それぞれの戦い
前回のあらすじ
・ケートが馴染みまくってると思ったら消えた
・なにやら裏で良からぬことが起きている
「と、止まれ! それ以上進むなら、お前の仲間を……う、うわぁァ!?」
“なにかを喋っていたゴリラ”を、私はその辺の石をどけるくらいの勢いで斬り捨て、耳と目の意識を周囲へ尖らせる。
道中にあるものは全て無視でいい。
そんなことよりも、ケートを探さないと。
「――――『刹霞斬』、『返し幻月』。『朧花』」
飛び込みながら斬り抜け、左足を軸足に反転しながらの振り下ろし……さらに一瞬身を引いて相手の間合い崩し一閃。
今までにやったことのある動きが、すべて技として昇華されていることに驚きつつも、これ幸いと止まること無く技を繰り出していく。
てか、ケートのばか!
さっさと出てきてよ!
「止まれ、止まれェ!」
「うるさい! そっちこそ退いて!」
「な、なんだ、ぐァっ!?」
ゴリラの数が多すぎて、ケートの気配がまるで感知出来ない!
もういっそのこと、全部の家に突撃して、家宅捜索してしまおうか。
「『剛震脚』、『砲尖花』。……いや、そんなことをするよりも、斬ってしまった方が早いかな」
「な、なな……!」
「うん。斬ってしまおう」
目の前に立ち塞がったゴリラの腹を柄頭で叩き折り、たぶんここだと思った家のそばで短く息を吐く。
そして、周囲のゴリラすらも全て無視して、ただ静かに刀を抜き払った。
「……この動作は、まだ技になってないんだなー」
ぼやくように呟いて刀を鞘へと仕舞えば、目の前の家が上下に分かたれ、斜めにズレていく。
まあ技じゃなくても、この程度なら余裕なんだけどねー。
さっきも、閉じ込められた後に家を斬って出たわけだし。
「で、ケートは……あれ? いない?」
ここだと思ったんだけど、家の中はもぬけの空。
あれー?
じゃあ、さっき感じたケートの気配はなんだったんだろう?
「そ、それ以上暴れるなら、この女がどうなっても知らないぞ!」
「ああ、なるほど?」
ゴリラの声が聞こえ、振り向いてみれば……そこには木の杭に縛り付けられたケートが。
あー、正解だったのは正解だったんだねー。
ただ、感じ取ったのは“残り香”みたいなものだったってわけで。
ていうかさ……。
「ケートに何したの?」
沸騰し過ぎて、逆にクリアになった頭で、そんな分かりきったことを一応確認する。
そんな私を見て、話ができると“勘違い”したゴリラが、少しだけ余裕を取り戻したような仕草で口を開いた。
「少しばかり気絶してもらってるだけだ。お前が何もしなければ、我々もこれ以上の危害は加えない!」
「へー、そう。気絶させたんだねー?」
「そ、そうだ! 我々はお前達を殺したりする気は無く、」
そこまで言って、そのゴリラは光になって消えていく。
……またつまらぬものを斬ってしまった。
そっちに殺す気が無くても、こっちは殺す気しかないから。
そのまま流れるように、周囲で恐れおののくゴリラを一掃し、私はケートへと駆け寄る。
……よし、息はしてる。
ポーションで回復……はできないから、ケートが目を覚ますまでは、待つしかないか。
「ほっほっほ。部下達がここまでやられるとは、やはりあなたは、一筋縄ではいかぬようだ」
「村長さん? あー、そう、村長さんが主犯なんだねー」
「今さら気づいても遅いわ! お前ら、やってしまえ!」
「「「「おう!」」」」
村長さんの命に従うように、棍棒をもった沢山のゴリラが私達を取り囲む。
――数は数える気にすらならないくらい、か。
「はあ、めんど……」と小さくため息を吐いて、少しだけ腰を落とす。
ケートが起きない以上、この場からは動けない……けれど、動かないと勝てないほどの強敵でもない。
「かかってきなよ。全員、斬り捨ててあげるから」
「――ッ!?」
溜まりすぎた怒りを言葉に乗せてやれば、周囲を囲むゴリラは皆、息を飲む。
それでも、数の差が勇気を与えるのか、一体のゴリラが雄叫びをあげながら棍棒を振りかぶり、突っ込んでくると……周囲のゴリラもまた、それに続くように突っ込んでくるのだった。
□□
何分戦ったんだろう。
体感では数十分、実際には数分程度だろうけれど、たったそれだけの間に何十体ものゴリラが光となって消えていった。
しかし、まだ周囲を囲む壁は厚く、向こうにいるはずの村長の姿は一部すら見えてこない。
「……おかしい」
あまりにも数が多すぎる。
村全体のゴリラが集まっていたとしても、これだけ倒しても、まだ尽きないなんて……絶対におかしい。
それに手応えが、まるで霞のように軽いのだ。
攻撃を弾いたときの重さと、斬った時の手応えが違いすぎる。
でも――
「私だけじゃどうしようもないんだよねー」
諦めるわけじゃない。
敗けを認めるわけでもない。
ただ、そう……“適材適所”ってやつなのだ。
「……」
「だからさー、ケート。早く起きてよ」
「……」
後ろにいるケートの方も振り返らず、ただひたすらにゴリラの相手をしながら……そう、小さく呟く。
聞こえてるのか、聞こえてないのかなんて分からない。
それでも、ケートならって、信じられる。
だから――
「私を助けてよ、圭」
一瞬だけ振り返って、小さく願う。
最大のライバルで、大好きな親友へ。
「……ト、ジョーカー』」
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名前:セツナ
所持金:99,920リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム(使用不可):ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』(所持スキル:【切断Lv.3】【刺突Lv.3】【神速Lv.2】【蠍蟲拳Lv.3】)
装着スキル:【ゴリラ語理解】【ゴリラの枷(現在6枠)】【見切りLv.6】【抜刀術Lv.16】【朧霞閃影Lv.3】
未装着スキル:【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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名前:ケート
装着スキル:【ゴリラ語理解】【ゴリラの枷(現在6枠)】【付与魔法】【呪術】【??】
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