ロイ・マクエル受難の日々①
サブタイトル変わりました。いつも唐突な感じに
なってすいません。あとちなみにまだ過去編です。
過去編もロイの闇堕ち編と立ち直りヲタ爆誕編の二部制で別れる予定です。覚悟はいいですか?(笑)
第23話
「新たなる波乱」
「ククク・・・そうだ。これは当然の帰結。家族を皆殺しにした外道にふさわしい最後だ・・・」
眼が怪しく光る。さあ、始めよう。再びのうたゲボェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!
僕のみぞおちに靴の爪先が深々とめり込む。その殺人キックに僕はリリアーヌ先生の墓標の前から後ろに数メートルふっ飛ばされた。じ、じいちゃん。足より口!口!先ず声を掛けて。不意打ちはイカンて・・・。
でもこれ、キ、キクゥ・・・美少女のケリだったら何かに目覚めたかも。・・・・・・・・な、なんちゃって。勿論冗談ですよ?当たり前じゃないですか・・・。ゲフンゲフン。
「いつまで一人で手を合わせてるんじゃ?今日はお前ではなく、レイとリリがリリアーヌの墓前に花を手向けに来とるんじゃぞ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。
そうだった。レイ兄とマーガレッタ姉がリリアーヌ先生の墓前に花を手向ける為に家の丸太小屋に来てたんだ。そんでもってお墓まで案内して来てたんだった・・・・・。
何だか長い夢を見ていた気がする・・・・。
あの事件からもう・・・1年と1ヶ月。
もし、あの日、闇夜の晩に、じいちゃんが僕を止めに来ていなかったら・・・今頃家族を惨殺していたかもしれなかった。
じいちゃんと過ごしたこの1ヶ月間。小突かれながらハウンズ家の立ち位置みたいなものを教えて貰った。
弱かったのだ。僕も、兄姉も、父様も、ハウンズ家も、僅かの隙で全てを失うほどに。
じいちゃんなんかはきっと凄い武人なんだと思う。
でも一人の力で為せる事は小さくて、だから家族がそれぞれ自分の役割を果たす事で戦っていた。
僕だけが・・・きっと逃げていた。弱さを認められないまま。成長できない子供のままだったのだ。
「ありがとう。ロイ。ようやく墓前に手を合わせる事ができた」
「ここ、キレイな場所ね。森の中にこんなに花咲いてる広場があったのね。よく見つけたわね、えらいわ」
「え、あう、うん。探し、たんだ」
リリアーヌ先生の墓前に花を手向けたレイ兄とマーガレッタ姉は僕に向き直るとお礼とねぎらいの言葉を掛けてきた。
この花の咲き乱れる広場はこの森で一番美しい所だった。あの1年と1ヶ月前の森林虎との一騎打ちの後にこの広場を見つけて、此処に先生を埋葬したんだ。
「ただ、お前がさっさと家に帰って来てればもっと早く墓参りに来れたがな」
「勘違いしないでよね。あたし達にも相談してたらもっといい場所に埋葬出来ていたんだからね」
「・・・・・・・・・」
追加の一言要らないなぁ。まあ色々あったから昔ほど腹も立たないけどさ。改めて家の兄姉って僕に関しては辛辣というか厳しいというか甘くないんだよね。まだ11歳ですよ?言葉の暴力反対。ロイ・マクエルをもっと優しい言葉で包んでください。
「ところでお主たち、リリアーヌの供養の他に何か用件があったのではなかったかの?ワシでなくロイの方に」
じいちゃんが二人の兄妹の方を見て何かの話を促した。え?なに?僕に用事?レイ兄だと・・・まさか勉強のことか?この兄、頭オカCからな。昔、僕に学者になれるとか言って算数だが数学だかの偉い教授を招くとか僕に黙って家族会議してたんだよ。この人ナニイッテルノ?
何を見てそう思ったのか知らないけどその思考回路、半分くらいイッてると言ってもいい。兄姉の中である意味一番ヤバい、お近づきにはなりたく無い。兄だけど。
「そうだ。ロイ、お前家に帰ってこい」
「そうよ。あなた帰ってきなさい」
「いやだ」
会話、即☆終☆了。さあさあ二人とも用事それだけですか?なら済んだんだから早く帰ってください僕は忙しいんです。おっと!
じいちゃんからの殺人パンチを寸でのところで屈んで躱す。今の拳、唸りを上げてたよ。殺人パンチに殺人キック、ナントカライダーですか?もう異世界に帰って下さい。あっちの世界で悪の秘密結社と戦って下さい。
「お前は何もわかっとらんの〜。この一月、家族で協力して戦うことを教えたつもりじゃったがのう」
じいちゃんが頭を抱え、盛大な素振りで大袈裟に悩みだす。二人の兄姉もやれやれといった感じで首を振る。あれ?僕が悪いの?やっぱりすぐに拒否したのが駄目なのかな?もう少しこう、悩んで苦しんだ上で残念そうに断れば良かったかも。コミュニケーションは難しい。
「まあ、家に帰って来にくいのは分かるが今回の問題はお前じゃないと解決できないんだ。わかるな?ロイ。イチタスイチハニ。わかるな?」
「そういうこと。理由もなくあなたの汚い顔なんか見に来るわけないじゃない。少し考えたらどうなの」
ぐぅ辛辣。でも正論。確かに用事もなく理由もなく、こんなブサキモで半分狂ってたような弟に会いにくるわけがないよね。僕だったら完全に縁を切ってどこかの病院に無理やり入れちゃうレベルの家族だよ。そう考えると放置してくれてるんだからやさじい、ん?やざぐれ、いや、やましい・・・。いや〜、あの二人を見て優しいなんて思うの無理ッス。いつも本音で語り合う。それこそが理想の家族。嗚呼、家族愛って素晴らしい。by ロイ・マクエル
「理由はワシも詳しくは知らんのう。もうここでコヤツに教えてやったらどうじゃ?理由を知らんと行きにくいじゃろ?ひょっとしたら無理矢理病院に入れるつもりか!と思うかもしれん」
いや〜、流石はじいちゃん。僕の思ってることとぴったり同じだわ〜。家族共通の認識、僕病気。良かった。鈍器とか兇器じゃなくて。・・・ん?何かおかしいな。いつの間に危険物の話になったんだ?
「・・・それもそうですね、お祖父様。いいかロイ、」
「待って、レイ兄様。私から」
わざわざレイ兄様を押し留めて、マーガレッタ姉様がズイっと僕の前に出てくる。何だか身長が同じくらいになってる。野生の生活を過ごす内に(ほとんどの時間狩り)伸びたんだろうな。人とのコミュニケーションが必要ない分僕にはとても過ごしやすかった。
ん?マーガレッタ姉様の顔が赤い。熱でもあるのか?早く帰った方がいい。うん。それがいい。
「お、大きくな、なってるじゃない。それに身体つきもなんだか逞しくなって・・・・・」
「え?あ、う、うん。は、走ったり走ったりしてるから」
お、お姉様?至近距離で突然褒めないで下さい。返答に困ります。目も何だか潤んでますよ?ドキドキして言葉づかいが可怪しくなっちゃいます。
「ん、んんん!マーガレッタ。早く要件を」
「わ、わかってます!兄様。ロイ、ちょっと耳を貸して」
ちょっとだけドキマギしながら右耳をマーガレッタ姉様の方に傾ける。い、いで?いでデ、イデデデデデデデデデデデデデデデデデデ!!?
左の太ももをマーガレッタ姉様が全力でツネりあげている。もげるもげる!そこだけモゲちゃう〜〜。ギブ!ギブギブ!
「ア・ナ・タに、お見合いのお話が来てるのよ?良家の御令嬢で一人娘らしいのよ〜?もうハウンズ家では上へ下への大騒ぎよ?早く家に戻って事情聴取、いえ、知っていることを吐いて、ううん、教えて頂戴」
こ、怖ええ〜〜。それに痛ええ〜〜。なんで姉様が怒ってるの?そ、それにお見合いってなに?初耳だよそれ?事情聴取しても何も吐けません!僕は無実だ!それでも僕はやってない!
「ほっほっほっ。ロイに縁談話とはの〜。容姿端麗な他の兄妹に先んじて嫁取りか?11歳での嫁取りはハウンズ家の歴史でも最短かも知れぬのぅ〜」
「まだお見合いです! 婚儀が纏まるとは決まっておりません。お祖父様!」
「マーガレッタ! お祖父様に言葉が過ぎる」
僕へのイミフな威嚇がそのままじいちゃんに向かってしまったマーガレッタ姉が、レイ兄に窘められて少し表情がシュンとなる。
・・・・・・・・・でも可愛らしいとは1ミリも思わないね。
なぜならつねり上げている指は全く離れていないからです! むしろ窘められてからさらに力が増してキテる。もう少しでモゲます!もう待ったなしです!マジでモゲるよ5秒前 M M 5。M M 5。駄目だコリャ流行らないや。イダダダ。
「名前はなんと言うんじゃ? 儂も興味あるから聞いておきたいのう。ロイの知り合いのおなごかも知れんしの」
じいちゃん! 他人のことより今は孫!孫の太もも心配して!ほら、ツネり上げてる部分が紫色からどす黒く変色してるから!ここだけあの世に行きそうだから!
「ベルフローラ共和国の伯爵令嬢で名をスタンピ・バーバリー、当年とって16歳とのことですわ。お祖父様」
3人が一斉に僕の顔を見る。
僕はエレガントでナイスなスマイルで答えた。
「・・・・・・・・・・・・・・誰?それ?」
3人からの溜息が漏れた・・・・・・。
だってしょうがなく無い?知らないんだもん。
ツネり上げられた太ももを全力で捻り飛ばされ、僕は大空に向かって悲鳴をあげた・・・。
最後までお読み頂き有難う御座いました。
いや〜、久々のマクエル節。楽しく書けました。




