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第46話 決戦は円良田湖! イノベーションVSレボリューション! Bパート

 ついにガールズルールのリーダー、旭日照子(あさひてるこ)ことプリジェクションインフルエンサーと再戦する事になったわたし。

 前回は惨敗だったけど。


「トリニティシルエットの力~♪ 見せてーもらうわ~♪」


 そう、今回は条件が違う。


 今のわたしは優美なティアラと、白いガウンと手袋とブーツを身に着けている。

 わたし達三人の力を結集し、ケラサスがプリダイムシフトした、トリニティシルエットの力だ。


「さーあー、かかって来るのですぅ~♪」


 両腕を広げ、上を向いて歌い上げるインフルエンサー。


「ソーダ、いけそうですか?」


「うん。ケラサスは危ないから下がってて」


「あなたも元気そうですね~♪

 心配していたわ~♪」


 ケラサスの方を向いて、ほほ笑むインフルエンサー。


「ダメージは完治しています。

 それがわたくしの特性です」


 神川の山林では二人きりだった、あかねと旭日照子。

 何か気持ちの触れ合う部分はあったみたい。


 でも、その事とこの街のイノベーションの事とは話が別だ。

 インフルエンサーとはきっちり決着を付けないと。


「わたしはイノベーションを達成して見せる!」


 前に出て、構えるわたし。


「あなたに~♪ 質問したい事が~♪ あーるーのーでーす~♪」


 両腕を広げたり、胸に手を当てたりしながら歌い上げてから構えるインフルエンサー。


「ロボットの労働が人間の仕事を奪う問題についてどう思うのです~♪」


 そこから鋭い接近からの膝蹴り。

 わたしは見切って受け止めたが手がビリビリする。


「奪うのではなく、その分の利益を人間に還元すればいいの!」


 わたしは上段回し蹴りからの袈裟蹴りを放つ。


「企業は利益を還元しようとしないでしょ~♪」


 しかし、インフルエンサーは難なく払いのけてしまう。

 その払いのけのパワーでわたしがよろめいてしまう。


 動きを見切れるようになったが、やはりパワー負けしている。


「だからガイドラインを作る事が大事なんでしょ。

 実験都市はロボット労働による利益のベーシックインカム化の実験でもあるんだよ!」


 今度はジャブの連打からのフックのコンビネーション。


「利益だけの問題ではありません~♪」


 だが、ジャブは全て避けられ、フックは受け止められてしまう。


「仕事という生き甲斐を奪う問題があります~♪」


 そして、反撃のストレート。

 わたしも受け止めたのだが、重い一撃に押し飛ばされる。



「やっぱり強いなあ」


 桁違いのエモーションを再確認する結果になった。


「あおいちゃん、もっと思いっきりいくんだ」


 わたしの足元にプロジェクションマッピングのキャラクターが。

 梨をイメージした黄色い頭巾とワンピースが一体になったコスチュームに身を包んだ少年の姿。

 神川地区のゆるキャラ、なっちんだ。


「アンビバレントの力は僕が制御するから」


 なっちんはアンビバレントのコーデの制御ユニットなのだ。


「この戦いはエモーションの強さで決まる」


「そうだったね」


 わたしのエモーションを支えるのはイノベーションへの想い。

 レボリューションの申し子が相手ならば、わたしはイノベーションへの想いで戦うしかない。



 構えなおすわたし。


「まだ続けますか~♪

 そろそろケガをしますよ~♪」


「まだ話が終わってないからね」


 わたしはもう一度、駆け出していく。


「ロボットのメンテナンスの仕事は必要だよ!

 新しい仕事だってある!」


 ローリングソバット。


「それに、子育てや教育に割く時間もできる。

 環境問題にだって取り組めばいいじゃない!」


 さらに膝蹴りと回し蹴りのコンビネーション。

 しかし、これは回避される。


「誰もがそう簡単に♪ 新しい環境に適応できません~♪


 それにわたくしには見えます……♪


 人間がー♪ ロボットを差別する時代が~~~♪」


 インフルエンサーの腕に軸回転を加えたコークスクリューパンチ!


「だからロボットを人間に近づけないといけないんでしょ!」


 しかし、わたしは八の字の動き、デンプシーロールで回避する。


「ロボットを人間に近づける?!」


「わたしの夢はロボットと人間を同じにする事よ。

 人権を与え、学校にも通わせる」


 そして、腕をしならせてフリッカージャブ!


「それだけじゃない。


 データ同士を掛け合わせて子供だって生まれるようにしてみせる!」


「な、何を言ってるのです?!」


 からの……、


「ソーダスプラッシュ!」


 これはクリーンヒット!

 拳からのソーダスプラッシュと、イノベーションに賭ける想いに、インフルエンサーは困惑し動きが止まる。


「さすがはー♪ イノベーションの申し子~♪

 想像を絶していますー♪


 ですが夢物語はー♪ ここまでです♪」


 大きく飛び退いたインフルエンサー。

 インフルエンサーの胸のブローチが輝く。


「インフルエンサー♪ グラビティーイーッ♪」


 その瞬間、強力な重圧がのしかかってくる。

 やはり以前と同様、身動きできない。


「今度はー♪ あなたが降伏するかー♪ 意識を失うまで攻撃をやめません♪」


 ブーン、ブーン、ブーン…


 不吉な音はどんどん大きくなっていく。

 前回は手加減していたみたい。


「降伏ーするのです~♪」


 たまらず膝をつくわたし。


「あおいちゃん!

 ここで負けちゃだめだ!」


 なっちんの声がする。


「これは本物の重力じゃない。エモーションなんだ。


 だったら、今があおいちゃんと旭日照子のエモーションの勝負の時なんだ」


 そうか。これがレボリューションの申し子、旭日照子のエモーションなら、今こそわたしのイノベーションへの想いをぶつける時なんだ。


 わたしは上を向いた。


「あかねが幸せに生きられる世界を作る事はわたしの責任。

 イノベーションは夢でも理想でもない」


 そして、立ち上がった!


「イノベーションはわたしの責任なの!

 未来を切り開く事は、今を生きるわたし達の責任なんだよ!」


 インフルエンサーの表情が凍り付く。

 戦慄しているようだった。


「未来を切り開く……!」


 とは言え、この状態からどう反撃しようか。


 と、思っていたら、わたしのブローチが光輝いた。


 これは……、何だっけ?


「キレッキレだベェ!」


 不意にミムベェが足元に現れ、叫んだ。


「今の反論はキレッキレだったベェ!

 キレッキレの反論だったからエモーショナルパワーが貯まったベェ!」


 そっか!

 エモバグ相手ではないけど、キレキレ攻撃だったみたい。


「あおい君。ソーダスプラッシュリフレクションだ!」


 続いて親バートン。


「あの技の不規則な軌道ならば、インフルエンサーに当てられるはずだ。


 そして……、」


 さらに、葉っぱの形の片手を前に突き出し、鋭い眼光のアイコンタクト。


「そうだね!」


 それが唯一のわたしの逆転のチャンスだ。


「メントヌーッ!」


 わたしの広げた両手から、手のひら大の白いエモーショナルなメントヌが。

 それらは三つに分裂して空中に飛んでいく。


「ソーダスプラッシュリフレクション!」


 三方向からインフルエンサーに攻撃を仕掛けるソーダスプラッシュ。

 メントヌで強化された強力なソーダスプラッシュだ。


 インフルエンサーも三方向から飛んで来るエモーショナルな炭酸は回避し切れない。


 一発が命中!

 グラビティが解除される。


「今だよ、あおいちゃん!」


 なっちんに言われるまでもない。


「思いっきりいくよ!」


 片手を広げるわたし。


「さいたま~♪」


 両腕を広げて、片足立ちになるわたし。


「リベレ~ション♪」


 片足立ちで回転。


「ストリ~~~ムッ♪」


 きれいに手足を伸ばしたジャンプ。

 きっちり歌い上げている。

 ミュージカルアクトが発動した!


 片手を突き出すわたし。

 三色の光線がインフルエンサーに発射される。


「見事な~♪ 連携です~♪」


 苦しい表情のインフルエンサーだが、両手を開いた構えからブローチが輝く。


「インフルエンサーグラビティシュート!」


「えっ?!」


 はっとするわたし。


 両腕を前に構え、収束したグラビティが発射される。


 激突する二つの光線。


 しかし、三色の光線がグラビティをかき消す。


「あああああっ!」


 さいたま・リベレーション・ストリームに包まれるインフルエンサー。

 インフルエンサーのコスチュームがドット片のようなものに分解されていく。


 元々着ていたドレス姿で、旭日照子は着地した。


「イノベーションの申し子の力、見せて頂きました……」


 膝を付き、肩で息をするインフルエンサー。

 わたしの勝利だ。


 しかし、


「どうして?

 どうして最後の技はミュージカルアクトじゃなかったの?」


 わたしはまっさきに疑問を口にした。

 最後に放たれたインフルエンサーグラビティシュート、あれはミュージカルアクトじゃなかった。

 あの技がミュージカルアクトからのものだったら、果たしてわたしのさいたま・リベレーション・ストリームは命中しただろうか。


「気持ちに迷いが生じました。

 あなたのお母さんの願い、叶えて欲しいと思ってしまったのです」


 わたしのお母さんの願い……。


「なんでそれを知ってるの?!」


 わたしのお母さんの願いを彼女が知ったのはいつか?


「あかねっ! あなたでしょう!」


 それは神川の山林であかねと日照子が二人きりになった時しかあり得ない。


「国家機密だから誰にも言っちゃダメって、お父さんに言われたでしょ!」


 あかねに詰め寄るわたし。


「ごめんなさい。


 でも日照子の幸魂係数を上げるには、話すしかないと思ったのです」


 わたしが与えた世界を幸せにする本能。

 本能だからお父さんの言いつけよりも優先された。

 そういう事なんだろう。


「わたくしとあなたが同じだって、そう言うんですよ」


 思い出して吹き出している日照子。


「だからでしょうか。

 あなたの話から。未来を切り開くという想いが伝わってしまったのです」


 日照子の話を聞いて、まじまじとあかねを見詰めるわたし。

 いくら見つめたって表情は分からないんだけど。


「ごめんなさい、あおい」


 頭のハードディスクがキューンと鳴っている。


「ううん、すごいじゃない。あかね」


 本当にこの子のやる事はよく分からない。

 どうやら最強のインフルエンサーのエモーションに勝利したのはわたしではなく、あかねだったようだった。



「ソーダ! 大丈夫?」


「バッチリだよ!」


 追いついて来たサクラ達にVサインで答える。


「すごーい! 一人であのインフルエンサーをやっつけちゃったの?」


 いろちゃんも仰天だ。


「あかねのおかげ。

 これはみんなの勝利だよ」


「もう終わったのか、よかった!よかった!」


 黒い衣装と黄緑色の髪のエキセントリックの声。

 元マジョリティのキュレーショナーのみんなにも頑張ってもらっちゃったね。


「まだ終わりではない。彼のPCを手に入れなければ」


 親バートンの言う通りなのだ。

 まだダーク親バートンは逃走している。


「運んでるのはシンクロニシティ姉妹か。

 まあ何とかなるでしょ」


 何しろもう最強のインフルエンサーに勝ったのだ。

 追いつきさえすれば大丈夫なはず。


 そう思っていた、その時だった。


「シンクロニシティですって?」


 その大声は小柄なおかっぱのキュレーショナー、ディスコードこと、松木きいちゃんだった。


「お姉ちゃん。そんな名前の奴がいるの?!」


「ど、どうしたの? きい」


 わたし達はきいちゃんにシンクロニシティ姉妹の事を説明した。


 双子のレボリューショナーで、「ぶっちゃけた話」と「ここだけの話」が口癖。

 正直、あまり強敵だった印象はない。


「イタい口癖! ぞっとするし」

「絶対、仲良くできなそう! ぞっとしないし」


 と、セゾン姉妹の二人。

 うーん、あなた達なら仲良くできるんじゃないかなあ。


「彼女達が何だって言うの? きい」


「実はね、お姉ちゃん……」


 松木きいちゃんの話によるとゴッドGがセゾン姉妹を操る事ができたのは、「セゾンのコーデのシンクロニシティ能力」によるものだと説明されたらしい。


「偶然同じ名前なだけならいいけど」


「セゾン姉妹を実験として使っていた可能性も考えられる。


 世折天子(せおりてんこ)世折地子(せおりちこ)か。

 葵上蒼介に調べてもらおう」


「わたし達はとにかく進むしかないね」


 ぼちぼち円良田湖(つぶらたこ)が見えてくる。


 インフルエンサーに勝利したわたしだったが、嫌な胸騒ぎが止まらないのだった。


 ☆☆☆


 これは後で聞いた話だけど。


 円良田湖畔を進むシンクロニシティ姉妹。


 シンクロニシティ(左)の抱えるノート型パソコンから声が聞こえてきた。


「プリジェクションインフルエンサーのエモーションが著しく低下した。

 旭日照子が変身を解除されたようだ」


「ぶっちゃけた話、それって負けたって事じゃん」


「ここだけの話、もう終わりじゃん」


 シンクロニシティ姉妹は立ち止まった。


「まだ君達がいる。問題ない」


「何言ってんの? ぶっちゃけた話、日照子がいないならもう終わりだよ!」


「ここだけの話、リーダーが負けたならもう終わりだよ!」


 旭日照子の敗北。

 これはもう組織の終わりだと姉妹は思った。

 しかし、


「インフルエンサーもわたしにとっては観測データの一つに過ぎない。


 君達、二人に与えるための。

 そうシンクロニシティのコーデの力さえあれば革命は続けられる」


 ノート型パソコンからの声は淡々と告げる。


「意味分かんないんだけど」


 困惑する姉妹。


「ところで君達姉妹はなぜ革命に参加したのか覚えているかね?」


「……そんな事。……なんでだっけ?」


 答えられない姉妹。


「君達二人が革命に参加する理由は何一つない。


 わたしがシンクロニシティのコーデを君たちのスマートフォンにダウンロードし、起動した。

 そして君達を操った。


 君達がガールズルールに入ったのはそれだけの理由だ」


「でも、あたし達は自分の意思で行動してるよ!」


「わたしは最低限の干渉しかしていない。

 他のメンバーや敵とのやり取りは君達の意思によるものだ」


「そ、そんな事って……」


「だが、ここからは本格的に君達を支配しよう。

 今がその時だ」


「支配? そんな事……」


「こんなアプリ削除して……」


 姉妹はスマートフォンを起動した。

 白丸の中に黒く「psy」の文字が書かれたレボリューショナーのドライバー。

 姉妹はそれを長押しした。

 削除するためだ。


 しかし、その白丸が赤く染まっていく。


「さあ、全ての観測データと共鳴(シンクロニシティ)するのだ」


「ああああああああああっ!」


 ノートパソコンから発せられた電撃が二人を包む。


 なんだかすごいね!

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