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アルカディアの子ども  作者: 梨香


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ピザ屋は満員御礼!

 ピザ屋の旗を立てる前に、しなきゃいけないことがある。


 生地をこねるのは、ジミーに手伝ってもらう。


「そう、もっと力を入れてこねるのよ! ほら、終わっても、まだまだあるんだよね!」


 これ、段々と量が多くなっているんだよ! ピザ屋をやり始めた頃は、無くなったらお終いって感じだったんだけどさ。


「今夜のピザ屋は、大勢が来そう! 長老会のメンバーは全員くるだろうし、そうだ! 学舎の皆も来ると思うよ!」


 今日のピザは、とれたてのナスを使う。だって、いっぱい採れたからね。

 ピカピカの紫のナス、ふふふ、美味しそう!


 ピザ生地は、ジミーとヨナに作ってもらう。

 こねた生地を同じ大きさに丸めて寝かしておいたのを、丸く広げて貰うんだ。


 私は、ナスを切って炒める。ピザの上に生のまま置いても良いけど、焼く時間が長くなるからね。


 先に、カポナータ風にナス、玉ねぎ、トマトを炒め煮しておく。


 これなら、生地の上にトマトソースを薄く塗って、具材をドバッと置き、チーズをパラパラ振って焼けば良いからね。


 トッピングは、ヨシに任せる。ヨシは賢いから、同じぐらいに考えながら置いていってくれる。


「ミク、きゅうりの一本漬けも作るんでしょ? 串はあるの?」


 サリーに言われて、串を入れている箱を見たけど、少ししかない。


「これじゃあ、足りないわ!」


「それなら、俺が作ってやるよ」


 ジミーは、赤ちゃんの時から木を削っていたからね。


 生地は捏ねてくれたから、そちらを頼む。


「ヨナとヨシは、レモネードを作るのを手伝って!」


 サリーもお小遣いを稼がないとね! お土産の布を買って、かなり使ったから。


 夕方になる前に旗を立てた。秋になって、夏より早く日が暮れるからね!


「おおい! 来たよ」


 リュミエールが一番乗りで、家が近いヘプトスが二番目、どんどんやってくる。


「ピザを焼いている間に、紹介するわね。私やサリーと同じバンズ村から来たヨナ、ヨシ、ジミーよ」


 またヘプトスが人見知りして、怖い顔になっている。


 でも、エレグレース、マリエール、ガリウスがやってきたので、緊張も解けたみたい。


「明日から学舎に行くの! 宜しくね」


 ああ、ヨナはしなやかな美人だから、ヘプトスとガリウスが頬を赤くして頷いている。

 ガリウスは、もう卒業してるじゃん!


「ヨシは何歳なの?」


 リュミエールは、マウントを取るのが好きだね。自分より幼い子が増えると喜んでいる。


「まだ二歳になっていないんだ」


 全員が驚いた。


「だから、姉の私が一緒に来たの。ミクやサリーも二歳でアルカディアに来たんでしょう」


 ヨナが、ヨシを庇う。


「まぁ、私が小さい子の面倒を見るよ。リュミエールと言うんだ! ヨシ、覚えておくんだよ」


 それから、皆が自己紹介をする。


 そして、ピザをたべたり、レモネードを飲んで楽しく話している。


 私とサリーは、忙しくしていたよ。ジミーが気がついて、手伝ってくれた。


「ヨシ、手伝いましょう!」


 ヨナがヨシと手伝いを始めると、何故かヘプトスとガリウスも手伝い出した。


 あらら、恋の予感? まぁ、アルカディアも結婚相手を探すのに困っているみたいだからね。


「ちょっと抜けるわね!」


 途中でヨシをヨナが寝かしつけに行った。

 今日のお風呂は、ヨシは無しかな? もう目が瞑りそうだもの。


 この日は、暗くなるまでピザ屋は大盛況だった。


 師匠達と一緒に来た長老会のメンバーは、木の家(アビエスビラ)の中で、ハチミツ酒と一緒に食べている。


 ナスのピザ、美味しいよね! 私たちも、暇を見つけては、二枚目も食べたよ!


「ほら、これがジミーの取り分! ヨナ、これはヨシの!」


 ジミーは、短時間に私が凄く儲けたのに驚いている。


「貰って良いのか?」


 だよね! 狩人の村なら銅貨二十枚は、大金だもの。


「うん、良いよ! 手伝ってくれたじゃん!」


 ヨナは、サリーからも貰って喜んでいる。


「布を買いたいんだ!」


「服は、師匠達のお古をもらったのに?」


 狩人の村の時より、良い服だよね?


「両親にも服を買ってあげたいんだ!」


 うっ、それは考えていなかったよ! サリーは、布をお土産にいっぱい買っていたんだよね! 


 次は、布をお土産にしよう! と決めた。


 

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