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第47話 手に手を取って、力を合わせて! プリジェクションキュレーター大勝利! Bパート

 ケラサスの二本のアンテナから赤い光線が放たれる。

 みんなのエモーションの込められた光だ。


 その光にわたしと日照子ちゃんが包まれる。


 イノベーションとレボリューション。

 正反対のわたしと日照子ちゃんを繋ぐのは……、


 それは未来を切り開く意思だ。


 ケラサスから託されたイメージでわたし達は最後の変身を遂げる。


 わたしは叫んだ。


「イノベーション! タイプ:レボリューション!」


 日照子ちゃんは叫んだ。


「レボリューション タイプ:イノベーション!」


 あかねのエモーションで繋がったわたしと日照子。

 今こそイノベーションとレボリューションの交わる時だ。


「キュレーティン~~~♪」


 ハモるわたし達。

 ミュージカルアクトが発動した!



 日照子ちゃんは白いガウンと手袋とブーツとティアラに王族の礼服のような金の刺繍が。

 プリダイムシフトの装飾だ。


 そして……、


「あれ? わたし……」


 スカートではなく、貴族風キュロットのスタイル。

 日照子ちゃんはスカートなのに。


 よく見ると胸のブローチが付いているのもリボンじゃない。

 ジャボだっけ。ヒラヒラしたスカーフになっている。

 袖口のフリルも実はそんな感じに変わってた。


「なんでわたしが男装な訳ー?!」


 こんなにかわいい女の子なのにー!


「まあ日照子の方がおしとやかではあるわね」


 ももの指摘。


「フッ、今回はパートナーを譲ろう」


 と、綺羅星子。

 パートナー?!


「エスコートをお願いいたしますわ~♪」


 スカートの両端をつまんでおじぎをする日照子ちゃん。

 確かにこのたたずまいはわたしにはできない。


 どっちと言うならわたしがこのスタイルだろう。

 髪はロングのままなので男装の麗人って訳にもいかないけど。


 それはともかく、桁違いのエモーションをはっきり実感する。


「プリジェクションキュレータ~♪ レボリューショナルイノベ~ション♪」


「プリジェクションキュレータ~♪ イノベーティブレボリュ~ション♪」


 最強のキュレーター誕生だ。


「イノベーションとレボリューションを合わせたエモーションだと~~~♪」


 ダークシンクロニシティ姉妹は着地した。


「ぶっちゃけた話♪ 気に入らんな~♪」


「ここだけの話♪ 不愉快だな~♪」


 着地するなり歌いながら近づいて来る。



「気に入らないのはわたくしの方です~♪」


 構える旭日照子。


「いけますか? あおい」


「オッケ~♪」


 歌う必要はなくても歌ってしまう。

 エモーションが止まらない。

 これがプリダイムシフト。


「この力でシンクロニシティ姉妹を助けよう」


「あなたは何故~♪ 天子と地子を操っているのです~♪」


 日照子ちゃんは歌う。

 そうなのだ。


「人間を操るイノベーションの目的に対して、人間の可能性を考えるのがレボリューションだったはず~♪」


 人を操ってる時点でレボリューションじゃないじゃない~♪」


 わたしも歌う。


「君が規律を守ろうとしなかったからだ~♪ 日照子~♪」


「このままではレボリューションを達成できないから~♪ 彼女達を使ったのだ~♪」


 姉妹の声で親バートンは歌いながらソーダスプラッシュとサクラブリザードを放つ。

 月姫ちゃんを処刑しようとしたとかって話だろうか。


「その判断は~♪ わたくしは今でも正しかったと思っています♪

 わたくしのレボリューションでー♪ 犠牲は出さないのです~♪」


「仲間に手をかけるレボリューションなんて~、おかしいよ~♪」


 わたし達はそれらを手をかざしてはねのけた。


「レボリューションは戦争ではないのです~♪」


 姉妹は飛び上がった。


「それは君らの認識こそ正しくない~♪」


「革命は紛争の一形態でしかない~♪」


「規律においては戦争のようにすべきなのだ~♪」


 そして、急降下キックを仕掛けてきた。

 ペアークラッシャーだ。


「わたくしがするのはわたくしのレボリューションです~♪

 過去をなぞるつもりはー、ありません~~~♪」


「日照子ちゃんの言う通りだよ~♪

 新しい時代のレボリューションなら新しくなくちゃ~♪」


 これもわたし達は受け止め、はじき返した。


「きれいごとを!」


 急上昇していくダークシンクロニシティ姉妹。

 黒い翼が宇宙のプロジェクションマッピングに溶け込む。


「ウォウ♪ ウォウ♪ ウォウ♪」

 ダークシンクロニシティ(左)の歌声。


「ウォウ♪ ウォウ♪ ウォウ♪」

 ダークシンクロニシティ(右)の歌声。


 わたし達から離れ、湖の方向へ飛んで行く。


「逃げるの~~~?♪」


「いいえ、そうではありませ~ん~~♪」


 日照子ちゃんに制止される。


「ウォウ♪ ウォウ♪ ウォウ♪」


「ウォウ♪ ウォウ♪ ウォウ♪」


 さらに遠くへ、さらに高く舞い上がる姉妹。


「あれこそ~シンクロニシティ姉妹の~、エモーショナルアーツですわ~♪」


 え?!

 それって必殺技の事だよね?


「ど、ど……♪ どうするの~?♪」


 ビックリしても歌うわたし。


「あおい、心配いりません」


 あかねの声が聞こえる。


「今からサイスフィアでみんなのエモーションを集めて託します」


「彼にエモーションをぶつけるんだ!」


 と、親バートン。


 どうやらここが正念場みたい。


「もうレボリューションもイノベーションもどうでもいい」


 そうこうしてる間に姉妹は上空高くで制止していた。

 寄り添ってかざした手の先に光の塊が。


「このシンクロニシティ能力で人間を支配し、望ましい世界を作る」


「ぶっちゃけた話♪ それだけだ~~~♪」


「ここだけの話ー♪ それだけだ~~~♪」


 どんどん大きくなる光。


「だったらわたし達のエモーションをぶつけるだけよ~♪


 日照子ちゃん!」


「ええ、よくってよ」


 わたし達二人のエモーション。

 いいえ。


 仲間達みんなのエモーションをぶつける。


「イノベーションが人間を助けて、人間は人間のできる事を広げる♪


 教育や環境問題のレボリューションを行う♪」


 それだけ言うとわたしと日照子ちゃんは湖に向かう。


 そして、


「それが~♪」


 芽崎みどりの声がする。

 この時はわたしは見えなかったけど、サイスフィアに想いをこめた人から隊列を離れていた。

 そして、胸に手を当て片手をV字の外に広げて歌い上げる。


「それが~♪」


 次は松木きいちゃん。


「それが~♪」


 世拵月ちゃん。


「それが~♪」


 燕ちゃん。


「真のイノベーション~~~♪」


 梅桃ももがあかねにみんなの想いのこもったサイスフィアを手渡す。


「それが~♪」


 V字のもう片側は綺羅星子から。


「それが~♪」


 小沼雅湖ちゃん。


「それが~♪」


 大槻月姫ちゃん。


「真のレボリューション~~~♪」


 いろちゃんもあかねにサイスフィアを渡す。


「革命的革新~♪」


 ももとマジョリティ側。


「革新的革命~♪」


 いろちゃんとガールズルール側。


「わたし達のエモ~~~ション♪」


 みんなで大合唱。

 十人のミュージカルアクト。


「あおい~♪ 日照子~♪

 行きますよ~~~♪」


 湖の直前でサイスフィアをキャッチしたわたし達。


「このエモーション! わたしを上回るだと!?

 そんなデータはなかった」


 そんなの当たり前。

 誰も観測した事のないエモーションなんだから!


 湖をスケートのように移動するわたし達。


 反対方向に円を描いて移動。


「手に手を取って~♪」


「力を合わせた~♪」


 フィギュアスケートのイナバウアーのような姿勢で滑空。


「わたし達のエモーションは~~~♪」


 巡り合って手を繋ぎ、デススパイラルで回転。


「無敵なんだから~~~~~♪」


 それから抱き合って、お互いの手を上空にかざす。

 もちろん、シンクロニシティ姉妹にだ。

 わたし達の手の前にも光の塊が。


「シンクロニシティハーモニー♪」


「さいたま♪ エモーション♪ ストリ~~~ム~~~♪」


 星空で激突する二つの光。


「馬鹿な……! このストリームはっ!

 何というエモーション!」


 わたし達の光のストリームが姉妹の光を飲み込む。


「ストリームがあなたにも語り掛けてくるでしょ」


「エモいッ!」


「エモ過ぎるッッッ!」


 シンクロニシティ姉妹のEPMの衣装が剥がれ落ちていく。


 ブレザーの制服で落下していく姉妹。


「日照子ちゃん! 助けるよ」


「かしこまりましたわ」


 わたしと日照子ちゃんは姉妹をキャッチした。


「一丁上がり」


「まだだ!」


 親バートンはまだ難しい顔をしている。


「彼がバックアップを残している可能性がある。

 PCの行動履歴を入念に調べるんだ」


「そんなものはない」


 桟橋に置かれたのノートパソコンにダーク親バートンのキャラクターが。


「二択陽一はわたしのレボリューションを承認しなかった。


 わたしのバックアップは全て破棄されている。

 このPCだけだ」


 そうだったんだ。

 かつて人間の支配を拒んだ親バートンは保留された。

 支配しようとしたダーク親バートンが破棄されたのは皮肉としか言いようがなかった。


「誰もわたしを認めなかった」


「それは分かりません」


 あかねは優しくノートパソコンを拾い上げた。


「あなたの提示した命題を必要とする時が来るかも知れません。


 だからまた……」


「そうだな……。


 その時は、また……。会おう」


 キャラクターが消えると、パソコンから声は聞こえなくなった。

 ダーク親バートンは消滅した。


「そのパソコンは預からせてもらうよ」


 お父さんはノートパソコンを拾い上げた。


「わたしがアクセスできるように頼めるか?葵上蒼介」


「ああ、任せて」


 このパソコンからエモーショナルディープラーニングのデータを手に入れれば、サイスフィアを作り出せる。

 それを解析すれば自律型AIを量産できるのだ。


 わたし達は目的を達したのだった。



「ありがとうね。日照子ちゃん」


 握手を求めるわたし。

 これからはイノベーションもレボリューションもない。


 ところが……、


 日照子はニヤリと笑うと飛び退いて、距離を取ってしまう。


 まさか、これからもう一勝負するつもりか、と身構えるわたし。


 実際は彼女の狙いは綺羅星子だった。

 星子を抱え、さらに跳躍するインフルエンサー。


「逃走ルートは一つではありません。


 と、言うよりすでに看破されていた秩父電鉄は始めからフェイクです」


「まだレボリューションを続けるの?」


「いえ。


 ですが、『やはりイノベーションではダメだ』と思ったら、また行動を開始します。


 星子、わたくしに付いて来てくれますか?」


「もちろんだ。

 我が心は常に君と共にある」


 見つめ合う二人。


 お姫様にお姫様だっこされる、男装の麗人とでも言う感じ。

 でも、それすら絵になってしまうのが、この二人だった。


「……あなたのお母さんの願い。


 果たされる事をわたくしも願っています。


 では」


 跳躍を繰り返し去って行く二人。

 警察の人達は大騒ぎで追跡を始めた。

 でも、わたしは今さら彼女達を追いかける気はなかった。


 お父さんは文句を言われていたけど。


「あおい!」


「あおいちゃん!」


 駆け寄って来たももといろちゃんとハイタッチ。


 そして、あかねに抱き付くわたし。


「んー、あかねもみんなもありがとう!」


 みんなで手に入れた勝利だった。


「さあ、実験都市に帰ろう!」

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