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アルカディアの子ども  作者: 梨香


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自立準備を始めよう!

 ジミー達が来て、色々と忙しかったけど、やっと落ち着いた。


 三人も午前中の学舎通いにも慣れたみたい。ジミーやヨナは、体術訓練の日は張り切っている。


 だって、二人はリュミェールと対等どころか、ジミーは勝っているからね。


「まだ、三歳と二歳なのに!」とリュミェールも負けていられないと頑張っている。


 そう、ジミーがもうすぐ三歳だと言ったけど、サリーがバラしたんだ。


「私は、もうすぐ三歳だけど、ジミーとミクは冬生まれだから、まだまだ二歳だわ」


 それに、ヨシが一歳なのもバレたよ。驚かれたけど、皆がより優しく接する様になった。


「アルカディアでも一歳は、学舎に来ないんだ。二歳ぐらいから通うのが多いんだよ」


 ヘプトスが教えてくれたけど、退屈じゃないのかな?


「じゃぁ、それまで何をしているの?」


「ううんと、私は畑仕事を手伝ったり、親に文字を習っていたよ。まぁ、一歳から通う子もいるけどね」


「私は、時々、親に森に連れて行って貰っていたよ! 楽しかったな!」


 リュミェールは、甘えっ子だよね。親も甘やかしているみたい。


 でも、ヨシは「もうすぐ二歳なんだ!」と頑張って主張している。


 ヨナに聞いたら、晩秋生まれだそうだから、嘘ではないけど、私とジミーは微妙な感じ。


「私も、もうすぐ三歳なんだからね!」と言ったら、全員に「はい、はい」と笑われた。


 特に、サリーは三歳になったので、私やジミーにお姉さんっぽい態度をする。むううう!


 でも、世話焼きなのは、良い面もある。サリーは、ヨナとは前から仲が良かったけど、ジミーとは微妙だったんだよね。


 ワンダ婆さんの家で一緒だったけど、ジミーは無口で隅で木を削っているだけだったからね。

 

 でも、お姉さんサリーは、ジミーの面倒も見る気、満々! 勿論、ヨシには懇切丁寧に指導している。


「光の魔法を難しく考える事はないのよ。ジミーやヨシも今も使って成長しているんだもの。さぁ、私と手を繋いで!」


 ヨナは、学舎の男の子達にモテモテなので、リュミェールやヘプトスが積極的に教えている。


 私は、エレグレースやマリエールに熱烈指導して貰って、なんとかライトも長い時間つけていられる様になった。


「うん、そのくらいできたら合格じゃない?」


 マリエール、優しい! 可愛いし、大好きだよ。


「ふふふ、あとは守護魔法の強化をしなくてはいけないわね」


 エレグレースは、学舎の年長さんなので、少し厳しい。


「やはり、竜を討伐しなきゃ駄目なの?」


「ええ、そうなのよね。私は、学舎を卒業しても、当分は師匠の元で学ぶ必要がありそうだわ」


 エレグレースは、風の魔法使いだ。それに、体術の訓練の時は、弓を上手く使っている。


「へぇぇ、エレグレースでも卒業試験は難しいんだ。私は、一生、オリビィエ師匠の弟子だよ」


 マリエールがくすくす笑う。


「私と一緒に卒業試験を受けましょうよ! その頃には、ヘプトスやリュミェールも竜ぐらい討伐できる様になっているから、手伝って貰えば良いのよ! サリーとミクと私と一緒に人間の街で住むのは楽しいと思うわ!」


「それ、良いね!」


 エレグレースが口を尖らせる。


「マリエール! ミクの料理目当てでしょう! 私は、流石にミクやサリーの卒業試験まで待てないけど、人間の街では一緒に住みたいわ! だって、やはり森の人(エルフ)の女の子は、狙われやすいそうだもの」


 エレグレース、とっても美少女だから、狙われるのは理解できるけど、風魔法でビッグボアを一撃で討伐する実力なので、大丈夫じゃないかな?


「それも良いわね! お金を貯めて、小さな家を借りても良いわ!」


「マリエール、飴を買っていたら、お金は貯まらないわよ!」


「それは、エレグレースもでしょう!」


 二人ともスイーツに目がないのだ。


「エレグレースも(キラービー)を飼えば?」


 風の魔法使いのエレグレースなら、飼えるんじゃない?


「私の師匠は、虫が嫌いなのよ! でも、トレントを討伐して、樹液を取るつもりよ!」


「秋には、樹液をたっぷり溜めたトレントがいるものね!」


 マリエールもトレント狩りをするみたいだ。


「私も、油がとれるトレントを討伐したいんだ。石鹸を作れるからね!」


「そうね! それも良さそう!」


 うっ、エレグレースが本気を出したら、負けちゃいそう。


 エレグレースは、風の魔法使いの師匠に付いているけど、薬師修業もしているんだ。


 マリエールは、火の魔法使いの師匠に付いているし、錬金術で魔導具を作っている。


「ねぇ、幾らぐらい貯めなきゃ駄目なの? 師匠達は、いっぱい貯めなきゃ、風呂付きの部屋に泊まれないって言っていたんだよね」


 エレグレースとマリエールの眉が上がる。


「お風呂無しの生活なんて、考えられないわ!」


 うん、アルカディアではそうだよね。


「石鹸もあまり使われないみたいだし、夏はアルカディアに帰るか、避暑地に行かなきゃ臭いみたい」


 二人は驚いた。


「そんな事、師匠は言っていなかったわ! きっと、家を借りるか、買って生活していたんだわ」


「そうね! 家を借りるお金を貯めなきゃ! 私、魔導具をいっぱい作るわ! 行商人に高く売るつもりよ!」


 マリエールは、魔導具が作れるから、金策は楽だろうね。


 エレグレースは、風の魔法で狩りをしたり、薬草を採取すると拳を固めている。


 それを聞いていたリュミェール達もわいわい騒ぐ。


「私は、狩りで儲けるよ! そのうち竜を討伐できる様になるから、素材を高く売るつもりだ!」


 ヘプトスは、リュミェールの意見に賛成しない。


「竜は、そんなに狩れないよ。リュミェールは、スキル以外に手に職をつけた方が良い」


「私は、光のスキルで狩りもできるし、治療もできる。それに、弓も上手い!」


 うん、光のスキルに頼っているな! 弓もスキル持ちだったし! 努力不足なんじゃない?


 それは、エレグレースやマリエールも同じ意見みたい。


「陶芸とか、紙漉きとか、畜産とか、後継者がいない師匠が多いよ。リュミェールなら、何でもできるんじゃない?」


 おお、エレグレースは褒めて、何かやらそうとしている。


「ええっ、変人の師匠ばかりじゃないか!」


 そんな事を言ったら、メンター・マグスに叱られるよと注意する前に、拳骨が落ちた。


「リュミェール! 目上の人への尊敬が足りない! 明日までに、五の巻を全部読んで来なさい!」


 まぁ、もう半分以上は終わっているんだから、良いんじゃない?


 


 

 


 

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