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雷帝のメイド  作者: なこはる
七章-雷帝ナナキ-
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ラブリーでメイドなモンスター

「バ、バカな……今の光はまさか……」

「――――ら、雷帝ナナキ……!?」

「どうして奴が帝都にいる!? 雷帝ナナキは帝都を追われた筈ではなかったのかッ!?」

「それな!」

「今ので空は全滅だ! 天帝の魔法が降ってくるぞ!」

「てッ、撤退するべきだッ! 例え神がついていてもアレの速度に我々は反応できないッ!」

「しかし空を抑えられた今、どうやって撤退すればいい!? 天帝と雷帝のいる空を突破しろとでも言うつもりかッ!?」

「それな!」

「さっきから誰だ! 軽々しい口を利いている奴――――は?」


 あ、それナナキナナキ。

 

「な、だッ――――て、敵ッ!?」


 応とも敵だ。そしてナナキだ。ようやく気付いてもらえたようでとても嬉しい。だけど残念ながら敵同士だ。不意打ちのような形になってしまって申し訳ないが、覚悟の程はよろしいか。


「い、いつの間にッ!?」


 驚愕する一同にメイドとしてお返事をするのなら、君たちが空を見上げながら呆けている時に、と返すのが正しいメイドとしての在り方だろう。


 けれど生憎と今のナナキは雷帝ナナキ、返事をする義務もなければ慈悲も容赦も持ち合わせが無い。他を当たってくれたまえ。もしもメイド服が気になるのなら、悪いことは言わない、諦めろ。


 これはナナキのソウルユニフォーム、例え今一度雷帝の名を名乗ることになったとしても、ナナキにはこれを着用する義務が在る。


「ち、ちくしょうッ! 武装顕――――」


 まず一人、無防備なその首を焼き切った。


 戦闘が始まるまでは待った。それはもう、十分過ぎる程に。そして、今の一言で戦闘が始まったのだから当然ナナキは動く。当たり前だ、ナナキと彼らは敵同士なのだから。殺し合うために会しているのだから。


 だというのに、どうして彼らは固まっているのだろう。神を連れ、意気揚々と乗り込んできたのは貴方たちの方だろう。それなのにこの体たらくとは、余程に帝国を侮っているらしい。或いは、五帝と同じようにして、神さえ引き連れていれば帝都攻略は容易いとでも思っていたのか。


 さて、その慢心に果たしてナナキの帝都不在が関わっているかまでは知ったことではないが、あまりに愚かな彼らに一言を添えるのならば、やはりこの言葉が良いと思うのだ。


「――――五帝を舐めるなよ、虫共」


 例え今この場にナナキが居合わせなかったとしても、シルヴァたちならばこの程度の危機は乗り越えたことだろう。慢心とは強者が持ち合わせる業。間違っても虫が持つものではない。


 もしも彼らが誇りを持った勇敢な騎士であったなら、名誉在る死に方をくれてやっても良かっただろう。けれど、この状況になって尚、未だ剣を抜くことも出来ずにいる彼らにそれが相応しいとは思えない。高潔もまた、虫には必要がないものだから。


 それなら、せいぜい無様に死んでいけ。


「――――――――」


 両の手に持つ雷の剣を生み出して、ただそれを振る。それだけで、声を上げることすらも出来ずに全てが焼け死んだ。残ったのは器を失った哀れな神々御一行。やあやあ神様ご一同、ご機嫌の程はいかがかな。ナナキと友のようにお互いを理解し合うことは適っただろうか、ぜひともお聞かせ願いたいところだ。


「ま、無理でしょうけどね」


 一斉に向かってくる神々に雷の剣を投げ付けながら吐き捨てた。先頭の神に雷の剣が突き刺さると共に炸裂する雷でおよそ半数の神が弾け飛び、残った半数を刹那で切り伏せた。いやはや、ナナキが特別だということは重々に承知している上で言わせてもらうのだけど、この程度でよくもまあナナキの居る帝都に攻め込んできたものだ。


「……時間稼ぎ、か」


 傀儡となっている虫共がナナキの存在を知らないのは、まあ良いだろう。けれど、彼らが引き連れている神々はそれを知らない筈が無い。ともすればやはり、これはレオンと三大神が手を組むための時間稼ぎと考えるのが妥当だろう。ナナキ賢い。


 さてさて、では敵の目的が時間稼ぎであると仮定したとして、ナナキはどう動くべきだろうか。レオンと三大神を探し出して目論みを阻止する? それとも主たちのもとへと戻って護衛に専念する? 残念、どちらもノーである。


 正解はこのまま相手の時間稼ぎに乗ってやる、だ。はい、ドンドンパフパフー。


 そもそも、どうしてこのナナキが後手に回らなければいけない。困っているのは奴らの方で、ナナキに勝てないから神とレオンは手を組もうとしているわけだ。女々しいことこの上ないが、まあそれは良いだろう。気に食わないものを気に食わないと言えるだけの気概は大変好ましい、ぜひとも大事にして頂きたいと思う。


 ただやはり、勘違いは止めて頂きたいと、ナナキは思うのだ。


 時間稼ぎなんてものは不要。好きなだけ時間を掛けて、万全の準備を整えるとよろしい。掛かってくるのはお前たちの方だ、ナナキじゃない。それをしっかりと弁えた上で、存分に掛かってくると良い。ナナキはそれを正面から食い破ろう。


 ということで、引き続き雷帝としてのお仕事をこなしていくとしよう。


「――――ッ! 何奴!」

「見ればわかるでしょう」


 すごい奴!


 少しだけ強そうな気配に誘われてやってきてみれば、なるほど、ナナキの接近に気付くくらいには上等らしい。連れている神も先程の雑魚と比べれば幾分かはマシのようだ。もしかすると、それなりの上役なのでは。傷だらけのその風貌はそれだけで歴戦を思わせるし、何より距離の取り方や構え方でわかる腕前には少しばかり称賛を送りたい気分だ。


「雷帝ナナキ、か」

「ええ」


 如何にも、ナナキである。そういうそちらはどこのどなたなのだろうか。それなりの身分だとお見受けするのだけれど、聞いたら教えてくれるだろうか。


「化け物と聞いていたが……妙な格好をしているものだ」

「可愛らしい化け物はお嫌いですか、ミスター」

「可愛らしいなどとはその馬鹿げた魔力をしまってから言うことだ、化け物」


 まずは一つ、メイド服の裾を摘まんで優雅にご挨拶をさせて頂いた。けれど残念ながらご老人にはナナキの美しさは理解できない様子。まったく、人のことを化け物化け物と失礼な御方である。事実、アルフレイド家のメイド服に身を包むナナキは紛れもなく美しく、可愛らしいと言うのに。ラブリーナナキ。


「生憎と名乗れはしないが……お相手願おうか!」

「結構、この雷帝ナナキがお相手致しましょう」


 欲を言えば、今後のことも考えてどこの国の人間なのかくらいは聞いておきたいが、まあれそれはシルヴァやエンビィたちが今頃聞き出しているだろう。憎き五帝の頭目と大好きな心の姉を信じて、今はこのご老人との戦いに集中するとしよう。


「お前たちは逃げよ」

「し、しかし――――」

「足手まといだッ! 早く行けッ!」

「っ! はっ!」


 無論、殺すこともできた。けれど今は見逃してやることにした。空をサリアが抑えているこの状況で、果たして彼らはどこへ逃げるのか。その疑問はきっと、彼らの中にもある筈だから。せいぜい考えると良い。その命が終わるまで。


「行くぞ化け物ッ! お前はこの命を使って止めるッッ!!」


 覇気のある、良い声だった。


 踏み込みも上々、魔力の使い方にも良い工夫が見られる。その手に持つ巨大な剣は恐らくは武装顕現だろう。実力も在り、このナナキを前にして逃げ出さずに戦いを取る誇りも持ち合わせている。惜しいのは、覚悟の在り方を間違えていることだろう。


「オオオォ――――ッッ!!」


 誇りの一撃と、そう言っても差し支え無いくらいに研ぎ澄まされた一閃だった。ならばナナキはこれに、やはり誇りを以て返すべきだろう。ナナキの誇り、それはお母様より頂いたこの強さに他ならない。誇り高き老騎士よ、貴方にナナキの超常をお見せしよう。


 振り抜かれる老騎士の剣に合わせて、蒼雷で作り上げた大剣を以て返す。


「がッ……」

「命懸け、見事でありました」


 武装顕現の剣も、彼の身体も、引き連れる神すらもを断ち切った後に賛辞を送ることにした。もう聞こえているかもわからないけれど、名前を知ることが適わない以上、ナナキがしてやれることはこれくらいだろう。


 ただ、やはり惜しいと思うのだ。


 命懸け、それは結構。命を賭して掛かってくるというのなら、存分にお相手仕る所存だ。けれど、命懸けでナナキを倒そうとは片腹痛いというものだ。ナナキを倒すのなら、このナナキを相手取って生き残る気で掛かってこい。


「――――そうでしょう、アルマギア=エルダーン」

「戦闘ヲ開始スル」

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