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第40話 上里SAの戦い、再び! 魔法の言葉、「上里セレクト」! Aパート

 あたしのなまえは松木いろ。

 埼玉の最北端、上里に住んでる。


 あたしのクラスに転校生がやって来た。

 名前は大槻月姫(おおつきげつき)ちゃん。

 銀色の巻き毛の小柄な美しい少女だった。


 静かな女の子で、もの珍しさがなくなると目立たない存在になった。

 あたしも特に話しかける理由もなくて、そのままだった。



「松木いろちゃん」


 でもある休み時間、月姫ちゃんの方があたしに話しかけてきた。


「そのキーホルダー。かまフラのシャドウでしょ」


 あたしのカバンのキーホルダーを指差す。


 アニメにもなったライトノベル、「少年漫画のかませ犬フラグしかない四天王の三人目に転生してしまった」の人気キャラクター、シャドウのものだ。


 作品の主人公ではない。

 主人公はこのシャドウのかませ犬として殺害される運命を変えるために頑張るのだ。


 シャドウは、小説の中の、架空の少年漫画の世界で、直前のエピソードで強敵だったキャラクター。

 それが善玉になって活躍するけど、素直になり切れない部分も残っている。


 そんな、かっこよさの詰め合わせみたいなキャラクター。

 主人公を凌ぐ圧倒的な人気を誇っている。


「わたしも好きなんだ」


 そう言って月姫ちゃんが見せたキーホルダーは、ひげ面でごわごわした恰好の、強そうなキャラクター。

 悪人面であごひげをいじっている。


 これが小説の主人公、アロガント。

 本来は尊大な性格の嫌われ者。

 しかし、現代の高校生が転生しており、驚きの圧倒的な腰の低さで、かませ犬の運命を回避する。

 たまにダンディーに見える事があり、一応人気はある。


「アロガン様もいいよね、逆に!」


 これがあたしと月姫ちゃんの出会いだった。



 月姫ちゃんもサブカルチャーが大好きだった。

 アニメ、ライトノベル、漫画ともに好みが合う。


 BLもいけるみたい。

 アロガントとシャドウならどっちが攻めで受けなのにについては、意見が分かれたけど。



 それからゲームの事も。


「みんながやってるようなソーシャルゲームとかはやってないよ。

 わたしはレトロゲームが好きなんだ」


「ホント?あたしもレトロゲームやってるよー。

 最近のもやるけど、スマホゲームはあんまりかなー」


 そんな会話から始まった。

 と言っても、レトロゲームだけならやってる人間はたまにいる。


「いろちゃん、今は何のゲームやってるの?」


「今は『星座を見まくるひと』かなあ」


「あ、わたしもやった事あるよ」


「え、ホント? どこまでやった?」


「クリアしたよ」


「!…………」


 あっさりした月姫ちゃんの発言はショッキングだった。


「星座を見まくるひと」は伝説の禁断ゲームだ。


 ゲームバランスは最悪でバグも多くて悪質。

 つまらないと言うより、まともにプレーできないと言った方が正しい。


 しかしながら、SFチックな世界観がゲームシステムにしっかり落とし込まれていて、プレーする者を惹き付ける。


 ついつい先が知りたくなってしまう。

 でもやっぱりまともにプレーできない。

 そんな業の深いゲームなのだ。


 それを月姫ちゃんはクリアしたと言う。


「仲間は?」


「全員いるよ」


「うそ!」


 休み時間に大声を出してみんなに注目されてしまう。


「一人だけバグで仲間にできないはずよ!」


 ドアを開けるのに必要なIDカード。

 何度でも使えるはずなのだが、バグでドアを一回開けると消えてしまう。


 そして、困った事にあるキャラクターを仲間にするにはドアを二つ開けなければならない。


「あれはね、バグで仲間にできないのをバグを使って解決するの」


 実はこのゲーム、同じIDカードが別の場所でももらえるというバグがある。

 このバグを利用して、ドアを二つ開けるという。


「すごい!月姫ちゃん」


 つい興奮して手を握ってしまう。


「昔の禁断ゲー、結構好きなんだ。

 今やってるの、今度いろちゃんにも貸してあげる。


『未来の神話 マジヤーバス』って言って……」


「エモバグが出たっち!」


 ここで、校内のプロジェクターからこむぎっちゃんの姿が現れる。


「色は青だけど、プリダイムシフトが必要になるかも知れないっち」


「そうだね!」


 クラスもざわついている。

 この前、あおいちゃんが正体をバラしてしまった事がきっかけで、わたしがプリジェクションペアーである事も周知されている。


「ちょっと行って来るね」


「う、うん」


 月姫ちゃんが転校してからだと初バトルだけど、事情は伝わっているみたい。

 有名人はつらい。



「上里サービスエリアっち」


「オッケー!」


 すぐ近くだ。


「キュレーティン!」


 隠す必要もないから昇降口で変身しちゃう。


 高速道路の土手と、ひらがなで「かみさと」と書かれた看板が見えてくる。

 青い巨人の姿も。


 平日でも車のたくさん止まった上里サービスエリアに到着。

 抑揚のない大音量の雄叫びが聞こえてくる。


『上里サービスエリアは他の土地のお土産だらけで地域性がないー!』


<つづく>

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