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アルカディアの子ども  作者: 梨香


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14/24

木の家《アビエスビラ》を改築しよう

 着いた日は、疲れていたけど、お風呂に入ってから寝たい。


 だって、アルカディアに来てから毎日、お風呂に入っていたのに、昨日は入らなかったんだもの。


「ジミー、これだけの人数がお風呂に入るなら、もっと水がいるわ」


 力仕事は、ジミーに任せる。


「師匠達、先に入って下さい」と声を掛けたけど、オリビィエ師匠はヨシを心配している。


「ヨナとヨシを先に入らせた方が良い。今夜は、ヨナとヨシをどちらかの部屋に寝させるしかないな」


 私とサリー、ヨシとヨナ、ジミーは床で良いと言っているから、そうならのかな?


「いえ、私は狩りで外で寝るのも慣れていますから……サリーとミクの部屋で床に寝ます」


「そうなのか? では、私の寝袋を貸そう」


「ジミーとヨシは、サリーの部屋で寝てくれ! 明日には、部屋を用意するから」


 オリビィエ師匠の言葉を、村から来た三人は理解できていなかった。


 私は、人間の町で家を借りたら、使いやすいように改築したいので、参考にしたいな!

 

 幾らぐらい掛かるのか知らないけど、診療所を開くのだから、そんなにボロ屋は嫌だよね。

 でも、家賃とか高いと困るから、小綺麗な狭い家を借りて、中を広くしたいんだ。


 お風呂、ヨナとヨシ、石鹸がはじめは泡立たなかったみたい。


 無患子に慣れているから、使い方の説明わかったかな? サリーと二人で、お風呂場の横で心配していたんだ。


「二度洗いしなきゃダメよ!」とサリーが外から大きな声でアドバイスする。


 そこから師匠達、私とサリー、最後のジミー!


「お風呂場、二つ欲しいね」


 私やサリーは、すっかり贅沢な暮らしになれちゃったみたい。


 ヨナやジミーの「二日に一回にすれば良い」って意見に同意できなかったんだ。


 私とサリーとヨナが、私の部屋で寝たんだ。

 ヨナは、オリビィエ師匠が狩りに持っていく寝袋で床で寝た。


「床に寝るなんて、大丈夫?」と心配したけど、狩りで遠出をする時に慣れているみたい。


 ジミーとヨシは、サリーの部屋のベッドで眠った。


「おはよう!」


 二人を起こしに行ったら、何故か、ジミーは床で寝ていた。


「あれ? 何故?」


 ジミーは起きてくると、そっと部屋から出た。


「ヨシが夜中に暴れたんだ。あいつは寝相が悪い」


「でも、ちゃんと枕に頭を置いて、寝ていたよ?」


「何周か目なんだろう」


 ああ、それは大変だったね。ミラと一緒だ!


「きっと、今日は師匠が部屋を何とかしてくれるよ」


 ヨシは疲れて寝ているので、そのままにしておく。

 

 ジミーが、ポンプで水を満タンにしてくれるので、サリーとヨナが掃除と洗濯をする。


 私は、人数が増えたので、火食い鳥(カセウェアリー)の世話をして、卵を集める。


 パンだねは昨夜から仕込んでいたので、外の窯で焼く。


「後は、スープと卵でオムレツを作れば良いわね!」


 サリーとヨナが洗濯から帰ってきたので、手伝ってもらう。


 ジミーはパン焼き窯の見張りだ。


「そろそろ、ヨシを起こしてきて!」


 ヨナに起こしてもらっている間に、オリビィエ師匠とアリエル師匠が起きてきた。


「おはよう! さぁ、朝食にしよう」


 朝食の席で、師匠達が木の家(アビエスビラ)の改築をすると言い出した。


「皆の意見を聞きたい」


 サリーと私は顔を見合わせた。


「やはり、自分の部屋が欲しいです」


 二人でお願いする。


「俺は、ベッドがあればそれで良い」


 あと、アリエル師匠が「お風呂が二つないと困るんじゃない?」という。


 確かにね! 今までは師匠達がお風呂に入ったあと、サリーと一緒に入ったらおしまいだった。


 昨日は、ヨナやヨシやジミーに石鹸の使い方を教えたりしたから、余計に時間がかかったんだ。


「あのう、ここでお世話になって良いのでしょうか? 他の村の子が来たらどうなるのかしら」


 ヨナは、木の家(アビエスビラ)は心地よいけど、弟子の私たちとは違うのに良いのかと遠慮している。


「他の村の子は、またその時に考えるさ。集会所は、十数人は泊まれるし、五歳以下の子はどこかの世話になると思うな」


 三人が首を傾げている。


「アルカディアでは、五歳までは子ども扱いなの。五歳から物見の塔の当番が回ってくるわ」


 三歳で若者小屋に行くのが普通、二歳でも行く子がいる狩人の村とは違うね。


 ヨナは特に戸惑っているみたい。だって、一人前だと思っていたからね。


「今日は、木の家(アビエスビラ)の改築をするから、皆に手伝ってもらう。明日からは、午前中は学舎へ通ってもらう」


「オリビィア、ベッドが足りないわよ」


「ああ、それは集会所の余っているベッドをマジックバッグに入れて運ぼう!」


 それは、後で、皆で運ぶ!


「このままでもできなくはないけど、サリーとミクの私物が無くなったら困るだろ? 一旦は、マジックバッグに入れて、外に出してくれ」


 サリーは、ヨナとヨシに手伝って貰ってマジックバッグに持ち物を入れる。

 ガラスの壺とかが多いから、気をつけなきゃいけない。


 私の部屋は、持ち物はあまりないんだ。ジミーに手伝って貰ったけど、大物のベッドとか机がマジックバッグに入るのが面白いのか、ガンガン入れるのですぐに済んだ。


 ジミーがサリーの方を手伝わなくて良かったよ。彼方は、壊れ物が多いからね。


 部屋を空っぽにしたので、オリビィア師匠を呼ぶ。


「ううん、やはり三階に三部屋増やすのは無理だな。屋根裏部屋も使わないと駄目だ!……ついでに片付けるか!」


 サリーが溜息をつく。衣裳櫃が山積みだし、アリエル師匠の本をやっと運び込んだところだからね。


「どうせなら、不用品を処分しましょう」とオリビィア師匠が簡単に言うけど、その不用品の殆どは、アリエル師匠の本じゃないかな? 


 ジミーが力仕事を手伝ってくれたし、衣裳櫃をどんどんマジックボックスに入れていく。


 三階の私とサリーの部屋、それに天井裏も空っぽだ。


 オリビィエ師匠が集中している。私も、集中して、感じ取ろうと頑張る。


「あっ!」木の家(アビエスビラ)がグンと広くなった。

 

 一階も、お風呂場を増築する部分が広がった。


 三階は、一部屋増えたし、屋根裏部屋は広がって、二部屋と物置になった。


「女の子を三階にして、男の子は屋根裏部屋かな?」


 ヨナは少し考えてから、口を開く。


「私は、光の魔法を習得したら、バンズ村に戻るつもりです。でも、ヨシとジミーは、もう少し長くいることになるから、便利な方が良いかも」


 お姉ちゃんとして、弟のヨシが楽に暮らせるように考えているんだね。


「そうか、なら、屋根裏部屋はヨナとジミーだな」


 そうと決まったら、集会場にベッドを三個取りに行く。


 そして、新しくできた部屋にベッドをマジックバックから出していく。


「後は、服だなぁ!」


 衣裳櫃を出して、其々の服を何着か出す。


「まぁ、とても素敵だわ!」


 ヨナは、サリーと真剣に服を選んでいる。樟脳臭いから、洗って干さないとね。


「女物ばかりなのですか?」


 チェニックとズボンなら、ジミーやヨシも着られると思うけど、ちょっと色が鮮やか過ぎるみたい。


「うん? そう言えば、小父様達のもある筈だけど?」


 衣裳櫃を何個も開けて、やっと男の子向きの服を見つけた。


 これを洗っている間に、布団も引っ張り出さないとね!


 洗濯は、サリーをヨナとヨシが手伝ってやっている。


 お布団を箱の中から探すのは、私とジミーでやった。


「干しとかなきゃ駄目だね!」


 こちらも樟脳臭い! でも、アリエル師匠が風を通してくれたので、ふかふかになった。


「ジミー、シーツは地下室にあるのよ!」


 半地下のパントリーの横にリネン室がある。


 二人で、ベッドにシーツを敷いたり、布団を置いたり、疲れたよ。


 何とか、部屋らしくなったのは、お昼前だった。


 屋根裏部屋の半分は物置で、そこにマジックボックスを積み上げる。


「子ども向きの本は、並べておいた方が良いかもね」


 アリエル師匠、本を貸してくれるのはありがたいけど、その準備は丸投げなんだね。


「ミクとジミーは、下で料理して! ヨシは、私たちと本を選ぼう!」


 サリーとヨシとヨナは、物置き部屋の片付けを続け、私とジミーは昼食の用意だ。

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