木の家《アビエスビラ》
サリーは、蜂を養蜂箱に入れ、私は火食い鳥を飼育場所に入れた。
ジミーに守護魔法を掛けたので、かなり疲れた。人に掛けたのは初めてだったし、途中で切れそうになって、ドギマギしたんだ。
リュミェールは、神父さんに軽々と掛けていたし、離れた場所に移動してもキープできていた。
光の魔法のスキル持ちだから? いや、サリーは、ちゃんと私に守護魔法を掛けてくれていた。
もっと修業しなきゃいけないなと反省した。
「お茶が飲みたいわ」
アリエル師匠の我儘? いや、皆喉が渇いているよね。
「そうだな! 皆、疲れただろう、お茶にしよう!」
木の家に入って、私とサリーで台所の使い方を二人に教える。
「水を井戸に汲みに行かなくて良いのね!」
ヨナは、便利だと喜んでいるけど、ポンプで汲み上げないといけないんだ。
「これは俺がやる」
一日、留守にしていたから、古い水は流して、新しく汲み上げてもらう。
ジミーは、私やサリーより力があるから、あっという間に満タンになった。
「まだ暑かったから、ミントティーと焼いておいたクッキーで良いよね」
「クッキー! 勿論良いわよ!」
ヨナは、お土産に持って行ったクッキーを一枚分けて貰ったのを食べたのか、嬉しいと喜んでいる。
「お湯は、このコンロで沸かすのよ。茶葉は、色々あるから、徐々に教えるわ! カップは、あちらの食器棚にあるのを使ってね!」
ジミーは、言われた事はできるみたい。特に力仕事は、凄く助けになりそう。パンだねをこねるのとか、やって欲しいな。
トレイに人数分のカップ、それとクッキーのお皿を乗せて、居間に運ぶ。
これは、ジミーに任せた。バランス感覚も良さそうだもの。
「ヨシ、よく寝ていたわね」
居間に行くと、ヨシが寝起きでぼんやりとしていた。ヨナがすぐに側に行って、抱きしめている。
「お姉ちゃん、もう良いよ」
ヨシは、完全に目が覚めたので、恥ずかしそうにヨナを押し退けている。
「じゃあ、お茶を飲みながら、木の家の生活について説明しよう」
オリビィア師匠が話しているのに、アリエル師匠は、ヨシが起きたのでソファーに寝転がって、本を読みながらお茶を飲んでいる。座って飲む方が楽だと思う。
「カップが空中を移動している!」
ヨシが驚いているのを見て、アリエル師匠はウィンクする。
「このくらいできないと風の魔法使いとは呼べないわ」
いや、それは物臭なんじゃないかな?
「サリー、そこは真似しないで良いと思う。取り敢えず、クッキーを食べて、お茶を飲もう」
私達は椅子に座って暫くは黙ってクッキーを楽しむ。
「これも、ミクが焼いたんでしょう! とても美味しいわ」
ヨナに褒められたよ。ジミーは無言で食べているし、ヨシは疲れているみたい。
「木の家では、弟子のミクとサリーが家事をしてくれているんだ。ヨナとヨシとジミーも二人を手伝って欲しい」
三人は頷く。狩人の村でも家事の手伝いはしていたからね。
「私は、掃除と洗濯が中心なの。ミクが料理と畑仕事よ。勿論、忙しい時はお互いに手助けしているわ」
サリーは、やはりしっかりしているね。ちゃっちゃと話を進める。
「私は、料理も少しはできるわ。それと掃除は得意よ」
ヨナは、若者小屋に住んでいたから、半分自立しているものね。
「俺は、水汲みと畑仕事」
うん、ジミーに料理は無理かも? いや、教えたら、上手くなるかな? パンだねをこねるのとかね!
ピザ屋をする時なんか、量が多くて、サリーと必死にこねなきゃいけないんだ。
お小遣いを分けてあげれば良いよね!
「僕は、何をしたら良いのかわからない」
ヨシは、家でも過保護に育てられていたみたい。
オリビィア師匠は、体力も劣っているヨシのこれまでの生活を察したみたい。
「少しずつ、ヨナと一緒に料理や掃除をしよう」
「うん!」と頷くヨシ、可愛い。
私のバリーとミラも可愛いんだけど……私よりしっかりしている面もあるから……いや、やはりバリーとミラは可愛いよ!




