表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
四章 スラム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/1659

四十五話 別れ

 転入試験に合格したレオ兄は王都セイルーンで1人暮らしを始める事になった。


 とは言っても高校の寮なので不安は少ない。


 なので今日は昼間にレオ兄の知り合いを招いてお別れパーティをする。


 レオ兄は学校で貴族も平民も関係ない友人関係を築いたらしく色んな人種の子供たちが集まった。女子が多かった。悔しくはない。


「レオ君、元気でね!」

「会いに行くからね!」

「帰ってきたら教えてね!」


 別れを悲しむ女の子の多い事、多い事。


 モテるって大変ですな~。俺には一生わからない気持ちだな~。


「あの・・・・わたし前からアナタの事が好「待ちなさい!」 何よ!?」

「ファンクラブの掟を忘れたの? 告白なんて許さないわよ!」

「うるさい! 私はあなた達と違ってもう会えないかもしれないんだから」

「あの! 私もレオ様の事が・・・・」


 結局パーティはドンドン騒がしくなり、女性陣が揉みくちゃになって終了したので彼女達の告白は有耶無耶になった。


 ファンクラブ、あったんだ。ふ~ん、へ~、そうですか~。


 いや気にしてないよ?



「ルークが作ってくれたフリスビーで仲良くなれたんだよ」


 何故かパーティ後にレオ兄がフォローしてきた。


 誰でも簡単に遊べる遊具だから「一緒に遊ぼう」って声も掛けやすかったんだろうさ。


 交友関係で役立てたなら嬉しいけど、その後に女の子と仲良くなれるのはレオ兄の才能だろうな。


 俺には絶対無理だ、絶対にだ!!




 夜は身内でのお別れパーティを開催。


「レオ元気でね。1日で帰って来れるんだからいつでも帰ってきていいのよ」

「頑張って。良い跡継ぎになるのを期待してるからね」


「任せてよ。立派な貴族になるまでは帰って来ないつもりでいるんだ」


 父さんはあまり心配していないようだ。


 たしかにレオ兄は10歳とは思えない人格を備えているので安心だろう。


「エリーナさん大丈夫ですよ~。私がたまに様子を見に行きますから~」


 号泣したエリーナを見ているユキが気を使っている。いや自分が王都で楽しみたいだけかもしれない。



「強い学生が居たら仲良くなって連れて来るのよ! 約束だからね!」


「アリシア様はヨシュア学校でも一番になれていないので、まずはそこを目指すべきかと」


「それもそうね。まずは相性の悪いアイツとか、アイツを倒さないとね」


 フィーネやめて。訓練と称した虐待が激しくなるから。


 5歳のプレゼントをもらって以来、アリシア姉が容赦なく木刀で叩くんだ・・・・。

 フィーネがくれた腕輪があるから大丈夫とか言って叩いてくるんだ・・・・・・。


 バリアがあると言っても怖いんだよ。嬉々として木刀を振りかぶる姉様が怖いんだよ。


「冒険者とかでも良いの?」


「もちろんよ! 強者に身分は関係ないわ! 王族だろうと魔獣だろうと構わないわよっ!」


 父さん、母さん、教育方法間違えましたね?


 レオ兄、絶対連れて来るなよ。フリじゃないからな。



「寂しくなるニャ~」

「またね」

「元気でね!」


「ありがとう。あまり一緒に過ごせなかったけど大きくなって帰ってくるからね」


 リリ達と一緒に暮らした期間は2ヶ月ぐらいだもんな。


 でも間違いなく一番影響があったのはこの3人との出会いだ。だからこそレオ兄は王都へ行くんだ。


「わたしも大きくなってるからね!」

「わたしも」


「そうだね。ヒカリとニーナはこれから成長するだろうね」


 最近よく食べるんだ、ホントに。その分も運動してるから次会ったら急成長に驚くかもな。『よく食べ』『よく遊び』『よく寝る』子供の成長三カ条だ。



「これ道中で食べてください。私の味が懐かしくて泣かないでくださいね!」


「俺は結構手が空いてるから王都まで会いに行くからな。筋トレしとけよ」


 そう言えばマリクは王都に居たんだっけ。


 往復で2日も掛からないから特訓を休みにすれば行ける距離だし、道中は慣れたものだから会いに行けるんだろう。


「エル、美味しくいただくよ。少しは自分でも料理するから、この味が出せるように頑張るね。

 マリクはオススメのお店とか教えてよ。待ってるからね」


 家事まで出来るようになるとか、これ以上モテて何をするんだよ。

 ハーレムか? ハレームを作る気か?




 最後は俺の挨拶か。


 言いたいことは全部言ってあるので別に無いな。 


「約束忘れるなよ」


「そっちこそ」


 お互いにスッと拳を差し出す。


「「またな兄弟!」」


ガッ!!


 全力で拳をぶつけ合う。漢の約束だ。




「何それ! 私にも教えなさいよ!」


 それを見たアリシアが羨ましがる。どうも彼女の琴線に触れる行為だったらしく、「熱いわね!」や「強敵と書いてトモと読む!」とか言って喚き散らしている。


「ダメ、漢同士の挨拶なの」

「握手でいいよね?」


 そう言われたアリシアが激怒したが、別れの場なので全員でなだめる。


「ルーク、後で覚えてなさい・・・・」


 はい。


 後日アリシア姉による可愛がりが執行された。




 次の日、前回も利用した定期便にレオ兄が乗り込む。


(なんか御者がオドオドしてるけど、あんな人だったか? 旅先で何かあったのかもしれない。やっぱり厳しい仕事なんだろうな)


「お元気で~」

「楽しい高校生活になることを祈っております」

「私もいつか王都に行くからね! 話たくさん聞かせなさいよ!」

「あなたは私達の自慢の息子なんだから自信を持って頑張りなさい」

「成長するまで帰ってくるなよ!」


 みんな元気よく送り出そうとしている。


 別れに涙は不要だ。



「みんなも元気でね! 行ってきます!!」




 こうしてレオポルド=オルブライトはヨシュア領から旅立っていった。


 今後、どのような人生を送るのか。それは誰にもわからない。


 決めるのは彼自身だ。





 竜車がガラガラと音を立てて遠ざかって行き、やがて見えなくなった。


「行っちゃったわね」


「エリーナ、今日は泣かなかったね」


「!?」


 どうやらアランはエリーナが号泣したのを気づいていたらしい。


 顔を真っ赤にしてアランを叩くエリーナはとても3児の母には見えなかった。



「あう~。マリクしゃん、別れって悲しいものでしゅね~。ぐすっ」


「いつかは来るんだ。それが今だったってだけだろ」


「二人とも縁起でもない事を言わないでください。レオ様は帰ってきますから」


 エルが泣きだした。


 彼女もレオ兄が生まれてからずっと一緒に生活していた家族なのだ。年の離れた姉のような気持ちなんだろうな。


 エルにつられてアリシア姉と母さんも泣きだした。

 ずっと我慢してたらしく、家に帰るまでの道中ずっと号泣だった。


 知り合いとすれ違う度に父さんが「息子が旅立って」と説明していたのが可哀想だったけど、俺に代理を務めるコミュニケーション能力はないので放置した。



 俺は悲しさや寂しさより、期待の方が大きいので泣かない。


 兄さん、大きくなってまた会おう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ