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第39話 終わらないワルツ レボリューションの申し子の物語 Cパート

 ガールズルールの新しいアジト。

 プリジェクションインフルエンサーとプリジェクションアンダーは踊っていた。


 かけられた曲はショパンの革命のエチュード。

 ショパンは感情豊かな楽曲で知られる作曲家だ。


 激しい曲だが、超人的な動きで舞う二人にはちょうどよかった。


 二人の刻むステップもターンも、超絶的な素早さでありながら、優美さを損なう事はなかった。


「やっぱり君はすごいな。日照子」


 EPMの心理効果か、インフルエンサーのコーデの力か。

 二人はかつてないエモーションの高まりを感じていた。


「ふふっ、まーだーよ~♪」


 次第に二人のダンスはエスカレートしていく。


 アンダーはインフルエンサーの手を支えて、頭の上まで持ち上げ、回転した。

 フィギュアスケートのリバースラッソーリフトのようだった。


 それが終わるとアンダーはインフルエンサーを投げ上げた。

 それはフィギュアスケートのツイストリフトに似ていたが、アンダーがキャッチする事はなかった。

 インフルエンサーは自力でさらに上空に飛び上がっていた。


 空中で五回転したのちに着地するインフルエンサー。


 体操選手のような美しいY字を描いて着地。

 その後は片手を胸に当て、片手でスカートの裾をつかんで会釈。

 一連の動作にその場の全員が息を飲んだ。


「お粗末さーま~♪」


「ああ、やっぱり君は最高だ。日照子」


 アンダーは自分の見識の甘さを思い知った。

 これまでもこれからも、彼女を支える事が自分の勤めだったのだ。

 それさえできていれば、自ずとレボリューションは達成される事だろう。


 そして、インフルエンサーも沸き上がるエモーションの手応えを感じていた。


(お父様、おじいさま。わたくしが必ずレボリューションを成し遂げます)


「最高のー、気分~~~♪」


 なんだかすごいね!


 ☆☆☆


 東京からやって来た公安警察の人から、旭日照子のルーツを聞くわたし達。

 彼女は親子三代の革命運動の系譜を継ぐ存在だった。


「旭日照子は海外に潜伏していましたが、最近戻って来た。

 行方をくらましていたのですが、まさか埼北市に来ていたとは」


 旭日照子のおじいさんとお父さんの物語。

 なんだか昔話みたいで実感が沸かなかった。


「お父さんもテロが起こった時は学生だったからね。

 あの時の事は覚えてる。

 当時はちょっと電車が止まっただけでどよめきが起こったもんさ」


 でもこれは間違いなく最近この国で起きた事なのだ。


 父親と祖父のレボリューションの意思を引き継いだ旭日照子。

 ではどこで革命の狼煙を上げるのか。


 そう思っていた時に発足したのが藁葺木政権だ。

 多額の税金の投入された特区計画は腐敗の象徴だと思った。

 EPM実験都市こそ革命の狼煙を上げるかっこうの場所だ。


 そして、その旭日照子とダーク親バートンは出会った。


 親子三代の悲願である革命を望む旭日照子。

 革命を成し遂げる者を探すダーク親バートン。


 運命的な出会いだった。


「そして、ダーク親バートンは、わたしからプリジェクションキュレーターのデータをハッキングした」


 そして誕生したのがプリジェクションインフルエンサーだった。


 わたし達がマジョリティと戦っていた裏で革命の準備は進められていたのだった。


「彼女の桁違いのエモーションはレボリューションを渇望する強い意志によるものだろう」


 突如として現れた強敵、プリジェクションインフルエンサー。


 しかし、実際は親子三代に渡る強い想いから始まっていた。

 実験都市をはるかにさかのぼる数十年前からの想い。

 怒りにも似たそれはわたし達のイノベーションへの想いを超えるものなのかも知れない。


「ガールズルールの資金源は旭日照子の祖父、旭満あさひみつると見ています。

 しかし、証拠がない」


 公安警察の人は語った。


「おそらくマジョリティもそうだったろうね」


 これはお父さん。


「両者の繋がりの証拠を抑えられれば、活動を止められる。

 そこで君達、プリジェクションキュレーターと連携したいんだ」


 思わぬところから、ガールズルール打倒の道筋が見えて来た。

 もう一度アジトを見つけて今度は勝つ!


「でも、あのインフルエンサーに勝てる?」


 ももに指摘を受ける。

 それを言われるとなかなかにツライ。


「『モード:スタイリッシュ』と『モード:クリエイティブ』でも会話はミュージカル化しなかったわ」


「あたしも歌えばよかったのかなあ」


 そういう問題じゃないよ、いろちゃん。


「あおい君のプリダイムシフトにかかってるだろうな」


 親バートンだった。


「やっぱりそうなっちゃうよね」


 プリダイムシフトとは、つまりわたしだけのイノベーションだ。


「できそう?あおい」


「うー、どうかなあ」


 全てはわたしにかかっていた。

 レボリューションの申し子に対抗するには、わたしのイノベーションが不可欠なのだった。


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