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アルカディアの子ども  作者: 梨香


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22/24

収穫の秋!

 将来の為のお金も大切だけど、今は秋なんだ!

 小麦の収穫は、私達がラング村に行っている間に終わっていた。


「えっ、こんなに小麦を貰っても良いの?」


 春に収穫した時の三倍以上もある。


「ああ、ミクのピザが好評だし、うちには三人も子どもが増えたからね。耕作地は、そろそろ春小麦になるけど、小麦畑の空き地に何か植えたいなら、使っても良いよ」


「嬉しいです! 冬野菜なら、今からでも作れるから! 火食い鳥(カセウェアリー)達の冬の餌も作りたいと思っていたのです」


 私は、浮き浮きだ! 何を植えようかな? 葉物野菜は、いっぱい欲しい! 玉ねぎも、もっとあると便利! 芋は常に常備しておきたい。にんじんも良いよね!


「ミク、あまり頑張りすぎないようにな。私とアリエルは、明日は狩りに行くつもりなんだ。できれば、お昼を持って行きたい」


 ふうん、師匠達が二人で狩り? 珍しいね。


 私は、食べやすいサンドイッチにしようと考えていたけど、ジミーは横で聞いていて、目を輝かせる。


「竜を討伐するのか? 行きたい!」


 全くブレないね。竜なんか怖いよ。


「ううむ、まだジミーは無理だな。今回は、少し奥に行くつもりなんだ。秋にまた行商人が来るので、それまでに回復薬を使っておきたいのさ」


 ジミーは、オリビィエ師匠に断られても、懲りずにアリエル師匠に頼んでいる。


「まだ無理ね! それより、ミクの手伝いをしてあげて! ちゃんと手伝ったら、ワイバーン狩りになら連れて行ってあげるわ」


 ジミーは、竜はまだ無理だと言われて納得した。


「ワイバーンでも嬉しい!」


 そんな気持ちは、私には理解できないけど、ジミーって畑仕事も結構うまいんだよね。


「私も手伝うわ!」

 サリーとヨナ、そしてヨシも手伝ってくれる。


 そんなに手伝いがいるなら、ちゃんと作る作物の区域を決めなきゃね!


「オリビィエ師匠、小麦畑の全てを使っても良いのでしょうか? 他の人も使いたいのでは?」


 オリビィエ師匠は笑う。


「基本的に農業は人気ないのさ。小麦を収穫して、今植えている菜園の収穫が終わったら、秋蒔き小麦の準備をするだけさ」


 やったね! では、先ずは小麦を収穫した後の畑に、肥料を漉き込んで、作物ごとに畝を作らなきゃ!


 それと、うちの菜園の最後の収穫もしないとね! 

 芋、蕪、キャベツ、玉ねぎ、にんじん、この基本野菜は欠かせない。

 かぼちゃ、ほうれん草、ネギ、にんにく、菜葉、それに火食い鳥(カセウェアリー)の餌になる豆!


 人数が増えたのもあるけど、冬はピザより肉まんを売りたいんだ。

 ピザは、チーズとトマトソースが必要なんだもの。


 トマトソースは、パントリーにずらりとガラス瓶に詰めて並んでいるけど、ピザ屋をずっとできるほどじゃない。


 来年は、もっとトマトを作らなきゃね! きゅうりもピクルスにして並べている。


「もう少し温かい日が続くなら、トマト作れないかな? きゅうりも、もう少し欲しい!」


 夏野菜、思ったより少ないんだ。私が売ったからかも。きゅうりなんか毎日十本はできていたのに、一本漬けにして売りすぎたよ。


 畜産をしているヴァイデイムさんの家畜小屋の、使い終わった寝稾をマジックバッグに入れて運ぶ。

 火食い鳥(カセウェアリー)の寝藁も勿論入れてある。


「ゾーイ、そんなのを入れたら汚くなるわよ!」


 サリーが信じられないって顔で言う。


「うん、これが終わったら、ちゃんと拭いて手入れするよ!」


 マジックバッグを作る練習にもなるしね。


 夏をアルカディアで過ごした森の人(エルフ)も少しずつ人間の街に行き出した。

 オリビィエ師匠は、前に売ったマジックバッグの手入れが忙しかったみたい。

 私も、少しだけお手伝いしたよ。中を拭くのとかね! 

 魔法陣を描き直すのは、オリビィエ師匠がしたんだ。だって、売り物だからね。


 それと、縫い物が苦手なオリビィエ師匠の代わりに、三枚袋を縫った。それを、師匠がマジックバッグにしたんだ。


「おお、やっと買えた!」と凄く喜ばれていたけど、金貨百枚もするんだね。


 私が目を丸くしているのを見て、オリビィエ師匠は、ぱふぱふと頭を撫でてくれた。


「そのうち、ミクも作れる様になるよ。これができたら、お金に苦労はしないが、知らない人にバレない様に気をつけるんだよ」


 人間の街でマジックバッグを持っている人は、まずいないそうだ。

 それは狩人の村でも一緒なので、理解できる。


「師匠、いつかママとパパにマジックバッグを作ってあげたいのですが、良いでしょうか?」


「ははは、勿論、良いさ! ただ、村の人が羨ましがるだろうけど、家族以外にはタダであげてはいけないよ」


 金貨百枚なんて、ラング村の全財産をかき集めても無さそうだ。

 つまり、家族オンリー! でも、ママやパパなら独占しないで、狩りの時に使いそう。それは、それで良い!


 マジックバッグの手入れは、何個も手伝ったので、慣れている。

 それだから、寝藁を入れることができるんだ。


 寝藁を収穫が終わった小麦畑に撒く。

 ジミーとヨナは、身体強化でガンガン耕していく。


 サリーは、ヨシに風の使い方を教えながら、風の魔法で耕す。


 私は、手を土に置いて、ガンガン耕していくんだ! 少しでも早く種を撒きたいからね。


「ミク、凄いわね!」


 他の人が耕している間に、畝をどんどん作っていく。


「土魔法は、かなり修業したからね」


 食物育成スキルと土魔法は、相性が良いみたい。


「ヨシは、私と種まきをして!」


 小麦畑は広いので、まだ三分の一程度しか畝になっていない。


「でも、まだ……」


 ヨシは、自分が力仕事に向いていないからかと項垂れる。


「まだ少しだけ温かいから、夏野菜も作っておきたいの。そちらは、急ぐから先に種を撒くのよ」


「今から、夏野菜? ミク、もう秋だよ」


「うん、思ったより使い過ぎちゃったんだ! ピザ屋をやりすぎたんだよ」


 ピザは、ヨシも美味しかったのか、笑う。


「こちらの畝は、トマト。あちらは、きゅうり、それととうもろこし!」


 フレッシュとうもろこしが美味しすぎて、乾燥させたのが少ないんだ。

 火食い鳥(カセウェアリー)をなるべく潰したくないので、とうもろこしを作ろう!


 夏野菜エリア、ヨシと種を撒いたので、手に魔力を込めて「大きくなれ!」と唱えておく。


 水をジョウロでやっていたヨシが「芽が出た!」と驚いている。


「ヨシ、これは内緒ね!」


「うん、知られたら大変だよ」


 ラング村の森の人(エルフ)やアルカディアの森の人(エルフ)は知っているけど、人間には絶対に教えてはいけない。


 ヨシは賢いから、一言で理解してくれた。


 サリー、ヨナ、ジミーが耕してくれた残りの畑に畝を作る。


「ミク、土魔法が上手くなったわね!」


 サリーに魔法関係で褒められると嬉しい。


「うん、ずっと菜園で使っていたからね!」


 こちらは、芋、豆、キャベツ、玉ねぎ、ネギ、かぼちゃ、ほうれん草、菜葉を植えていく。


「ミク、水遣りなら任せて!」


 サリーは、水魔法もアリエル師匠に習っている。


 ザザザザ……と小川から、水が浮き上がって、種を撒いた畑に雨となって落ちる。


「サリー、ありがとう! ヨナもジミーもヨシも手伝ってくれてありがとう!」


 私は、畑に手をついて「大きくなれ!」と唱える。


「わぁ、芽が出たわ!」


 ジミーは、何回も見ているから驚かなかったけど、ヨナはあまり村の中にいなかったみたい。


「後は、うちの菜園の収穫だけだわ」


 何人かが、まだするの? って顔をしたけど、狩りより楽でしょう? 違うのかな?


 ジミーは、狩りの方が楽だって顔だけどさ。


 でも、残りの野菜を全部収穫して、茎とかを引っこ抜く時は、大活躍してくれたよ。


「この茎を、マジックバッグに入れて!」


 何をするんだ? って顔で聞くジミー。言葉で聞きなさいよ! と思うけど、ジミーだからね。


「茎をナタで短く切って、豆とかと混ぜて、魔物の脂肪で固めるの。そうしたら、火食い鳥(カセウェアリー)の冬の餌になるのよ」


「ナタで切る!」


 言葉は短いけど、ジミーは役に立つよ。


 木の家(アビエスビラ)に着いたら、お昼を回っていた。


「今日は、師匠達のお昼を作ったので、私達も一緒だよ!」


 スープを温めて、サンドイッチと食べる。


 ジミー、すごい勢いで食べているよ。ヨナもヨシも美味しそうに食べている。


「このマヨネーズとか言うの、美味しいよね!」


 サリーもマヨラーかな? マヨネーズ、美味しいけど、作るのちょっと面倒くさいんだよね。


 今日のサンドイッチは、師匠達の為に作ったから、豪華版! 茹で卵をマヨネーズで和えた卵サンド。ビッグボアの薄切り肉を挟んだ肉サンド。キャベツを千切りしたのとビッグエルクのカツをデミグラスソースに漬けたカツサンド。


 野菜サンドは無しにした。私的には、トマトサンド好きなんだけど、時間が経つとパンに水がどうしても染みる気がするんだ。


 バターを塗っても、マヨネーズを塗っても、すぐに食べないと駄目な感じ。


 大皿に山盛りあったサンドイッチ、あっという間に無くなった。


「手伝ってくれたご褒美だよ!」


 プリンも一瞬で無くなったけど、午後からも手伝って貰うからね!

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