荒野
「ここは……」
おれは確かに遺跡の中にいたはずだ。いたはずなのだ。だが、ここは遺跡ではなかった。
砂だけが延々と広がる夜の荒野におれたちは倒れていた。
「さくら、博士大丈夫か?」
おれは隣で倒れていたふたりを慌てて抱きおこす。
「うーん」
「あの光は一体……」
ふたりは起き上がった。どうやら無事らしい。
話を聞くと、おれが泉の中に引き込まれるのを助けようとして、光のなかに飲み込まれてしまったようだ。
「遺跡は? ここはどこ?」
「わからない」
さくらはパニックになっていた。おれの中にもひとつの可能性が思いつく。たぶん、彼女も同じ可能性にたどりついたのだろう。“転生”という可能性に……。
また、おれたちは別の世界に来てしまったのではないだろうか。
おれたちは、また死んでしまったのかもしれない。
動揺しているおれたちをしり目に、博士は砂をいじっていた。
「この砂は、わしたちがいた場所のものとは違うものじゃな。特殊な形状をしている。まるで、一度高温で焼かれているような……」
<じゃり、じゃり>
おれたちの後ろで、足音が聞こえてくる。その音は人間が作り出した音ではなく、獣がつくりだした野生の音だった。おれたちは身構える。振り返ったおれたちの後ろにいたのは、狼とクモを合成させたような三匹のキメラだった。いくつもの不気味な足と、鋭利な牙をもつ化け物。こんな生き物は、おれたちが生きた二つの世界にこんな生き物はいなかった。
「がるるるる」
肉食獣のような凶悪な叫び声をあげるキメラたち。明らかにおれたちに敵意をむけている。
「さくら、おれの後ろに隠れろ」
おれはそういうと、腰にささっていた宝剣を抜く。剣の訓練なんて、ほとんどしたことはなかった。だが、ここでやらなければ、おれたちは……。
「ユウトくん。三十秒ほど時間を稼いでくれ。そうすれば、あとはわしがなんとかする」
博士は真面目な声でそう言った。大賢者の一言でおれは少し心が落ち着いた。
あの時、隕石からさくらを守れなかったことの再現はごめんだ。
「うおおおおおおおおおお」
おれは、三匹の魔物に向かって突撃する。
やつらは、虫のような足を武器にして、おれに襲いかかる。
一本、二本とやつらの攻撃をかろうじてかわすことができた。三匹目の攻撃がおれの肩をかすっていく。熱い激痛がおれの体を揺さぶった。
「死ぬわけにはいかない。死ぬわけにはいかねえんだよ」
無我夢中でそう叫んで、おれは剣をふるった。
群れの一匹が四散する。切ったような感覚はなかった。とても軽い。
これならいける。おれは自信をもって次の一匹に狙いを定める。しかし、やつらの動きは軽快だった。
放心していたおれの足に向かって、足を突き刺す。さきほど以上の激痛だった。あまりの痛みにおれは倒れ込む。
「ユウトくん、伏せろ」
その直後、博士の大声が響いた……。




