懐かしい妹と弟
そうこうするうちに森歩きの子ども達が帰ってきた。
「師匠、弟と妹も帰ってきたみたいです!」
私とサリーは、兄弟達を迎えに出る。
「バリー、ミラ! 大きくなったわね!」
アルカディアに行く前から、弟のバリーには背を抜かれていた。ミラよりは少しは背が高かった筈なのに、同じぐらいの目線になっちゃっている。
「ミラ、バリー!」
兄弟で抱き合う。ああ、やっぱり家族って良いなぁ! アルカディアでも友だちはできたし、師匠達との暮らしも満足している。
でも、やはり家族は良いんだよねぇ。
あっ、師匠を今度こそ紹介しよう!
「こちらが弟のバリー、そして妹のミラです。この方が私の師匠のオリビィエ様。そして、サリーの師匠のアリエル様ですよ」
やっと、師匠達を紹介できた。アリエル師匠は、ちょっとだけ挨拶したら、サリーの弟と話している。
「バリーは斧のスキル、ミラは弓のスキルだと聞いているけど、他の技術を身につける気はないかい?」
オリビィエ師匠は、私にも薬師以外の技術を取得させようと熱心だ。
「俺は、狩人になりたいんだ! パパみたいにね!」
ふぅ、やはりバリーは駄目そう。
「私もママみたいな弓使いになりたいです。でも……お姉ちゃんみたいに料理も上手くなりたいな」
ああ、それは大切だよ。でも、本当のことを言うと、ミラよりバリーの方が料理のセンスがありそう。
「兎に角、私の家に招待します!」
アリエル師匠は、サリーの家に行くみたいだから、オリビィエ師匠を案内する。
小さくて一間しかない我が家。懐かしい!
子ども用ベッドが収納しきれずに部屋を圧迫しているけど、そこはソファー代わりに使っている。
「ここにお座り下さい」
おお、ミラがオリビィエ師匠に椅子を勧めている。私の妹、マジ賢いよね!
ミントは、今年の夏も採れたみたい。ハーブティーをバリーが淹れてくれたので、私はマジックバッグからお土産のクッキーを出して、皆で食べる。
でも、お土産全部は出さないよ。ママが食料品の管理をしているのだから、そちらに渡す。
それに、バンズ村は親戚だらけだから、お土産のお裾分けをするのを考えるのもママだからね。
「君たちは、アルカディアからの話を聞いているかな?」
「ええ、アルカディアの森の人が二回来たから……大人たちは顔を合わせたら、その話ばっかりだったし……」
ミラとバリーが興味なさそうなのに焦る!
「ミラ! バリー! 光の魔法を習得したら、長生きできるのよ!」
狩人の村がアルカディアからの提案を拒否したと聞いた時から、私はずっと信じられない気持ちだったんだ。
だって、長生きできるんだよ! 前世の私は病気で十二歳で亡くなったんだ。
長生きした方が絶対に良いじゃん!
オリビィア師匠がぱふぱふと私の頭を撫でて、落ち着かせる。
「そうか、それは知っているみたいだけど、私たちは何故、狩人の村の森の人達が積極的に習おうとしないのかわからないのだ」
今度は、バリーが言いにくそうに口を開く。
「大人達は、アルカディアが子どもを拐おうとしていると怒っていたよ。でも、俺はお姉ちゃんからの手紙を読んだから、そうじゃないと思っているけど……親が反対するなら、無理じゃないかなと、森歩きのメンバーは言っている」
オリビィエ師匠は、ふむふむと頷きながら、バリーの説明を聞いていた。
「お姉ちゃんは、光の魔法を使えるの?」
うっ、ミラ! ここで「もちろん、できるよ!」と答えたかったよ。
「まだ、少ししか使えないの。守護魔法とライトをちょこっとだけなんだ」
見本として、指先にライトを付けた。
「おお! 光っている! 凄い」
バリーは、喜んでくれた。
「お姉ちゃん! 凄いよ!」
ミラも褒めてくれたけど、余計に落ち込んじゃった。
「サリーは、光の魔法も上手く使えるんだよ! だから、ミラもバリーも習えば使えるようになるよ。私も……頑張っているんだけど……」
言えば言うほど、落ち込んじゃう。もっと修練して、光の魔法を使えるようになっておくべきだったんだ!
「ミクは、半年もしないのに色々と頑張って修業している。薬師としてだけじゃなく、土の魔法を使っての農作業、ガラス作りや美味しい料理、そして勉強もね!」
ぽふぽふと落ち込む私の頭を撫でて褒めてくれた。
「さっき、バリーとミラに聞いたけど、狩人としてのスキルを活かして生活するのは良いけど、他の技術を身につけるのも良いんじゃないかな?」
狩人の村で育って、尚且つ、狩人スキルに恵まれた二人にはピンとこないみたい。
私だって、狩人のスキルに恵まれていたら、このままバンズ村で暮らしていたと思うもの。
今頃は、ジニーと一緒に若者小屋で狩三昧だったよ。
「ミクは、薬師、料理、植物育成のスキルに恵まれている。でも、それ以外の修業もしているんだ。火食い鳥を飼っているし、ガラス作りや土魔法や光の魔法も修練している。それに、狩もしているんだよ!」
二人は、やはり「狩!」に飛びついた。
「お姉ちゃん、何を狩ったの?」
「アルカディアには、大物がいるって噂だ!」
ううう、ミラとバリーの圧が強い。
「小さ目のビッグエルクだよ」
二人は、私が弓も下手なのを知っているので「どうやって!」と目が『聞きたい!』と煌めいている。
「草を食べていたので、こちらに気づいていなかったんだ」
ミラが「チャンスだね!」と先を促す。
「それで、弓で射たの?」バリーも早く、早くと目で急かす。
ううう、恥ずかしくて言えない気分になる! だって、今のバリーとミラの方が、簡単にビッグエルクを狩れるだろうから。
私が言い淀んでいると、オリビィア師匠がテキパキと説明してくれた。
「ミクは、植物育成スキルを活かして、ツルでビッグエルクの脚をくくって逃げられなくし、ナイフで首を切ったのさ」
「「お姉ちゃん、凄い!!」」
やはり、ここは狩人の村なんだ! 褒められたけど、身の置き場に困る気分になった。




