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第41話 いろちゃん、シャドウになる! 人のコスプレを叩いてはいけません! Aパート

 わたしとあかねはバスでショッピングモール、ベスク本庄店に来ていた。


 ベスク本庄は国道17号沿いのショッピングモール。


 国道沿いらしくガソリンスタンドもある。

 安価な服屋さんをももが見たい事と、本屋さんの品揃えをいろちゃんが求めた事でこのチョイスになった。


 服屋さん、GYUの前であかねと待っていると、ももといろちゃんが現れた。


 のだが、何やらいろちゃんの機嫌が悪い。

 ぶつぶつ言っている。


 でも、実はわたしには思い当たる節が一つだけある。


「わたしのプリダイムシフトが完成しなくてごめんなさい」


 深々とお辞儀をするわたし。

 前回、青バグとバトルした事もあるし、ぼちぼちわたしがプリダイムシフトしてもいいはず。

 きっといろちゃんはわたしの未熟さを言外に責めているのだ。

 以心伝心って言うか、激戦を共にした仲間だし、そういうのは分かっちゃうんだよね。


「この前、コスプレしたんだけどさ」


 違った。


「あたしのコスプレがネットでメチャクチャ叩かれてるの!」


 そうやって見せられたのはSNSの写真。


 いろちゃんのコスプレ画像がある。

 剣を持った黒い衣装のキャラクター。


「え、どこを叩かれてるの?」


 元ネタは知らないけど、衣装はよくできてる。

 ポーズなんてキレキレ過ぎるくらい。

 さすがは「キュレーティン」を発明したいろちゃん、


「よく撮れてるんじゃない」


 わたしにも、ももにも何がそんなにディスられているのか分からない。


「これがその時のスクリーンショットなんだけど」


 埼北市はネット上の悪口は厳格に禁止されている。

 AIが書き込みを削除するようになっている。

 だからって自分の悪口をわざわざ保存しなくたって……。


 とにかく内容を見てみる。


『こんなチビがシャドウ様やってんのがムカつく』


『似てない。似てるキャラやれ!』


『猿のコスプレ以外やるな!』


 シャドウというのがいろちゃんのやったキャラみたい。

 黒いからシャドウなんだね。


「このキャラクターなのね」


 ももが自分のスマホでシャドウを検索。

 確かにアニメのキャラとしてのシャドウは長身みたい。


「『かまフラ』って言うんだ。人気あるみたいね」


 このフレーズには聞き覚えがあった。

 この前、いろちゃんが読んでたライトノベルだ。


「何だっけ? 『転生したらかませ犬だった件』だっけ?」


「『少年漫画のかませ犬フラグしかない四天王の三人目に転生してしまった』ね」


 よくスラスラ出て来るね、いろちゃん。


 キャラクターに似せるのがコスプレなんだけど、似てないと馬鹿にされたりするのか。

 似ていないコスプレを笑ってしまわない自信はないが、SNSの叩きの対象にまでなってしまうなんて。


「会場でも何か言われたりしたの?」


 ももが心配そうに聞く。


「会場は一緒にコスプレした子が人気過ぎてそれどころじゃなかったよ」


 いろちゃんの写真には実は隣にもう一人のコスプレイヤーがいた。


 銀髪の巻き毛の女の子。

 端正な顔立ちだけど、背丈はいろちゃんと変わらない。


「この子もちっちゃいよ」


 わたしは指摘したが、


「それは四天王の紅一点、シルバームーン。

 小柄なキャラなの」


「ふーん、これか」


 ももがこれも検索していた。

 これは確かにキャラも小さい。


 って言うか冗談抜きにそっくり。

 完成度の高いコスプレだった。


「最近、知り合った女の子なんだ。

 なかなかサブカルチャーの趣味も合うの」


 大槻月姫ちゃんと言うらしい。


「コスもお互い自作なんだ」


「いろは多芸ですね」


 あかねも話に入って来た。


「漫画も描くし、裁縫もこなすなんて」


 しかも、ゲームや漫画やアニメを見ながら。

 さらにプリジェクションキュレーターまでこなして!


「この衣装だってすごいよ」


 叩かれたいろちゃんのシャドウの衣装。


「わたしは自慢していいと思うな」


 素直にこれはすごい。


「こんな才能まであったのね、さすが『タイプ:クリエイティブ』」


 と、もも。


「ありがとうね、二人とも」


 いろちゃんの表情も緩んで、いつものおっとりした感じになる。

 ネットの悪口なんて気にする事ないよ、いろちゃん。


 と、思ったら、


「エモバグが出たっち!」


 こむぎっちゃんが現れた。


「黄バグっち!この近くっち!」


 どうやら近くの高校が使っている野球グラウンドに現れたようだ。

 こちらに向かって来ているみたい。


 緩やかな坂道を上がって行くと黄色い巨人が。

 抑揚のない大音量の雄叫びが。


『黒人が日本人のキャラのコスプレをするなー!

 肌の色の黒いキャラ以外やるなー!』


 今回の黄バグのお題はコスプレかあ。

 と思っていたら、


「なななななななななな」


 謎のうめき声が。


「何を言ってるの―――ッ!!」


 いろちゃんが両腕を振り上げ叫んでいた。

 そして、エモバグに向かって突進していく。


「いろ! 変身が先でしょ!」


 ももが慌てて制止する。


 そうだった。

 いろちゃんの今日のお題もコスプレだった。


<つづく>

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