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アルカディアの子ども  作者: 梨香


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火食い鳥《カセウェアリー》の餌

 午後からは、菜園で採ってきた野菜の保存と、引っこ抜いた茎をナタで刻んで、魔物の残り物の脂肪と混ぜて固める。


「ジミー、ナタで刻むの早いね!」


 それは、ジミーに任せる。ガンガン刻んでくれている。


 私は、脂肪をヨナと刻む。ヨシは、お昼寝! オリビィエ師匠にも注意されているんだ。

 午前中は、畑仕事で体力を使ったからね。

 サリーは、農作業着を洗濯している。


 鍋に何杯もの脂肪を刻んで、少し温めて溶かす。

 それに、刻んだ茎や豆を混ぜて、石鹸を作る時に使う平たい容器に隙間をなるべく作らないように広げる。


「これを外で冷やしてから、一口大に切るのよ! 火食い鳥(カセウェアリー)の冬の餌になるの」


 何個もの容器を運ぶのは、ジミーが手伝ってくれた。


「後は、冷やすだけなの! 手伝ってくれてありがとう!」


 ヨシを起こしておやつの時間だ。あまり、お昼寝を長時間させると、夜に眠り難くなるとオリビィエ師匠に注意されたんだ。


「お手伝いのお礼にパンケーキを焼くわ!」

  

 卵を泡立てて、ふんわりとしたパンケーキを何枚も焼く。


 焼くのが間に合わないぐらいだよ! 


「ジミー、夕食はきっと竜のステーキよ!」


 三枚目を食べて、まだ欲しそうな顔のジミーに注意しておく。


「そうね! 私は、もうやめておくわ」


 サリーは、二枚でおしまい。私も二枚でやめよう。ヨナもヨシも二枚で良いみたい。


「えっ、ミク? もう皆食べないのに、焼くの?」


 ヨナが変な顔をしているけど、パンケーキの甘い匂い。きっと拡散していると思うんだ。


「誰が一番に来るかしら? お茶を淹れなおしておくわ。ジミーは食べ終わった食器を台所に運んでね」


 サリーがテキパキと居間を片付けて、お茶を淹れる。


 ヨナとヨシが食器洗いをしていると、玄関でノックの音が。


「やはり、来たわね!」


 サリーに対応して貰う! 私はヨナを助手にしてホットケーキをじゃんじゃん焼くのに忙しいんだ。


 家が一番近いヘプトスかな? と思っていたけど、エレグレースとマリエールが先に来た。


「いい香りがしているんですもの!」


 エレグレースは、トレントから絞った樹液を煮詰めたのを一瓶持ってきてくれた。


「ああ、蜂蜜を掛けても美味しいけど、樹液も美味しいのよ」


 嬉しくて、瓶を抱きしめてぴょんぴょん飛んじゃった。


「秋は、森歩きが多くなるのよ。冬はやはり薬草も少なくなるから」


 エレグレースは、しっかり森歩きをしているみたい。


「私は小さなオルゴールをサリーにあげるわ! これを火食い鳥(カセウェアリー)の卵につけたら、可愛いオルゴールになるのよ。これは見本、欲しかったら値段は安くしておくわ」


 マリエールが持ってきてくれた小さな金属の箱、これを火食い鳥(カセウェアリー)に取り付けたら、良いよね!


 女の子達にパンケーキを出して、蜂蜜と樹液の食べ比べをする。

 私達のは一枚を五人で分けて食べるよ。夕食が食べられなくなったら困るもの!


 サリーは、ガラスコーティングした火食い鳥(カセウェアリー)の卵を部屋から持ってきて、下に穴を開けてネジが回せるか、悩んでいる。


「ああ、ネジが下にあると立たないわ。底に四箇所、小さな脚を付けなきゃ!」


「あっ、アリエル師匠のは、蓋を開けたら男の人と女の人が踊りながら回っていたんじゃない?」


 私が見たのは、そうだったよね?


「それは、オルゴールの上に回転板を設置しなきゃいけないのよ。人形は、木彫りだから、ヘプトスに頼めばやってくれると思うけど……回転板は、金属だからガリウスかな?」


 つまり、皆で協力してあの飾りオルゴールは出来上がったんだ。


 そんな話をしていたら、ヘプトスとリュミェールがやってきた。


「良い香りだ!」


 今日はピザ屋とかじゃないから、お金は取らない。それだからか、二人も手土産を持ってきてくれた。


「両親と森歩きして綺麗なリンゴを採ったんだ」


 リュミェールは籠いっぱいのリンゴ! (キラービー)の巣の近くに植えたリンゴとは違う種類だ。


「ありがとう! アップルパイにしたら分けるわ!」


 そして、ハプトスは蒸し器!


「ええっ、お金を払わなきゃいけないよ」


「それより、肉まんを売る日は、早く教えて欲しい。親も食べたいと思うんだ」


「うん、ピザは冷めない方が美味しいけど、肉まんは家で蒸し直せるからね!」


 せいろがいっぱい売れそうだと、ハプトスも笑う。


「肉まん、試作品を食べてみる?」


 今夜は、竜の肉のステーキだから、付け合わせに肉まんの肉の少ないのを作ろうと思うんだ。


 それと、具を入れていない小さめの蒸しパンを山ほど作るつもり!

 だって、どこの家でもドラゴンステーキだと思うんだ。


 蒸しパンを売ったら、ステーキソースをつけてたべられるよね!


「ヨシ、オリビィエ師匠が帰ってきたら、先ずは食事、それから竜の肝をよく洗うんだよ。それで、病気によく効く回復薬ができるんだ」


「竜の肝で薬を作るんだ!」ヨシは、興奮している。


「竜の肝と上級薬草、それに浄水で煎じるんだけど、難しいんだよね。煎じ方が浅いと駄目、煎じしめも駄目、丁度良い時間で火からおろすんだ」


 私は助手をしながら、煎じ方を習っている途中だ。


 さて、師匠達が帰ってくるまでに、しなくてはいけないことをやろう!


「ジミーは水汲みとお風呂の用意! サリーは洗濯物を取ってきてね。ヨシは、洗濯物を畳むのをてつだってね。わたしは、夕食の準備!」

  

 ホットケーキを食べていた子達も、それぞれの家の用事をしに帰る。


 竜のステーキがメインだから、サラダとスープ、それと小さな蒸しパンをいっぱいにしよう。


 サラダは、きゅうりを薄く切って、ワインビネガーと少しの塩と砂糖で味つけよう!

 菜園で採った最後のきゅうり、採るのが遅くなって、トゲが痛いぐらい。

 塩を振って、まな板の上でゴロゴロ転がす。トゲがなくなったし、緑がより鮮やかになった。


「ミク、手伝うよ!」

 ヨシには、きゅうりをピーラーで薄切りにして貰う。

 このピーラーは、ガリウスの師匠に作って貰ったんだ。


 そろそろ、ケーキを焼いてもっていなかなきゃね!

 

 でも、今日はドラゴンステーキ、明日はドラゴンシチュー、明後日は、スネ肉のシチュー! 最後に残った肉でハンバーガーを作っても良いけど、残りぐあいだね。


 少しだけなら、他の肉と混ぜてワンタンにしても良い。あっ、餃子もありだよね。


「師匠達、大丈夫かしら?」


 サリーが心配している。


「そうだね、前にアリエル師匠が竜を討伐した時より遅いかも……でも、奥に行くと言っていたから……」


 そんな事を言っているうちに、表が賑やかになった。


「師匠達だ!」

 皆で、外にかけだす。


 


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