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【書籍化】エアボーンウイッチ~異世界帰りの魔導師は、空を飛びたいから第一空挺団に所属しました~  作者: 呑兵衛和尚
Inter Mission~迷宮騒動、大騒動!

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Tangled Up In Blue(任務完了、それでは帰還しますかね)

 鳴沢氷穴の全長はそれ程ではないのですが、その奥にある地獄穴から江の島までの距離が果てしないと噂されています。


 何故、果てしないというのか。

 それはまだ、誰も調べていないから。

 そもそも、火山性洞窟である鳴沢氷穴と江の島に存在する岩屋洞窟では、生まれた経緯や歴史が異なっています。そのため、繋がっているというのも伝説であり、実際に調べられたという記録も残っていません。

 つまり、今回の迷宮管理特別委員会がドローンを地獄穴の中まで飛ばしたというのが初めての調査であり、内部に入り魔物に襲われたという調査員を救うべく突入した私が、最下層へとやってきた初めての人間という事になります。


「まったく、こんな状況でなかったら、もっと事細かい調査を行えたり、迷宮探索を楽しみめたのですけれどねぇ」


 私の前方50メートル付近をずるずると進んでいく巨大な蛇。

 体長は20m程でしょうか、全身を薄青色に輝く鱗に覆われた氷竜が、半身を洞穴の中に沈めつつ泳ぐように進んでいます。

 

「はぁ。そうでしたよ、こいつは大地遊泳(アースダイヴ)を無詠唱で使えるのですよねぇ。でも、ここが迷宮で助かりましたよ。自然洞や森林山岳では貴方は地下まで潜り進む事が出来ますけれど、迷宮の場合は全ての壁や天井、床が魔力に浸潤されているので、貴方はせいぜいそれぐらいしか潜る事が出来ないのですよねぇ」


 とはいえ、相手は魔力を反射し無力化する存在。

 私にとっては天敵なのですけれど。

 

「ここで、一か八かって大規模魔法を放って、貴方に気付かれるような事はしませんよ。そんな阿呆な初心者冒険者ではありませんからね……はぁ。この魔術だけは使いたくなかったのですよ、あまりにもイメージが悪すぎますから……」

 

 そう呟いてから、アイテムボックスより大剣を一振り取り出します。

 これは魔力が浸潤していない、本当にただの硬い大剣。

 ドワーフの名工・マルムスティが鍛えし、伝承の大剣の素材です。

 ええ、これ自体はほんっとうに硬いだけなんですよ、魔法鉱石ではない超硬金属ブラスアーバントという、タングステンが融解する温度でもびくりともしないという訳の分からない金属なのですから。

 ほんと、ドワーフの鍛冶技術については訳がわからないの一点です、私も途中で考えるのを止めたぐらいですから。

 でも、これに魔力を付与して聖剣を作って欲しいと頼まれたので、作ってあげましたよ、それなりに強い魔剣を。

 私は神聖魔術が使えないので聖剣は作れませんでした。

 そして失敗した魔剣もどきから適当にいいものを再度鍛えて貰ったのが、この超硬大剣キレルスマッシャーです。


――ドスッ

 キレルスマッシャーを地面に突き刺してから、私は暗黒魔術の書を書庫から取り出し、詠唱を開始します。


 暗黒魔術の書(グロウ・ソトホース)を召喚。そして七織の魔導師が、暗黒魔術の書(グロウ・ソトホース)に誓願します。我が肉体を変容し、強靭な肉体を与え給え……我はその代償に、魔力125000を献上します。超暗黒戦士化アルティメットウォリアーっっ」


――ゴギゴギゴギゴキッッ

 私の肉体がゆっくりと変容していきます。

 身長は2メートル20センチ、体重は知りません。

 一言で表しますと、可憐な乙女のプリティ魔導師から筋肉モリモリのマッチョマンへと変化しました。

 それに合わせて着衣も『女戦士の胸当て』と『頑強なるズボン』の二つに換装です。

 さあ、そろそろ人格も変化してきますよぉぉぉ、と、その前にトラペスティの耳飾りを付けておきましょう。私が戻ってこれなくならないように保険です。


『……はぁ。久しぶりに装着したと思ったら、またそれか。とっとと目標を始末して戻れ』

「そりゃあもう、判っていますよぉ。それでは行きます、逝かせます、とっとと死んでくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


――ズルリ

 超硬大剣キレルスマッシャーを引き抜いて、ブンブンと振り回しつつ氷竜に向かって突進します、ええ、まずは尻尾に向かって大剣を大きく振りかざして一刀両断です、え、天井ですか?

 ぶったぎってしまえば、そんなものは存在しません。いいですね。


――ガギガギガギガギガギガギガギっっっ

 天井を大きく削りつつ、力いっぱい氷竜の尻尾に向かって振り通す。

 そりの一撃で尻尾の先端を大切断しますと、つぎはそのまま地面に突き刺さった大剣の柄を強く握りしめて、胴体へ向かって大爆走。

 ええ、地面なんて飾りです、削りつつ走っていけば胴体近くまで三枚おろしが出来るじゃないですか。


――ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ

 氷竜が絶叫を上げて振り向き、私に向かって大きな口を開きました。

 ええ、ブレスが来ますよ、いかなる物も凍り付かせるという絶対零度のブレスが。

 やがて口の中が青白く輝いたと思ったら、一気に直線上に氷のレーザーブレスが飛んできました。

 はい、無視です、そんなの身体で受け止めます。

 いいですか、貴方のブレスは絶対零度ではありません。

 異世界アルムフレイアには、絶対零度という概念はありませんから。

 もっと低い温度が存在する世界では、たかが絶対零度は冷たい水です、私の故郷は北海道。

 バナナで釘が打てる世界だって兄貴が話していましたから。


「冷たいけれど、無視っっっっっ」

『馬鹿かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』


 ええ、凍りつく前に前進、体を動かせばいいのです。

 筋肉が発する熱量で、こんなブレスは無視ですよ、無視。

 

――ギフッギフッ

 ブレスが止まり、クールタイムが発生。

 はい、体内のブレスを放つための魔導器官も凍りつくので、それが溶けるまでは貴方自身の動きも鈍るのですよね、知っています。

 普通の生命体なら体内から凍結して死んでいるのですけれど、動きが鈍るだけというのは流石ですよ、氷竜という名前も伊達ではありません。

 でも、それでおしまいです。


――シュシュシュンッ

 動きが鈍った氷竜なんて敵ではありませんよ。

 そもそもスティーブなら、ここまで私が苦労するまでもなくあっさりと片付けている筈ですからね。

 という事で、頭部を跳ね飛ばしましたので、あとは体内から犠牲となった調査員を救出ですか。


『タイムリミットだ馬鹿者っ。暗黒戦士の魂に取り込まれるぞ、とっとと戻れっ』

「はぁ、この私が取り込まれるですって? あ、そうですね、取り込まれますね、それじゃあ解除っと」


――パチィン

 術式自体を却下(リジェルト)により解除。

 ええ、ほんとうに、この形状では下品過ぎていけません。

 しかも、わたし、すっぽんぽん。


「うひゃあ、アイテムボックスより魔導装備一式を換装です……っと」

『ふぅ。あと12秒遅れていたら、暗黒闘気に晒されてやばいところだったぞ』

「ああ、そのレベルまで汚染されていましたか……」

『全く、先に私を装着してから変化しろ。それじゃあな』

「はい、ありがとうございます」


 ということでトラペスティさんはアイテムボックスで休息を。 

 まったく、暗黒魔術は本当に危険ですよ。

 以前も説明しましたけれど、暗黒魔術って自らの体内の魔力を変換し、様々な種族に変化し力を行使する秘術ですから。

 正確には、『暗黒魔術を行使するために適切な種族に進化する秘術』であり、より上位存在に変化する場合は、あらかじめ解除のキーワードが必要でして。

 今回はそれをトラペスティさんにお願いしたという事ですから。


「そ、それじゃあ超暗黒戦士アルティメットウォリアーの装備も回収して。死体になった氷竜は……ああ、やっぱり迷宮のラスボスでしたか」


――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 音を立てて消滅していく氷竜。

 今回はオーバーキルだったようで、素材を回収する時間がありませんでしたか。

 ん~惜しい。

 いい素材なんですけれどねぇ……と、魔石は残りましたか。これは私のものということで。

 そして氷竜が消滅した場所に、二人の人が転がっています。

 見た感じまだ呼吸はしているようで、口らしき部分からヒュウヒュウと呼気が越えています。

 装備はあちこちが溶け、剥き出しになった皮膚までボロボロにやけどしていますよ。

 

「はい、すぐに助けますからね~」


 急ぎアイテムボックスから霊薬エリクシールを取り出し、二人にぶっかけます。

 この場合は全身にまんべんなく掛けるので、数本使いますが構いません。

 材料は常に裏庭迷宮で回収していますので。

 もっとも、そろそろ世界樹の葉も足りなくなりそうなので、そろそろ世界樹を迷宮内で育てる必要もあります。

 伊達に、ハイエルフの族長様から『世界樹の苗』と『世界樹の種』を頂いていませんからね。

 これは……と、あまり長話もなんですから、それは置いておくとしまして。


「んん……んぁ……ああ、生きているのか」

「ここは一体……と、君は如月弥生か……まさか、我々を助けてくれたのか?」


 ゆっくりと体を起こしつつ、私をみて話しかけてきましたので、私はにっこりとほほ笑みます。


「当然です。私は日本国陸上自衛隊第1空挺団魔導編隊の団員です。自衛隊員は、自国民の安全を守るのが任務ですから。と、ちょっと待っててくださいね、今、奥にあるダンジョンコアも破壊しますから」

「ダンジョンコアがあるだと……ち、ちょっと待て、我々は迷宮管理地区別委員会と山梨県知事の要請で、ダンジョン内部の調査とダンジョンコアの回収を命じられている」

「この場合の調査権限は我々に有るはずだ」

「はぁ……あのですね、そんな条例もなにもありませんよ? そもそも迷宮が発見された時点で、各都道府県知事は速やかに防衛省へ報告するという義務があるのをご存じですか? あなたたち迷宮管理特別委員会が最後までごねまくっていた、『災害対策基本法追加条項』にあるのはご存じですよね?」


 これ、意外と知られていないんですよねぇ。

 新宿大空洞の発生後、新たに『災害対策基本法』に追加された条項で、『自然発生した迷宮は自然災害として扱い、発見後は速やかに当該市町村及び関係各省に報告する』というものでして。

 迷宮管理特別委員会は、これを必死に否定していたのですよ。 

 だって、『報告=私が出動してぶっ壊す』というルートが決定していますから。

 という事で、後ろで何か叫んでいますが知った事ではないのでとっととダンジョンコアは破壊した後、私のアイテムボックスへ収納。


「ああ……そ、それは私達に返してくれるのだろうね?」

「このダンジョンコアの正当な所持者が貴方達だという証拠があれば。そうでない場合、これは国が管理する事になっていますので。では、帰りましょうか?」


 さぁ、とっとと帰って逸見1尉にも報告です。

 無事にダンジョンコアを破壊したので、まもなくこの鳴沢氷穴はただの自然洞へと戻ります。

 ただ、外で徘徊している魔物がどうなるかは不明。

 ダンジョンの外で発生したとすると、それはまた別の存在ですから。

 そして迷宮管理特別委員会の五ノ井委員長、覚悟してくださいよぉ。

 迷宮に突入するシーンからすべて、マジックアイを通じて記録してありますからねぇ。

 天然記念物内部での無許可調査、安全を確認する前に立ち入り禁止区域に侵入し調査員二人の命を危険に晒した事。

 全て纏めて、報告してあげますよぉ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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この場合、業務上過失傷害になるのか、危険性を告知せずに突入させたことが殺人未遂になるのか? 暗黒戦士(笑) たしかに、イメージが悪くなりそう。 とはいえ、今回は“目撃者”はいないのです。 バレなけれ…
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