Keep On Movin’(希少種? むしろ絶滅種ですよ)
第二部、この101話よりスタートです!!
春。
与那国駐屯地での任務を終えた私は、無事に昇進が決定。
今年の春より晴れて2曹に昇進しました。
如月2曹っていう呼び方には、すぐには慣れませんけれどね。
同じ第1空挺団魔導編隊の隊員からは揶揄われる事もありますが、まあ、階級社会なのでもれなくその場で腕立て伏せですよ。
もっとも、今のうちの隊員にとっては腕立て伏せ程度はご褒美のようなものですからね。
「それで、昇進してもやる事は一緒ですか……はぁ」
「まあ、それが仕事ですからね。異世界からの侵攻も終わり魔族の脅威がなくなった今、日本の第1空挺団魔導編隊に対しての国家レベルでの招集はそうそう発生しませんわ」
「小笠原1尉、その発言は死亡フラグです。出来るならそのフラグは発生して欲しい所です」
「そういって、仕事をさぼる気ですね。まあ、国内の迷宮の事もありますので、魔導編隊の外国への派遣はないと思いますよ」
はい、そうですよね、とほほ。
あれから、国際迷宮管理機関・日本支部がより活発に活動を始めました。
ええ、元目迷宮管理特別委員会と異邦人対策委員会の面々を引き抜いて、今までのノウハウをもとに大規模な迷宮管理マニュアルを作成したのですよ。
その結果、国内の探索者組合に登録できるのは日本国籍を持つ18歳以上の男女という事で決定。
ただし、『随行探索者制度』というものが日本限定で行われまして。
この随行探索者というのは『元・自衛隊員』『自衛隊予備役』が試験を受け、それに合格する事で『非常勤の特別職国家公務員』となるそうです。
日本に法律の関係で、一般人が銃器を取り扱うことは禁止されています。
この辺りは銃刀法により定められてたいるのですが、この『随行探索者』および発砲許可証を持つ方で『猟友会』に所属している場合は、迷宮内部での発砲許可が認められています。
この辺りは法整備が何とか間に合ったらしく、いまや猫も杓子も……もとい、18歳になった男女はこぞって探索者組合に登録しているそうです。
まあ、随行探索者に動向を求める為には必要なことですし、何よりも経験を積む事が大切だとか。モノリスに記された天性覚醒には本人の努力が必要なのですけれど、今は雰囲気を知るために……とかなんとか。
それに、この春から何故か自衛隊に志願する若者が増えたとかで、防衛相が大変な事になっているそうで。
そもそも迷宮内部での発砲許可を得る為の入隊とわかっていますけれど、入ってすぐ除隊では随行探索者の許可は得る事が出来ません。ですが、『予備自衛官補』となる事が出来れば、すぐにでも単独で迷宮内部に入る事は出来ます。
このあたりのルールが複雑でして、そもそも予備自衛官補の迷宮内銃器所持については厳しいルールが課せられています。
まあ、そのうち後方の方が説明してくれるでしょうから、私からはこの程度で。
「あの、私達事務員も迷宮に入るには探索者登録が必要なのでしょうか?」
うちの事務員の一人が手を挙げて質問。
うんうん、いい質問ですね。
「あなたたち自衛隊の事務員(防衛事務官)は公務員ですよね。という事は登録は必要です。ただし、防衛省職員ですので、『随行探索者試験』を受ける事で迷宮内での発砲許可は下ります。銃器その他については個人購入、のち迷宮外にある探索者組合にある専用ロッカー室にて厳重に管理しなくてはなりません。これは『常勤特別職国家公務員』である皆さんの権利ですから」
「ちなみにですが、猟友会の方も現役自衛官の方も、申請するだけで『迷宮内発砲許可証』は発行されますよ。ほら、私も持っていますから」
アイテムボックスから、私のライセンスカードを取り出して提示します。
見よ、このSランク探索者証を。
これがあれば、海外の迷宮でも私の進撃を阻むものは存在しません。
ちなみに猟友会・自衛隊予備役・元自衛官は『Cランク探索者証』、現役自衛官は『Bランク探索者証』を所持しています。
Aランク探索者証は自衛隊の、それも『迷宮探索徽章』という新たな徽章を持つものに与えられているもので、迷宮内部での権限が大きくなります。え、私ですか? 当然持っていますよ。
第1空挺団の一部の方と、魔導編隊全員はこれを所持しています。
なお、一般登録者は『Eランク探索者証』が発行され、迷宮内部での調査実績により『Dランク探索者証』が発行されるとか。でも、それより上は銃器の取り扱いができないと駄目でして。
刀剣類も『Cランク探索者証』を所持していなくてはならないのです。
え、それじゃあ一般登録者はどうやって戦うのかって?
見学枠ですよ、見学枠。
もしくは素手および刃のついていない武具での攻撃のみ許可されていますので、警棒とかこん棒とかヒノキの棒とか、そんな感じのものを装備し、革製のジャケットやヘルメットを被っての調査を行っているそうですよ。
私も何度か見たことがありますが、第一層で粘液状モンスター相手に必死に殴っている姿を見ると、なんというか……手伝ってあげたくなりますよ。
横殴り禁止なので手伝いませんけれど。
「……ああっ、またこいつかぁぁぁ。これで何度目の申請よぉぉぉ」
「こいつ……ということは、またあの『迷惑系YouTuber』ですか? 今度はなんですか?」
「【迷宮内部で魔術師育成チャレンジ】ですよ? そのために私に迷宮に来て魔術師育成講習をしろって……はい、没ぅぅぅぅ」
――ダン
不許可のハンコを押して、特別送還の箱に入れておきます。
あとは時間の方が処理してくれるので。
ほんと、迷宮が一般開放されてから、こういった事務仕事が増えましたよ。
おかげて、まだ国内の迷宮は三つしか踏破できていません。
もっとも、迷宮核は破壊していませんよ、現時点での迷宮外部への危険度が青表示なので破壊許可は下りないのです。
とっととぶっ壊してしまいたいのですが。
「あ、そういえば如月2曹、苫小牧の特殊魔術師の話って聞いてますか?」
「特殊魔術師……ってなんじゃらほい?」
その話は聞いたことがありませんねぇ。
「最近噂になっている女子高生ですよ。名前は確か、南雲……なんとかさんで、高校生の迷宮探索部所属だそうですが、天性覚醒に成功して魔術が使えるようになったそうですよ」
「うわ、それは初耳ですよ……それって国家登録が必要じゃないですか」
現在、国内で魔術覚醒したものは日本政府に登録し、【国選魔術師】という証明を発行してもらわなくてはなりません。これ貸せない状態での魔術行使は違法として判断されるのですよ。
あ、私は国選魔術師ではなく異邦人証明証が発行されているのでオッケーです。
「今の時点で申請はされているそうですが、その、魔法の分野が特殊すぎるというかなんというか」
「ふぅん、一織の魔法使い見習いってところ?」
「いえ、修復師っていうそうですよ」
――ガタッ
その名前に、私は思わず立ち上がってしまいました。
ええ、異世界アルムフレイアでも、ただ一人のみ存在した『神技』と呼ばれる魔術行使者。
それが修復師です。
具体的に申しますと、『魔力で何でも直すひと』でして、それはもう、破れたハンカチから伝承クラスのマジックアイテムまで、いかなるものも直します。
この修復という分野が実にあやふやでして、確か死者すら修復出来るのですよ。
それこそ、燃えカスの中の骨ひとかけらからも修復可能でして、神の摂理を越えた超越者という認識でいいと思います。
「うっはぁ……それは参りましたよ」
「如月2曹、それはどういうことですか?」
「はっ、具体的にご説明しますと……」
ということで、先程の説明をもう少しかいつまんで事務員たちにも話してみました。
その結果としては、事務員の皆さんは首をかしげていますが小笠原1尉は困った顔になっています。
そりゃあ、そういう反応でしょう。
「あの、ちなみに皆さんはなんで首をかしげているの?」
「だって、YouTubeの配信では、彼女が直せるのはコーヒーカップ一つ程度で、大皿は直せないっていうことでしたから」
「でも、完璧に修復しているのってすごいですよね」
「でも、ひび割れたスマホの画面は直せないんっだて」
「……あ~、魔力回路が不安定なのか。後、体内保有魔力が著しくな足りないとか、そんな感じかぁ。小笠原1尉、その南雲なんとかさんは要監視対象です?」
そう報告すると、小笠原1尉は早速書類の準備を開始。
ぶっちゃけますと、国家レベルでの保護対象になる可能性があります。
去年までならいざ知らず、今は迷宮に自由に入る事が出来るのですから、この後の彼女の行動によっては、修復師としての完全覚醒もありえますからね。
私が使っている錬金術の修復術式とは、桁が一つも二つも違うのですよ。
それにしても、また面倒な事になりそうですよ……。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。





