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迷いの森と少年R ①

 第9話です。

サブタイトル変わりました。

お話の構成上今回から第二部となります。


 あまりキチンと分けていく意識がなかったん

ですがいきなり話が飛んじゃうと混乱を招くと思いましたので。でも第○話は連番でいきます。こっちは筆者の混乱防止です。


 舞台は時をさかのぼること5年前。

 主人公ロイ・マクエルが11歳の時の、在る出会いから物語はスタートします。


それでは第二部、お楽しみ下さい。

 

         第9話


       闇夜と悪魔と老人




「いやいやいや〜、ほっほっほ、参った参った。邪魔してすまんの〜少年。暗くて道に迷ってしまったようだ。・・・・・・・ところでずいぶんと急いどるようだがこんな夜更けに何処かに用事かな?子供は寝る時間なんじゃがのう。あと、ずいぶん濁った目をしておるの」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 闇夜やみよの森を進んでいたオレの目の前に不意に現れた奇怪な老人。少しの抜けた声でそんな戯言ざれごとを口にするとオレたちの前(・・・・・・・)に立ち塞がるように足を止める。・・・・まるで超えられない山であるかのように屹立きつりつしている。

 気配を全く感じさせずに突然現れたのには少し驚いたが特に問題はない。障害になるなら排除するだけダ。



 障害になるのなら叩き潰す、今夜は待ちに待った特別な日なんだ。月食の日。この暗闇の中でアイツらは、何も見えぬままに追い詰められ、闇に怯え、恐怖に戸惑い、罵声を互いに浴びせ合い、理由も思いつかないまま蹂躪じゅうりんされ、何かに助けを懇願するも無残に殺されていく・・・。


「ククッ」


 自然と笑いがレる。口元がゆが厶。今日はハウンズの家の人間を1人残らずこの世から消し去る日。幾度も夢に描き続けた吉日。

 命を絶った後は全員の肉片を全て狼の餌にする。飢えた狼を選りすぐり、50匹連れて来テいる。文字通り根絶やしにシテヤレル日ナンダ。


「クククククククククククククククククククククククククククククク・・・」


 笑イが止まらない。長い、長い1年だった。だが片時もこの日がくることを諦めたことはない。ヤっとだ。やっとこの時がきたのだ。家の人間がほとんど揃う晩餐会の月食の夜。自己研鑽も限界まで積み上げた。


 身体中を渦巻く黒い塊がオレをき立てる。死ぬのはオマエか?ヤツラか?と。絶望も、哀しみも、悪夢も、今はもう粉々に壊れてしまった情景すらも、今日、スベテをオワラせる為にあったのだとしたら報われる。・・・・・・・どこかで見ているのかな?大丈夫さ。僕が、ゴミクズのロイ(・・・・・・・)が、あの日の様ニ今夜を赤黒い夜に染め上げて魅せるカら。



「ぴゅい」



 軽い口笛で潜ませていた狼を仕向けた。暗闇から一切音も声もあげずに狼たちが老人に飛び掛かる。ただ者でない空気をまとっていたが今夜は月食。真っ暗闇での狼の奇襲にす術もないだろう。いい断末魔が欲しい。今夜の素晴らしい血祭りの狼煙になるのだから・・・。


 『ガッ』『グギッ』『ドズッ』『ボギン』・・・。


 断末魔ではなく。肉と骨を叩く音が10回程聞こえて静かになる。飛び掛かったのは俺の周囲にいた10匹のはずだ。

 ・・・甘く見たかな。あんなジジイがオレのように暗闇の狼に対抗できる訳がないって。


「ぴ」


 他の狼に控える指笛をだすと背負う木槍を右手に持ち替え呼吸を整える。気が充実し身体に血がめぐる。覚悟はいいなジジイ。オレの一撃で真っ二つにしてやる!


「ふっ!」


 烈帛れっぱくの気迫とともにジジイまでの五メートルを一足で詰めると槍を横に薙ぎ払う。


「ガッ!ギィィン!」


 槍が上に浮き上がる。下から跳ね上げられた。無防備な脇に蹴りが飛んでくる。身体を回転させて辛うじてかわした、凄い圧だ。丸太が突き出されてきたかのようだ。そのまま後ろに飛んで身構える、全身から滝のように汗が吹き出す。


 改めて老人を見た、暗闇であってもオレは夜目が効く。木の棒? のようなモノをだらりと持っている。いや、あれはその辺にある枝を拾って使っているに過ぎない、形もいびつで太さも一定じゃない。呼吸も先程と変わっていない、狼たちが周りに倒れている。


 【棒術】という奴だ。昔槍を習ったときに先生が使っていた、鮮やかな手並みの使い手で武芸百般などとうそぶいて笑っていた。特に習い始めの力量差があった幼い時分はそこら辺の木の枝で僕の槍を軽くいなされたものだった。お前如きジジイが先生の猿マネだと。身の程を知れ。


「次は確実に命をとるぞ、ジジイ」


「カッカッ、笑わせよる。しつけられとる犬の分際で」


 頭にカッと血がのぼった。


『ジャ!』


 足元の草を老人に向けて槍で薙ぎ飛ばすと地面スレスレに穂先合わせ、草葉で見えない下段からの槍の連続突き。老人が飛ぶ、左肩に衝撃。木の枝が叩きつけられた。意識はある、腕も動く。次の瞬間みぞおちに杭を打ち込まれたような衝撃、老人の蹴りが腹に突き刺さる。膝を付きそうになるが咄嗟とっさに転がり間をとる。左側頭部に焦げる匂い。回し蹴りをかわしていた。


 この老人、体術も半端ではない。先生と同じ?いや、あしらわれたのはもう1年以上も前の話だ。今の俺は森の狼たちを従え、巨大熊や森林虎と対しても一合で首を飛ばせる。



「つまらぬ。全くつまらぬな。それがお前の学んだ武芸か? 選んだ生き方か? まるで知恵のない狂犬じゃな。リリアーヌも無駄な死に方をしたものじゃな狂犬を生かす為に犬死とは」



 身体中の血が一瞬で沸騰した! 今なんと言っタ? あの人を。先生を。無駄死むだじに? 犬死いぬじに?。

 刹那、腰にいていた剣を抜き放っていた。先生から託された剣。汚い血で汚したくはなかった。だが目の前のコイツダケはイカシテオケナイ。


「無鳴剣か。斬られた相手が何もわからぬまま声もたてずに絶命する。狂犬には過ぎた得物じゃの」


 静かに息を整える。挑発にのせられるな。純粋に気力をみなぎらせろ。僅かなすきであっても見逃すな。先生の声が聞こえる。見ていて下さい、この1年で練り上げた無鳴剣の絶技を!



 一切の音もなく老人に肉迫した。腕にまとわりつく蛇を払うように右腕を振るうと老人の持つ枝が粉々(こなごな)に弾け飛んだ。


「ほほ」


 老人の喜声。惑わされるな。そのまま剣の重さに任せ剣先を捻り上げて袈裟懸けに振り下ろす。両断した。いや違う、大木が幹の部分から斜めにズレて倒れた。今の一刀を躱したのか? 先生直伝の一の太刀を? 横からの衝撃が身体を貫いた。飛んで間を開けた。どこも痛めてはいない。


「!?・・・がはっ」


「息がまともにできんじゃろう? 発勁という技じゃ、心の臓辺りに叩き込んだ。震えて息ができん。これで気も高められん。終わりじゃな」


 両手をついてしゃがみ込む。息が出来ない。老人が剣に手を伸ばす。動け、気を放て、剣を振れ。先生の魂を奪わせていいのか! やっぱりクズロイはどこまで行ってもゴミクズのままなのか! 違う! 死んでいないのだ動けないはずがあるか!


 全身がスッと軽くなった。なんだ動くじゃないか。剣を、先生を、ココで失くすわけにはいかない。驚くほどに剣が動く。まるで自分の意思であるかのように僕を導く。まだ、闘える。


 真っ直ぐに立ち、幾度も斬りかかろうと試みたが隙がない。時間は掛けられない。老人の技で息はほとんど出来ないままだからだ。


 『ト、トン』


 先に老人が動いた。左! 身体を反転させて左側を剣で払った。切った。いや、浅い。服だけだ。背後にいる。死角から拳がくる、右にかがんで躱した。そのまま後ろの老人を蹴り上げる。いなされた。側転する形になり服を掴んだ!無鳴剣を老人の右腰に向ける。確実に捉えた。



「!!!」



 剣を握ったままの拳を捕まえて止めている。そんなマネ。できる訳がない。・・・いや、出来る。いたじゃないか。必殺の間合いからの必殺の一撃を止める技。リリアーヌ先生の技。


 止める度にいつも満面のドヤ顔をギリギリまで僕に近づけて、こう言うのだ「お前は弱い、未熟者」と。





「終わりかの。お前は弱い、ただの未熟者だ」





 ・・・・・老人の顔では何もときめかないよ。でも、何故か、涙が溢れて止まらなかった。





第二部の始まりはいかがでしたか?


キモヲタもラブコメもなにもないじゃないですか〜?コレジャナイ!ガチバトルいらない!

マジスイマセン。スキあらばラブコメを!とは思っておりますのでこれからもよろしくお願いします。

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