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第43話  あかねの想いと日照子の想い トリニティシルエット登場! Aパート

 これは後で聞いた話なんだけど、


 プリジェクションインフルエンサーに体当たりしたプリジェクションケラサス。

 二人はそのまま、山林に落ちて行った。


 途中でEPMのプロジェクターの範囲外になり、二人の変身は解けてしまう。


 こうなるとロボットのあかねの方が腕力がある。

 旭日照子(あさひてるこ)は逃れる事ができない。


 あかねは落下に際して、自分が下に回って衝撃を吸収できるように努めた。

 生身の日照子にダメージを負わせないためだった。


「これではあなたが無事では済まないでしょう」


「わたくしの身体は交換が容易なのが特徴です」


 その通りなのだろうけど、そう簡単に馴染めるものではない。


「怖くないのですか?」


「あなたを守り切れなかったらと思うと怖いです。


 ですのでお行儀よくしていて下さい」


「自分で突き飛ばしたのでしょう!」


 しかし、こうなると大人しくしているしかない。

 旭日照子はあかねに抱えられたまま落下して行った。


 森がもうスピードで眼前に迫る。

 思わず目を閉じる日照子。


 そして、木々の枝葉が次々折れていくけたたましい音。

 運良く木の幹には激突しなかった。


 いや、運ではない。

 時折あかねは位置を動かしている。

 その動きで幹との衝突を避けていたのだ。


 とは言え、その落着は墜落と呼ぶべきものだった。

 おおきな音を立て、地面に衝突する。


 日照子は細かい擦り傷はできたが、無事だった。


 しかし、あかねはさすがにそうはいかない。

 全身を強く打っていた。

 手足があらぬ方向に曲がっている。


「大丈夫ですか!?」


 身体の交換は容易と言われても心配せずにはいられない。

 日照子はあかねに駆け寄った。


「はい。問題ありません。

 あなたも無事な様で何よりです」


 手を振ったつもりなのだろうが、手首から先がそのまま飛んで行ってしまった。

「問題ありません」なんてどの口が言うのか、と日照子は呆れた。

 もっともあかねのフェイスパーツに口は付いていないが。


「痛くないの?」


「各部の状態はデータとして詳細に取得できます。

 わたくしには痛みは必要ありません」


 まったく常識はずれだ。

 人間でないのは分かっているがそれでも調子が狂ってしまう。


「それではわたくしにできる事はありますか?」


 このまま放置しておく訳にもいかない、と日照子は思ったのだが、


「あおいはきっともうプリダイムシフトできるようになったはずです。

 今日はもうお帰りになって下さい」


「……なぜわたくしをかばったりしたのです?」


 日照子は手近な石に腰掛けた。

 立ち去るにしても、その前に聞いておきたかったのだった。


「わたくしを倒すチャンスだったのに」


「わたくしは争いを止めたいだけです。

 倒す気などありません」


 あかねの音声は若干ノイズがあったが、充分聞き取る事ができた。


「ですが、本当はプリジェクションキュレーターになった時は覚悟をしたのです」


「覚悟?」


「あおい達を守るためならあなた達、ガールズルールの人々を攻撃する覚悟です」


 自分達を攻撃する覚悟。

 さすがに気持ちがざわつく。


「そもそもロボットって人間を攻撃できるの?」


 ロボット三原則と言う言葉は聞いた事がある。

 それは大昔の小説の話としても、何らかのガイドラインはあるのではないか。


「ルールはありますし、ガイドラインもあります。

 ですが、AIの方が人間よりコンピューターの制御には優れています。

 それは原理原則に過ぎません。


 攻撃はできます」


 さすがにその言葉にはぞっとした。


「ですが、わたくしは最近、あおいを守ろうとして、人間に危害を加え、あおいを泣かせてしまいました。


 幸魂係数を減少させてしまいました。


 だからわたくしはもう人間を攻撃しません」


「でも本当に彼女達が危険だった時はどうするの?」


 あかねのハードディスクが大きな音を立てる。

 何らかの感情を表しているのだろうが、分からない。


「そうなって欲しくない、としか言えません。


 間違っていますか?」


「間違ってはいないわ」


 とにかくそれだけを答える。


「ならもう戦いを止めて下さい」


「それはできないわ」


「どうしてです?」


「わたくしのお父様は犯罪者として処刑されました。


 とても優しい素敵なお父様で、世界をよくしたい理想を語っていたのに。


 わたくしはレボリューションが正しい事を証明しなければならないのです」


 言ってから日照子は苦笑した。

 こんな事ロボットに言ったって分かるはずがない。


「分かります」


「分かる訳がありません」


「あおいも亡くなったお母さんの事を大切にしています。


 だから分かります」


 葵上あおいの母親?


「あおいもお母さんが果たせなかった願いを果たそうとしています。


 あなたとあおいは同じです」


「それがこの実験都市計画なの?」


「いいえ。実験都市計画の成功後です。

 イノベーションより大事な事です。


 歴史を変える事です」


「あなた達にイノベーションより大事な事なんてないと思ってました」


「あります。

 わたくし達の願いは……」



 日照子は葵上あおいの母親の願いを聞いた。


「秘密だったのですが、話してしまいました」


 言ってから慌てている。


「総理とお父さんの秘密なので国家機密でもあったのですが……」


「それは大変ね。フフッ」


 その慌て方があまりに人間的で吹き出してしまう。

 葵上あおいの父親の事を当たり前にように「お父さん」と呼んでいるようなのも何だかおかしい。


「誰にも言いませんよ」


 実際のところ、実験都市計画成功後の話など聞いたところで利用のしようがない。


「あなたは優しい人ですね」


 あかねの頭のハードディスクの音が変わる。

 もちろん、日照子にはその意味は分からなかった。


「わたくしはあなたのお父さんも優しい人だったと信じます」


 日照子はあかねの唐突な発言に戸惑った。

 自分の父親は凶悪犯罪者。

 そう言われて育ってきた。


 母親ですらそう言った。


 まさかロボットからこんな事を言われるなんて。


「わたくしからあなたにお願いがあります。聞いてもらえますか?」


「言って」


 何でも聞く、とまでは言えなかった。

 でもあかねが何を言うのかは聞きたいと思った。


 そして、あかねは言った。


「あなたの革命で犠牲を出さないで下さい」


<つづく>

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