の名前を呼ぶ。顔を上げない彼女。しかし、その手はスカートを硬く握り締め、震えていた。


「心配を掛けてすまなかった」


 スギミヤさんがそう言って頭を下げる。


「エ、エリーゼちゃんっ!その、スギミヤさんは悪くなくって!どっちかっていうと今回のことは俺のせ――」


 頭を下げるスギミヤさんの姿に俺が慌ててそう言ったとき、それまで俯いていたエリーゼちゃんがバッと顔を上げたかと思うとスギミヤさんへ向かって駆け出した。


「っ!?」


 顔を上げたスギミヤさんが驚いた表情をしたが、自分の胸に飛び込んできた彼女を優しく抱き止める。


「エリー、すまなかった」


 自分の胸に顔を埋めているエリーゼちゃんにスギミヤさんが再度語りかけたとき、


「レイジさんっ!レイジさんっ!私っ!わぁだぁじぃぃっ!うわぁぁぁぁぁん!!!」


 顔を上げてスギミヤさんを見たエリーゼちゃんはそう話し出したが、みるみるうちに瞳いっぱいに涙を溜めると再びスギミヤさんの胸に顔を埋めて泣き出してしまった。


 スギミヤさんは自分の胸で泣き続ける彼女の頭を優しく撫で続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良ければ評価をポチ…(≧∇≦)ノ凸として頂いて、ブクマ登録や感想やレビューなんかも書いてくれちゃったりすると作者が喜びます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ