収穫の秋!
将来の為のお金も大切だけど、今は秋なんだ!
小麦の収穫は、私達がラング村に行っている間に終わっていた。
「えっ、こんなに小麦を貰っても良いの?」
春に収穫した時の三倍以上もある。
「ああ、ミクのピザが好評だし、うちには三人も子どもが増えたからね。耕作地は、そろそろ春小麦になるけど、小麦畑の空き地に何か植えたいなら、使っても良いよ」
「嬉しいです! 冬野菜なら、今からでも作れるから! 火食い鳥達の冬の餌も作りたいと思っていたのです」
私は、浮き浮きだ! 何を植えようかな? 葉物野菜は、いっぱい欲しい! 玉ねぎも、もっとあると便利! 芋は常に常備しておきたい。にんじんも良いよね!
「ミク、あまり頑張りすぎないようにな。私とアリエルは、明日は狩りに行くつもりなんだ。できれば、お昼を持って行きたい」
ふうん、師匠達が二人で狩り? 珍しいね。
私は、食べやすいサンドイッチにしようと考えていたけど、ジミーは横で聞いていて、目を輝かせる。
「竜を討伐するのか? 行きたい!」
全くブレないね。竜なんか怖いよ。
「ううむ、まだジミーは無理だな。今回は、少し奥に行くつもりなんだ。秋にまた行商人が来るので、それまでに回復薬を使っておきたいのさ」
ジミーは、オリビィエ師匠に断られても、懲りずにアリエル師匠に頼んでいる。
「まだ無理ね! それより、ミクの手伝いをしてあげて! ちゃんと手伝ったら、ワイバーン狩りになら連れて行ってあげるわ」
ジミーは、竜はまだ無理だと言われて納得した。
「ワイバーンでも嬉しい!」
そんな気持ちは、私には理解できないけど、ジミーって畑仕事も結構うまいんだよね。
「私も手伝うわ!」
サリーとヨナ、そしてヨシも手伝ってくれる。
そんなに手伝いがいるなら、ちゃんと作る作物の区域を決めなきゃね!
「オリビィエ師匠、小麦畑の全てを使っても良いのでしょうか? 他の人も使いたいのでは?」
オリビィエ師匠は笑う。
「基本的に農業は人気ないのさ。小麦を収穫して、今植えている菜園の収穫が終わったら、秋蒔き小麦の準備をするだけさ」
やったね! では、先ずは小麦を収穫した後の畑に、肥料を漉き込んで、作物ごとに畝を作らなきゃ!
それと、うちの菜園の最後の収穫もしないとね!
芋、蕪、キャベツ、玉ねぎ、にんじん、この基本野菜は欠かせない。
かぼちゃ、ほうれん草、ネギ、にんにく、菜葉、それに火食い鳥の餌になる豆!
人数が増えたのもあるけど、冬はピザより肉まんを売りたいんだ。
ピザは、チーズとトマトソースが必要なんだもの。
トマトソースは、パントリーにずらりとガラス瓶に詰めて並んでいるけど、ピザ屋をずっとできるほどじゃない。
来年は、もっとトマトを作らなきゃね! きゅうりもピクルスにして並べている。
「もう少し温かい日が続くなら、トマト作れないかな? きゅうりも、もう少し欲しい!」
夏野菜、思ったより少ないんだ。私が売ったからかも。きゅうりなんか毎日十本はできていたのに、一本漬けにして売りすぎたよ。
畜産をしているヴァイデイムさんの家畜小屋の、使い終わった寝稾をマジックバッグに入れて運ぶ。
火食い鳥の寝藁も勿論入れてある。
「ゾーイ、そんなのを入れたら汚くなるわよ!」
サリーが信じられないって顔で言う。
「うん、これが終わったら、ちゃんと拭いて手入れするよ!」
マジックバッグを作る練習にもなるしね。
夏をアルカディアで過ごした森の人も少しずつ人間の街に行き出した。
オリビィエ師匠は、前に売ったマジックバッグの手入れが忙しかったみたい。
私も、少しだけお手伝いしたよ。中を拭くのとかね!
魔法陣を描き直すのは、オリビィエ師匠がしたんだ。だって、売り物だからね。
それと、縫い物が苦手なオリビィエ師匠の代わりに、三枚袋を縫った。それを、師匠がマジックバッグにしたんだ。
「おお、やっと買えた!」と凄く喜ばれていたけど、金貨百枚もするんだね。
私が目を丸くしているのを見て、オリビィエ師匠は、ぱふぱふと頭を撫でてくれた。
「そのうち、ミクも作れる様になるよ。これができたら、お金に苦労はしないが、知らない人にバレない様に気をつけるんだよ」
人間の街でマジックバッグを持っている人は、まずいないそうだ。
それは狩人の村でも一緒なので、理解できる。
「師匠、いつかママとパパにマジックバッグを作ってあげたいのですが、良いでしょうか?」
「ははは、勿論、良いさ! ただ、村の人が羨ましがるだろうけど、家族以外にはタダであげてはいけないよ」
金貨百枚なんて、ラング村の全財産をかき集めても無さそうだ。
つまり、家族オンリー! でも、ママやパパなら独占しないで、狩りの時に使いそう。それは、それで良い!
マジックバッグの手入れは、何個も手伝ったので、慣れている。
それだから、寝藁を入れることができるんだ。
寝藁を収穫が終わった小麦畑に撒く。
ジミーとヨナは、身体強化でガンガン耕していく。
サリーは、ヨシに風の使い方を教えながら、風の魔法で耕す。
私は、手を土に置いて、ガンガン耕していくんだ! 少しでも早く種を撒きたいからね。
「ミク、凄いわね!」
他の人が耕している間に、畝をどんどん作っていく。
「土魔法は、かなり修業したからね」
食物育成スキルと土魔法は、相性が良いみたい。
「ヨシは、私と種まきをして!」
小麦畑は広いので、まだ三分の一程度しか畝になっていない。
「でも、まだ……」
ヨシは、自分が力仕事に向いていないからかと項垂れる。
「まだ少しだけ温かいから、夏野菜も作っておきたいの。そちらは、急ぐから先に種を撒くのよ」
「今から、夏野菜? ミク、もう秋だよ」
「うん、思ったより使い過ぎちゃったんだ! ピザ屋をやりすぎたんだよ」
ピザは、ヨシも美味しかったのか、笑う。
「こちらの畝は、トマト。あちらは、きゅうり、それととうもろこし!」
フレッシュとうもろこしが美味しすぎて、乾燥させたのが少ないんだ。
火食い鳥をなるべく潰したくないので、とうもろこしを作ろう!
夏野菜エリア、ヨシと種を撒いたので、手に魔力を込めて「大きくなれ!」と唱えておく。
水をジョウロでやっていたヨシが「芽が出た!」と驚いている。
「ヨシ、これは内緒ね!」
「うん、知られたら大変だよ」
ラング村の森の人やアルカディアの森の人は知っているけど、人間には絶対に教えてはいけない。
ヨシは賢いから、一言で理解してくれた。
サリー、ヨナ、ジミーが耕してくれた残りの畑に畝を作る。
「ミク、土魔法が上手くなったわね!」
サリーに魔法関係で褒められると嬉しい。
「うん、ずっと菜園で使っていたからね!」
こちらは、芋、豆、キャベツ、玉ねぎ、ネギ、かぼちゃ、ほうれん草、菜葉を植えていく。
「ミク、水遣りなら任せて!」
サリーは、水魔法もアリエル師匠に習っている。
ザザザザ……と小川から、水が浮き上がって、種を撒いた畑に雨となって落ちる。
「サリー、ありがとう! ヨナもジミーもヨシも手伝ってくれてありがとう!」
私は、畑に手をついて「大きくなれ!」と唱える。
「わぁ、芽が出たわ!」
ジミーは、何回も見ているから驚かなかったけど、ヨナはあまり村の中にいなかったみたい。
「後は、うちの菜園の収穫だけだわ」
何人かが、まだするの? って顔をしたけど、狩りより楽でしょう? 違うのかな?
ジミーは、狩りの方が楽だって顔だけどさ。
でも、残りの野菜を全部収穫して、茎とかを引っこ抜く時は、大活躍してくれたよ。
「この茎を、マジックバッグに入れて!」
何をするんだ? って顔で聞くジミー。言葉で聞きなさいよ! と思うけど、ジミーだからね。
「茎をナタで短く切って、豆とかと混ぜて、魔物の脂肪で固めるの。そうしたら、火食い鳥の冬の餌になるのよ」
「ナタで切る!」
言葉は短いけど、ジミーは役に立つよ。
木の家に着いたら、お昼を回っていた。
「今日は、師匠達のお昼を作ったので、私達も一緒だよ!」
スープを温めて、サンドイッチと食べる。
ジミー、すごい勢いで食べているよ。ヨナもヨシも美味しそうに食べている。
「このマヨネーズとか言うの、美味しいよね!」
サリーもマヨラーかな? マヨネーズ、美味しいけど、作るのちょっと面倒くさいんだよね。
今日のサンドイッチは、師匠達の為に作ったから、豪華版! 茹で卵をマヨネーズで和えた卵サンド。ビッグボアの薄切り肉を挟んだ肉サンド。キャベツを千切りしたのとビッグエルクのカツをデミグラスソースに漬けたカツサンド。
野菜サンドは無しにした。私的には、トマトサンド好きなんだけど、時間が経つとパンに水がどうしても染みる気がするんだ。
バターを塗っても、マヨネーズを塗っても、すぐに食べないと駄目な感じ。
大皿に山盛りあったサンドイッチ、あっという間に無くなった。
「手伝ってくれたご褒美だよ!」
プリンも一瞬で無くなったけど、午後からも手伝って貰うからね!




