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雷帝のメイド  作者: なこはる
二章-アルフレイド家-
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エンビィ会話講座

「おおっと!? 悪いな! 生きてるか?」

「……お構いなく」


 ライコウの一撃を食らってよくもまあ無事でいるものだ。ナナキと衝突すれば彼はすぐにその身体を綺麗に回してみせて吹き飛ぶナナキの後ろに回って勢いを止めてくれた。なかなかに紳士的な青年だった。咄嗟に魔法で庇ったのだろう。


 けれどそれでどうにかなる程度の威力ではない。恐らく防御の系統がずば抜けて得意なのだろう。


「やるなら空だろライコウ」

「やかましいわッ‼ 貴様が呼び捨てるなッ‼」


 お礼を言う間もなく二人は空へと上がっていた。これはナナキにとって好都合。激しい戦いに周囲の人間たちは二人を目で追っている。ナナキのことなど誰も見ていない。すぐにこの場を離脱する。気配を殺して歩く。目立ちたくなければここで急いではいけないのだ。


 ナナキが走り出すのは帝都の民たちが危険性に気付き非難を始めてからだ。ライコウの口ぶりからしてあの青年は何度かこの帝都を襲撃しているのだろう。だからと言って警報が鳴っているのに避難をしないのはどうかと思うけれど。


 ともあれそそくさと退散。一般通行ナナキ。


「そこの可愛いお嬢さん、一緒にお茶でもどう?」


 やや、これは大変だ。さすがはナナキと言ったところか、お茶のお誘いを受けてしまった。そうだね友よ。一先ずはこの場を去ろう。もちろん、魔法を使ってだ。ここで彼女とやり合うつもりはないからね。あのビルで良いだろうか。


「誤魔化せませんでしたか」

「無理無理。他の三人ならともかく、私はね」


 即座にビルの屋上に移動した。雷を纏っての移動、これでナナキの存在は知れたことだろう。しばらくして追いついてきたのは先ほどのお誘いを頂いたレディ、炎帝エンビィ。ナナキの心の姉であり、少し前に剣を合わせた相手でもある。


「元気そうで安心しました」

「おかげ様でまだ本調子じゃないけどね。顔が見れて嬉しいよ」

「私もです、エンビィ」

「ただまあ、一応目的だけは聞かせてもらおうかな。いくら可愛い妹でも、そこはね」


 敵同士であることはわかっているけれど、ナナキはこの関係を肯定した。だから今はその気高い誇りを前にしても笑っていられる。


「こないだの可愛いメイド服じゃないね。帝都には何をしに?」

「治安が悪くなっていると聞いたので様子を見に来ました」

「ああ、レオンのことか。まあ、次の五帝候補だよ。一応ね」

「ライコウには賊と呼ばれていたようですが」

「残念、そこまでは話せないよナナキ」


 当然と言えば当然だ。立場的もある。そして何より――――


「離れろエンビィッ‼ また一人で無茶をしおってッ‼」

「よりによってシルヴァの居ない時にッ……!」


 武帝と天帝の到着だ。


「お久しぶりです。ライコウ、サリア」

「ぬああああああああッ‼」


 問答無用であった。太すぎる剛腕がナナキへと迫る。二メートル三十センチの長身から叩きだされる一撃の破壊力は誰でも容易に想像がつくだろう。それに魔法と神の力を足せば武帝ライコウの力が再現できると思ってくれて構わない。


 ただ、ライコウがそうであるように。ナナキもまた天才なのである。


「戦うつもりはありません。ライコウ」


 証明としてその一撃を片腕で止めた。魔力の総量に互いが従える神の力、そして才能。全てがナナキに劣るライコウがこのナナキに単騎で挑むなど無謀。お母様の娘であるこのナナキが、それほど脆弱に見えたのだろうか。だとすれば耐えがたい屈辱となる。


「何が戦うつもりはないだ! こうして帝都に――――」

「――――戦わないと言っている。下がれライコウ」


 天上にも格差が在る、それを知れ。


「…………なんというッ」


 ナナキの意志は見せた。後は貫けば良い。五帝と称されるその才能であれば見えるだろうライコウ。この魔力に怯まずに向かってくるのであればすぐさま逃げよう。ナナキは本当に帝都で戦うつもりはない。いつか呪いとして追ってきたその時にお相手しよう。


「ぬう……ッ!?」

「ナナキの魔力が前よりも……!?」

「いや成長期だしね。むしろこれから伸びていくでしょ。忘れてるみたいだけどあの子まだ十六歳だからね」


 そうだとも。ナナキはまだ十六歳。これから魔力はまだまだ増えるし身長も伸びる。そして胸だって大きくなるだろう。そうすればナナキがエンビィから教わった言葉遣いを乱すこともなくなる。大変に良いことじゃないか。ぜひそうなるべきだ。


「……とにかくさ、戦闘は止めようよサリア、ライコウ。三人でナナキに勝てると思うか?」

「臆したのかエンビィッ‼」

「一人で挑んでコテンパンにやられたからね。私は本気のナナキを知ってるんだよ」

「帝都でのあれが本気ではないと……?」

「あの魔法は帝都を消し飛ばせるくらいの威力があったね。ハイエント=ヘリオスが復活に一週間も掛かる程の威力だ。あれを使われたらお手上げだよ」


 少しだけ話を盛っている。確かに帝都を吹き飛ばせるかもしれないが、これだけの広大な範囲となるとすぐに放つことはできない。これは話し合いの機会をくれるということで良いのだろうか、エンビィ。だとすればその優しさに感謝を。


 エンビィの話を聞いたライコウとサリアは顔を見合わせ、やがてその手を降ろしてくれた。


「戦闘の意志は一切ありません。帝都の様子を見に来ただけです。こっそり見ていくつもりだったのですが、エンビィに見つかってしまいました」

「帝都を捨てた貴女がどうして帝都の様子を気にするの」

「少し気になることがあるのです。サリア」

「それは――――」


 これは……ああ、さっきの彼か。


「逃げてんじゃねえよライコウッ‼ 敵前逃亡たあ武帝の名が――――」

「少し大人しくしててくれ」

「――――なぐぇッ!?」


 先ほどの青年、確かレオンと言っただろうか。ライコウを追ってやってきた彼を即座に捕まえて拘束するエンビィ。ライコウのスピードではなかなか捉えることができなかった彼をエンビィはすぐに拘束してしまった。踏むのはやりすぎだと思うけれど。


「痛たた……あれ、さっきのマントの……?」

「話がややこしくなるから寝ていてくれないかレオン」

「酷いこと言うなよエンビィの姐さん。敵だって言うんなら俺に任せてくれよ。すぐにそのマント剥がしてやるぜ」

「足で踏まれて拘束されてる癖にすごい自信ね。良いわ、じゃあそれは敵よ。早く捕まえなさい」

「了解ですサリアの姉御」


 五帝候補レオン。見たところ神を連れていないみたいだけれど、それでこのナナキと渡り合うつもりなのだろうか。確かに筋は良い、けれどまだまだ課題も多いだろう。このナナキに挑むには早すぎる。


「――――どこ見てんだよってなぁッ!? なんで避けられて……ッ」


 正確には見る必要がない。なるほど、本気での速度はなかなかに速い。今までのはライコウに合わせていたのか。となるとやはり稽古だったのだろうか。けれどその程度で浮かれていては五帝にはなれない。上には上がいるものだ。


「この……ッ!」


 ナナキも試してあげようと思う。これより一分以内にこのナナキに触れれるようであれば五帝になれる可能性が僅かにあるかもしれない。ハンデも付けよう。ナナキは雷を一切使わない。魔法もだ。人間に許された活動の限界でお相手する。


「くっ! あと……一歩が届かねえッ!」


 残り三十秒。やはり無駄かもしれない。ささっと終わらせてしまうか。雷と魔法は使わない、その約束を踏まえた上で拘束してしまおう。レオンの繰り出してくる全ての攻撃を躱して腕を取る。後は投げ飛ばせば終わりだ。


「せめて一矢……ッ!」


 最後の悪あがきは自爆と言ってもいいような魔法だった。とても趣味の悪い魔法を知っているね。迷わずに使ってくるところもまた最悪だ。決死の覚悟で使ったところ申し訳ないのだけど、ナナキは無傷です。ああ、でも巻いていたシーツだけは焼けて千切れてしまったかな。


「……うおお、すっげえ美人……でもってすげえまな板だ」

「このクソ野郎ぶっ殺してやる」

「こらナナキッ! 口調ッ!」

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