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第46話 決戦は円良田湖! イノベーションVSレボリューション! Aパート

 第46話 決戦は円良田湖! 決着! イノベーションVSレボリューション! Aパート



 ガールズルールを追跡し、国道349号線を進むわたし達、プリジェクションキュレーター。

 エモバグ軍団をかつての敵、マジョリティのキュレーショナーが撃退してくれた。


 先を急ぐわたし達の前に二人のレボリューショナーが現れる。


 銀色の礼服。

 短髪で大柄なのはプリジェクションアンダー。


 紺色のドレス。

 三つ編みの少女はプリジェクションジコチューだ。


「ソーダ、ケラサス!


 あんた達はインフルエンサーを追って!」


 サクラが疾走しながら叫ぶ。


「大丈夫?」


「逃げられたら終わりでしょ。

 埼玉・リベレーション・ストリームが一人でも撃てるなら、その方がいいわ」


「ソーダちゃん、ケラサスちゃん、ここは任せて!」


 ペアーも敵に向かって行く。


「そっか。分かった! お願い!


 ケラサス、行くよ!」


「了解です」


 わたし達はバトルの間を抜ける。

 必ずインフルエンサー達に追いついてみせる!


 と、いう訳で。


 ☆☆☆


 これはあとから聞いた話なんだけど。


 プリジェクションサクラはプリジェクションアンダーに向かって行った。


「君とも何度も戦ったな」


「知った事じゃあないわ」


 サクラのダッシュからの後ろ蹴りと足刀蹴りのコンビネーション。

 アンダーはそれを優雅にかわす。


 さらにサクラは掌底突きを放つ。

 その手取りを狙うアンダーだが、さらにサクラの膝蹴りが飛んで来た。


 アンダーは間一髪でそれをかわし、飛び退いた。


 猫足立ちに構えるサクラ。


「空手との異種格闘技戦か。

 いいだろう」


 アンダーは前傾姿勢のレスリングの構えを取った。


 ☆☆☆


 一方、ペアーが向かったのはプリジェクションジコチュー。

 しかし、ペアーは目の前で立ち止まった。


「あなたは月姫ちゃんとお友達なんでしょ!

 もういいでしょ。こんな戦い、やめようよ」


 ペアーがジコチューに向かったのは、大槻月姫から小沼雅湖について聞かされていたからだった。


「あいつが何か言ったのか。

 おしゃべりな奴だ」


 ジコチューは驚いた顔を見せたが、それだけだった。


「趣味が合ってただけさ

 それだって月姫が『デスティニーアーカーシャオーダー』のアニメをいくつか見ていただけだ。


 あいつはソーシャルゲームはやらないし、あたいは伝説ゲームはやらない」


「月姫ちゃんをかばってくれたって。

 本当は革命なんてもうしたくないんでしょ?」


「あたいの居場所はここにしかない」


 ジコチューが構えると胸のブローチが光を放つ。


「そのまま突っ立ってるつもりならそれでもいい。

 あたいは時間稼ぎでここにいるんだ」


「しょうがないなあ」


 構えるペアー。

 こうして、ペアーとジコチューの戦いも始ったのだった。


 ☆☆☆


 そして、先に進んだわたしとケラサスの前にも一人のキュレーターが現れた。


 金髪の、オレンジ色のドレスを纏った。若い女性。

 追いかけて来たわたし達だが、彼女の目の前で立ち止まる。


「待っていたわー♪

 プリジェクションソーダと~♪ プリジェクションケラサース~ウ~♪」


 両腕を広げて歌い上げている。

 しゃべるとミュージカル化するほどの強力なエモーション、ミュージカルアクト現象。


 わたしは一瞬しかその状態にたどり着いていない。

 常時、ミュージカルアクト現象を引き起こすエモーションの持ち主は一人しかいない。


「あなたの相手は、わたくし~♪ プリジェクションインフルエンサーだーわ~♪」


 そう。

 ガールズルールのリーダー、旭日照子(あさひてるこ)こと、プリジェクションインフルエンサーただ一人だ。


 ☆☆☆


 にらみ合うサクラとアンダー。


「来い。先に進みたいんだろう。」


 前傾姿勢のレスリングの構えのまま、手招きする。

 確かに先を急いでいるのはサクラ。

 長いポニーテールがなびく。


「革命とか言ってるけど、仲間を処刑するなんて」


 サクラの正拳突き。


「本気で正しいと思ってんの?」


「変革を成し遂げるにはカリスマの存在が不可欠だ」


 受け止めるアンダーと、飛び退くサクラ。

 あの太い腕で掴まれればアンダーの思うツボだ。


「日照子は革命の申し子だ。


 レボリューションを成し遂げるのは彼女をおいて他にない」


「結局、誰かの言いなりになってるじゃない」


 サクラの横蹴り。


「君だってイノベーションの言いなりで実験都市計画に加担している。

 そしてそれは藁葺木総理の手の内だ」


 難なくその足をはたき落とすアンダー。

 それどころか、レスリングの腕取りの要領で足を掴もうとしてすらしている。


「わたしは間違っていると思ったらおかしいって言うわ。

 それにもうイノベーションはわたしの夢でもある」


「わたしの夢は日照子に託したのだ。

 日照子のために尽くすのがわたしの務めだ」


 アンダーの素早いタックル。


「わたしは誰かに自分の意思を委ねたりしない。

 自分の夢は自分で叶える!」


 サクラはその予備動作を見ぬいて大きく飛び退いた。

 飛び退きながら……


「サクラブリザード!」


 桜吹雪の竜巻がアンダー目掛けて飛んで行く。


「偉そうな口は勝ってからにする事だ」


 しかし、それはアンダーの待っていた瞬間だった。

 アンダーの胸のブローチが輝く。


「アンダーキャッチアンドリリース!」


 目にも止まらぬ素早い突進。

 桜吹雪をものともせず蹴散らしていく。


(来た!)


 サクラはペアーからこの技の性質を聞かされていた。

 エモーションを活かした高速突進と、レスリングで鍛えた掴みからの投げ。

 スピードとパワーの両面を備えた恐るべき必殺技。


 上段を守るべく構えを取っている腕をアンダーが掴もうとする。


 しかし、サクラもこの一瞬を待っていた。


「サクラブリザード・入魂!」


 その接触の一瞬を狙い、サクラはアンダーの腕を弾く。


 この弾きは、必殺技のエモーションを乗せた強力な一撃だ。


 バランスを崩すアンダー。

 そして、さらによろめいたアンダーの一瞬の隙を狙い、


「さいたま・リベレーション・ストリーム!」


 三色に輝く掌底がカウンターでヒットする。


「何だとおおおっ!」


 アンダーは吹っ飛んで行き、桜吹雪と共に礼服が雲散霧消していく。


「おさわりは禁止よ」


 強敵アンダーに勝利。

 長いポニーテールと白いガウンをなびかせ、先に進むサクラ。

 その姿は凛とした堂々たる姿だった。


 ☆☆☆


「親父も、げっきーも、ガールズルールもあたいから離れていく」


 ジコチューのブローチが光輝く。


「ジコチューマイウェイ!」


 青い光を纏って突進してくる。

 ペアーがそれを回避するとジコチューは林の木々に激突した。


 しかしそれに構わず、光を纏ったまま再度国道にいるペアーに突進してくる。


 そして、回避すると反対側に林に激突する。


 回避しても何かにぶつかっても継続する必殺技。

 そう考えると強力だ。

 しかし、ペアーはその動きに違和感を覚えた。


「あなた、やけになってるでしょ。

 やけっぱちで暴れてるんでしょ」


「もういい。

 他人になんか期待してない。

 あたいは一人でいい。


 あたいはジコチューなんだ!」


「そんなのジコチューでもないよ!」


 ペアーはジコチューの体当たりを受け止める。

 しかし、


「ぐうううっ!」


 受け切れず、吹っ飛ばされる。


「やりたい事をやるのがジコチューでしょ。

 自分が何をしたいのか分からなくてヤケになってるならジコチューでもないよ!」


 起き上がりながら言うペアー。


「何にもやりたくなんかない!」


 叫ぶジコチュー。


 決然としたペアーとヒステリーを起すジコチュー。

 これではどちらが攻撃を当てたのか分からない。


「本当は友達が欲しいんでしょ

 月姫ちゃんと友達になりたいんでしょ」


 光を纏ったまま、立ち止まるジコチュー。


「月姫にはお前がいる。

 もうあたいは必要ない」


「そんな事ないよ。

 月姫ちゃんはあなたとも本当の友達になりたいって!」


「何を……」


「三人で友達だっていいでしょ。


 今度、DAOのコスプレもやりたいって!

 雅湖ちゃんの採寸はもうできてるんだって」


「アイツ、いつの間にそんな……」


「ね、あたし達が戦う事なんてないんだよ」


「……それでも」


 青い光は消えていない。


「あたいは日照子のために戦う事を止める訳にはいかないんだ!」


 再び駆け出し、ペアーに向かって行くジコチュー。


「それはそれで受けて立つよ!」


 ペアーのブローチも光輝く。


 ブローチから足に輝きが移動していく。


「物語の結末はあたしが決める!」


 回避でも防御でもない。

 それは必殺技と必殺技のぶつかり合いだった。


 ペアーは中腰になると、迫って来るジコチューを見据える。


「ペアークラッシャーハーヴェスト!」


 ペアーの輝く足の蹴り上げが炸裂。

 ジコチューは反対方向に吹っ飛ばされる。


「って言っても人間に落下激突技はしないけどね」


 代わりにペアーは広げた片手を突き出した。

 その手のひらから三色の光線が発射される。


「さいたま・リベレーション・ストリーム!」


 光線を受けたジコチューのドレスが雲散霧消する。

 それからペアーは空中でブレザー姿の小沼雅湖をキャッチした。


「敵わねえなあ」


「あたしはヒーローだからね」


 着地したところで雅湖のスマートフォンが鳴った。

 画面には「げっきー」の文字が。


「もしもし。

 げっきー、何の用だ?


 ……大丈夫か?」


「……雅湖。

 あたしの事、かばわないって言ってたのに」


「あ、あれはダーク親バートンにむかついてさ……」


「ありがとう……。大好き」


 ペアーは、目に涙を浮かべている雅湖をゆっくり地面に下した。


「物語の結末は決められなかったかなあ」


 と、言いながらも満足そうなペアーだった。


 ☆☆☆


 わたし達、プリジェクションソーダとプリジェクションケラサスは、ガールズルールのリーダー、プリジェクションインフルエンサーと対峙していた。


 強力なエモーションが威圧感となって感じられる。


「シンクロニシティ姉妹は一緒じゃないの?」


「ダーク親バートンもいないぞ」


 わたしと親バートンは口々に疑問を呈する。


「二人とダーク親バートンはー、逃がしました~♪」


「リーダーの君がおとりになっただと?」


「いいえ~♪ おとりなどではありません~♪

 存分に戦うためですわ~♪」


 構えるインフルエンサー。

 強力なエモーションがビリビリ伝わってくる。


「すぐにあなた方を倒して戻ります~♪」


「まずいな」


 親バートンは狼狽していた。


「ダーク親バートンに逃げられてはエモバグの阻止も、エモーショナルディープラーニングの奪取もままならない。

 一刻も早く彼に追いつかなければ」


「さっさと勝てって?」


 目の前にいるのは最強のエモーションを誇る、ガールズルールのリーダーだ。


「簡単に言ってくれるわー♪」


 棒読みのわたしの歌は、もちろんミュージカルアクトなどではなかった。


<つづく>

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